【215日目】パンドラの筺に潜む「希望」
ご隠居からのメール:【パンドラの筺に潜む「希望」】
太宰治のファミリーヒストリー小説『人間失格』にこんな描写がある。
これは、私も子供のころ、「尼子の落人」という言い伝えのある田舎の家で経験した通りのリアルな描写だと思う。家族の団欒という雰囲気からはほど遠く、まさに肌寒い思いをする食事風景だ。
その記憶が強く残っている上に、祖父母には八人の子が生まれていたので、わが家は先祖代々大家族が同居する家だろうと思い込んでいたが、戸籍をとって調べてみたら、意外にも祖父母以前の本来の面目は、子宝に恵まれない、養子だらけの家だった。
そんな家では、いちばん下の座に座らされている私が、いちばん上の座が座っているご先祖さまと対等の立場で口をきけるような雰囲気ではない。家父長制の大家族には言論の自由はないのだ。しかし、SNS上でファミリーヒストリーなら、辛うじて言論表現の自由がある。
そう考えて、わが家の戸籍を眺めると、やはり、養子だらけの家という抜き差しならない事実から目をそむけることができない。破滅型私小説作家の嘉村磯太は「三代実子なし」の家に生まれたと言われるが、わが家の状況も嘉村家のそれに近い。
つくづく養子だらけの家だなあと思うのは、次のような戸籍の記述からだ。
このような個人情報をブログに載せるのは、家族の恥をさらすようなものだと、ご先祖様のお叱りを受けるかもしれないが、私としてはこの事実に対して「知らぬが仏」を決め込むことができない。冷静に事実を認識した上で、パンドラの筺に潜む「希望」を見つけるしか救いはないと思う。
リストのうち、わが家の戸籍に記載がないのは、ふゆさんと伝蔵さんだが、ふゆさんの名前は信谷氏の戸籍に初代善右衛門さんの妻として載っている。
また、伝蔵さんは、『神郷町史』で「人傑不毛の地の人物略伝」の一人として紹介されていることを、ある日、たまたま訪れた有栖川公園内の都立中央図書館の開架式書架で発見した。
それまで私は、『神郷町史』という書の存在を知らなかった。実家にも分家にもそんな書はなかったはずだ。父は神郷町長、叔父は神郷町議会の副議長をしていたから知らないはずはない。おそらく父も叔父も「尼子の落人」の言い伝えは語っても、「人傑不毛の地の人物略伝」は子供たちに読ませたくなかったのだろう。
しかし、ご先祖が「尼子の落人」という言い伝えを子孫に残しているのに、「人傑不毛の地の人物」に選ばれるほどの人傑のことを伝えないのはおかしい。伝蔵さんが少年時代の一時期を我が家で過ごしたことは、子孫が誇りにしてよい事実ではなかろうか。ちなみに、『神郷町史』の執筆者は日野農林高校の教諭で、村の代表的な文学者だった白根正寿氏である。
返信:【Re_パンドラの函に潜む「希望」】
なんか、パンドラを徐々に開けている感じだね。長谷部氏は、女系の家系かつ、子宝に恵まれない家だったのだろうね。
戸籍上、輿左衛門さん以降のみなさんには、「長谷部」の苗字はあるのかね。輿左衛門さんや弥左衛門さんまでさかのぼると、年齢差がわからないけど、喜代太郎さんと友次郎さんは18歳、年が離れている。喜代太郎さんと伊曽さんの間にも子宝が恵まれなかったのだろうか。
その後、友次郎さんを養子にとり、「いし」さんと結婚している。残念ながら友次郎さんと「いし」さんの間も子宝恵まれず、ツネさんを養子にとることになった。
さらに、隣人の松田伝蔵さんを養子にとり、ツネさんと結婚させようとしたが、伝蔵さんは養子縁組を解消し家を出て行ってしまった。そこで、勝次郎さんを養子にとり、ツネさんは勝次郎さんと結婚する。すると四男四女の子宝に恵まれ、いまの自分に命がつながっている。
長谷部の氏よりも「尼子の落人」というDNAに誇りを持つ理由は、こういったところにもありそうだ。
喜代太郎さん、友次郎さんの時代には世の中も色んなことがあった。まさに、渋沢栄一の時代ね。
あと、昨晩、食プロの研修で「成形の功徳」という言葉を習った。やはりどんなことでも、簡易的なことでもいいから、形にしないと物事は進まないし残らない。そう考えると、「新見太平記」や「尼子の落人」が「息子へ紡ぐ
物語」へつながっていったのだろうな。
七難八苦という言葉の真意を考えてみると、七難八苦がないと次のステー
ジに進めないのかもしれない。成長がないのかもしれない。ウジウジして
るよりは、足掻き、もがく方が徳を積むことにつながるのだろうか。希望
につながるのであれば、挑む価値があるね。
そんなことを考えながら、久しぶりに、「続日野町史」を読み返すと、やはり、長谷部(長)氏は、広島県、宮島にある厳島神社の家督を相続していたようだ。戦国期に宮島厳島神社の社家として栄えた野坂氏は、長氏の庶流で戦国期に名が変わっているとのこと。長谷部信連が、安芸宮島の検非違使となってから守ってきたと考えられる。
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