手記3

実際のところ、そうではなかった。私の我慢は限界を超え蹲って震えながら啜り泣いていた。いつだってそうだった。カラオケボックスに持ち込んだ記憶も、店を出る時には半分以上が腐りかけの桃のような匂いを漂わせた。少しだけならと気遣う君に目を向けないように私は足の二歩先を見つめて歩いた。
 2時間後の私は一昨日お父様から聞いたそうでは噂についてを思い出し、月明かりを雪が反射する夜道を笑いながら1人で帰って行った。

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