自己主張の最果て

 「ああ、なんという快晴の元に広がる夢にまで見た焼け野原。千と四十六秒前まではあれ程に栄え茂っていた人類の根城の数々も物の見事に散り果て、北西の方角に流れ消え去っていくのであった。」
 さて諸君は上記の文章を読んで、情景をその脳裏に描かずにはいられなかったであろう。更にいえばその妄想に憧れさえも覚えた愚か者もいるであろう。そんな売国奴と呼ぶべき、反愛国主義者、民族という枠に収まらぬ誇り高く気高き戦士たちは皆、往々にして一度は自我、すなわち精神と肉体の乖離を経験する。そんな中でより強い自我を持つものだけに訪れるのは、自我の大いなる反発だ。要するに高尚な人間にだけ訪れ、下等種族と虐げられるべき我々のような畜生にも似つかないどうしようも無い有機廃棄物はその脳髄で思考をめぐらせることも許されない表題である。
 ここまで読み進めた読者には心より畏敬の念を捧ぐ。それこそ自己主張について思考を巡らせるべき人類と呼ばれるべき人間であることに恐らく相違ない。理解しようとせずに文章を読むことは容易なことではない。現に今のこの瞬間でさえ、文章を読むのに当てた時間分の何かしらの利益や得を求めて、何か立派なお題目を読み取れないかしら、この世の森羅万象を分かりやすく説明していないかしら、と、なんとも図々しく汚らしい期待と異常なまでのその興奮を抑えるのを忘れないで頂きたい。自分自身の存在意義の管理を任されている意識においてこれ程までに看過できないものがあっただろうか。右脳の発達により我々は数多の難題をその脳髄のみで判断し、創作意欲なる下賎な大罪を犯し続けてきた訳である。
 そこで諸君らに一つの疑問が浮上する。七回までと定められていた筈の覚醒に伴った神経伝達物質様バクテリアの繁殖速度の加速度的上昇と半身不随の生命体として名高いM-6アリゲナミンとの末梢神経への干渉についての相関の矛盾点である。ご存知の通り、この矛盾、即ち逆説的論理の展開について12世紀に実在したアルジェリアの思想学者、ゴドリック=ステイローンを筆頭に数々の学者が足を踏み入れては、消息を途絶え失踪してきた。
 さて、ここでその矛盾について簡単に説明しておこう。さぞ優秀で高尚な諸君らのその脳髄には暖簾に腕押しな事を重々承知の上で、一応、だ。まず伝達経路の脳漿間制止系物質との互換性による盲目的二階層を経た速度上昇が発生する。ここでの摩擦と同位体による熱及び電気的エネルギーの移動については1355年、ステイローン氏が言及している。発生した速度上昇は1.47^33毎秒から1.425^67毎秒までと記録されており、それより加速も減速もしない。そこで次に抵抗物質系の陽定党内要素であるロドリナミンの分泌が始まる。この分泌は2.66^-37μL毎分と微量ながらも分泌量は360~368μLと非常に嬉々的な数値を誇る。さあ諸君らも、もう既にお分かりであろう。マクヒエネヌシャドゥイワ(和名:常陽元老核発現紫孔)の優位性とその実光の有無についての矛盾である。
 通常、弱赤外線下におけるマヒロンド値の低下は第一次成長期の最高値を下回ることは無いが、この場合のみ基準値の1/6以下になることが稀に報告されている。マクヘエネヌシャドゥイワは双穣体を持ち、尚且つ際限なく反応と吸収、適応を繰り返しているとするならばロドリナミンの紫煙反応の副作用に耐えきれず、経路の速度上昇は緩やなはずである。
 この矛盾を如何様に解決するかは言葉にすれば至極容易なことであり、世間では問題集の例題かのようなぞんざいな扱いを受けているのである。しかしそれも案外軽視できない思考の段階を踏み、根幹にあるのは複雑に入り組んだ論理とそれに付随する過去数百年における膨大な証明を孕んでいる。

 この様に結論に基づいて論理を構築すれば意図も容易く命題を得ることが出来るのである。誠に遺憾ではあるのだが弊筆、結びを長々と宣うことは好まない。以上。

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