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回す動作、回る行動、回す考えをしない:衆議院議員総選挙を受け。

 10月31日に衆議院議員総選挙が行われ、与党自由民主党が単独過半数の議席を得、連立与党の公明党と合せ絶対安定多数を確保。野党は第一党の立憲民主党の議席が少し減り、日本維新の会の議席が増えて野党第二党になり、立憲民主党との選挙協力を行った日本共産党は前者とほぼ同率ほどに議席が減り、従来の支持率がほぼ0%に近い国民民主党の議席が逆に増えて初めて十議席を超えました。

 その選挙についての評価が色々と出ていますがどれもまさしくという程に的確とはいえないものの全くの見当違いもほぼないような、賢明といえば賢明でつまらないといえばつまらない評価がほとんど。
 また今度の選挙の評価の特徴はほとんどが野党の支持者によるもので与党の支持者からの評価はあまり見受けられないことです。昨年までの安倍政権における与党とその支持者らの或る種の熱狂から前回の選挙までは与党の側から野党の側を「あんな人達だから負ける。」というような侮蔑の評価が多くありましたが今度の選挙ではそれがほとんどありません。これは安倍政権と菅政権を経て先月から岸田政権になりましたが、安倍政権に熱狂した与党の支持者らがそれとは政策もキャラもかなり異なると見える岸田政権にはあまり熱心にはなれないという心境があるからかと思われます。彼らだけではなく報道筋もまた安倍政権とは違い穏健でやや左寄りといわれる岸田政権には意外にも冷ややかで、「安倍の時代は終わった、さあこれからがまともな政治の時だ。」というような期待の表明は報道筋にはありません。しかしそれでも岸田政権の自民党と公明党がこの選挙では私の予想の通りに圧勝しました。

 菅政権のCOVID19に関する政策への批判が大きく、それが菅義偉総理の辞任の第一の理由でもあるので与党への支持が下がって野党が有利になるだろうとの予想がかなり多く見られましたがそうはなりませんでした。報道筋によるそのような予想は(報道などの公共の機関による選挙の予想は本来は公職選挙法違反です。しかし主謀者の特定が不可能で実際には取り締まりが難しいことから長年に亘り全くの野放しにされています。)むしろ与党とその支持層の警戒を促して与党の勝利を誘いました。「このままでは負けてしまう。」と与党は結構本気で思ったでしょう。
 また、批判の大きさもさることながらCOVID19の今の状況では誰が総理であろうと知事であろうとあまり何もできないはずという或る種の常識感覚から、菅政権及び与党の責を問うことはあまりできないという考えで今度の選挙も与党を支持した人は少なくないでしょう。COVID政策を上手くやるというのは本当に運の良さが多くを占める世界のお手柄大会です。地道に努力をしていれば自分の感染を防ぐことはできても国の感染対策や感染者への対応を勧めることができる訳ではありません。

 それと、人口減高齢化の今の日本の基調の中、安倍政権と今の自民党をおかしいと思っていて立憲民主党や共産党に多少の期待をしてみるなどしていた高齢者に岸田政権に代わったことでそれなら自民党に期待できるかもと翻意した人々が結構いるだろうことも自民党の勝利に結びついたでしょう。
 今の高齢者は岸田文雄総理の属する自民党の宏池会の創立者池田勇人総理やその弟子宮澤喜一総理らによる所得倍増計画による高度経済成長の時代を知っています。その面影は今の宏池会や岸田総理にはありませんが岸田総理は宏池会の歴史を令和の今になって総動員するかのように「令和の所得倍増計画」や「デジタル田園都市構想」などを主張しています。田園都市構想というのは昭和五十年代の前半の大平政権による都市開発に関する政策で、当時は東急田園都市線の開通及びその沿線の開発の進捗が萌芽していたことからそれなりに国民の支持を受けたものです。東急の田園都市と大平政権の田園都市構想に何か実際の関係があるのかは分かりません。
 少なからぬ高齢者はそれらのような昭和の歴史的記憶からのもう一花を岸田政権の自民党に見ようとしていると思われます。
 具体的には高齢者の社会保障と福祉を守ること。これはおかしな安倍政権もいじらずに守って来たのですがより肯定的に守るだろうという期待。
 また、大阪都構想などの大阪を端緒とする構造改革を表向きの目的政策としながらその真の目的は介護保険を守る(そのためにはあらゆる社会保障や福祉を切り捨てるかもしれない、)ことにある介護保険族たる日本維新の会は高齢者にとり好都合な存在です。高齢者は生涯の残りの時間が少ないので自分と関係のないところには税金を遣わずに自分の余生のために遣ってくれればよいという訳です。しかしそれを言うと自己中心的なのがあからさまなのであらゆるところを切りまたは身を切ると言う。

