菖蒲のつみれ汁 1

大正十年の睦月の走り、私は五里霧中の錯乱状態に陥り精神状態での危篤を迎えた。焦燥のうち得たものと言えば打出て損得勘定に左右される浪人の背中を眺る姿勢に他ならなかった。
稚拙な推敲の果てにあるのは意識の範疇を超越した自我に畳み掛ける甘酒の香りだけであり、二三度その場で翻せば心の猶予を取り戻すのみである。

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