 ではそんな昔を知らない若い人々はそうではないのかというと、年代により差があります。
 概ね、10代は岸田政権と宏池会の理念や政策と似ている国民民主党の支持が多い。私も国民民主党を支持するので10代ですが笑、彼らにはまだ選挙権がありません。とはいえ五年後や十年後の国民民主党の票になるかもしれないし現に彼らのおねだりもあってか今度の選挙での議席が増えました。
 20代はアベノミクスによる雇用の促進の恩恵を受けているため安倍政権に好感する人々が多いと見られますがガチの安倍支持でもないので岸田政権にも好感する可能性が比較的高いでしょう。または国民民主党の支持率も高いです。
 問題は30代で(いわゆる就職氷河期世代の40代ではありません。)、60代以上の高齢層を除き岸田政権の支持率が最も高いと思われます。
 安倍政権にも好感していましたがどちらかといえば時代の過渡期における改革のための特殊政権としての支持で、それが一通りの成果を得て「落ち着く」べき処は岸田政権にあるという或る意味では何とも狡猾な世代。
 彼らの親が高度経済成長(主にその結実と余波)をぎりぎり知る世代で、宏池会の政治は良いぞ、何しろ日本の官僚は優秀だからというような話を聞いたことがあるのです。
 40代も10代や20代に次ぎ国民民主党の支持が比較的に多いですがこれはいわゆる就職氷河期世代ということとはあまり関係なく、60代30代親子や高齢層のように「落ち着くべき処」といわれる宏池会政治の繁栄の時代を知らず、知るのは池田総理の弟子宮澤総理の「生活大国」の政策の不振やリクルート事件などに見る政界の汚職の傾向からの細川政権への交代で、野に下った自民党の総裁が宮澤前総理と同じ宏池会の河野洋平氏になったことから宏池会といえば自民党政治の負の象徴という見方が広くあります。なので自民党を支持する人々は宏池会のようではない強い自民党政治を求めて安倍政権やその別働隊と揶揄される日本維新の会を支持し、自民党を支持しない人々は宏池会よりもう少し強くてキャラの好感する国民民主党を支持を検討します。その検討が実際に票になったのが今度の選挙です(私は前回の選挙から国民民主党に投票しています。)。
 50代は群雄割拠で、30代のような岸田政権のガチの支持層もあり、40代のような安倍政権や日本維新の会の支持層もあり、少し前までの高齢層のような立憲民主党の支持層もあります。それを多様といえば聞こえが良いですが問題は国民民主党の支持が40代以下と比べ極度に少なくまたは共産党の支持が60代以上と比べ極度に少ないことです。いわば50代にとり国民民主党と共産党は論外の存在で、その傾向は報道や政治評論のあり方にも反映されているようです。彼らにとり論外なので、国民民主党の議席が増えたことはかなり意外なことと映る訳です。
 60代は自民党政治なら大きな間違いがなかろうという見方が最も強く、安倍政権から菅政権を経ての岸田政権への流れをどれも理のある自然なものと解しているでしょう。
 70代以上は先述のように、安倍政権は駄目だが岸田政権なら良いだろうという自民への回帰派と岸田政権を逆に安倍政権よりも尚悪質なまやかしと見る立憲民主党、共産党や社民党の支持層。岸田政権のやや左寄りの政策はそれら三党の年来の政策を自民党政権を守るための道具として盗み取ったと映る訳です(二大政党制においてはそのような政策の横取りはごく普通のことですが彼らは現役世代として大詰めを迎えるまで中選挙区制だったので小選挙区制を基とする二大政党制のあり方を知らないか知っても拒みます。)。

 先程に国民民主党のキャラと言いましたが、今度の選挙は与野党の公約の主な政策に大きな違いがないことからも、政策を選ぶ選挙ではなく候補者の人柄やキャラまたは党のキャラを選ぶ選挙という性質が強くあったと思われます。そのような選挙のあり方もまた日本に特有ではなく世界の民撰政治には広くよくあることです。最も分かり易く記憶に新しいのはドナルドトランプ大統領が選ばれた2016年と彼が重選を得なかった2020年のアメリカ大統領選挙で、政策の違いも大きくありますがより大きくは人柄とキャラでした。むしろアメリカの政治はいつもそうです。

 この記事は世代別の政策観や時代についての感覚を主に語りましたが次の記事は人柄とキャラ、即ち思考と行動のあり方から政治を語ります。

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