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BTSをあまり知らない人に



 先日、美容院の雑誌にBTSの特集ページがあったのでスタイリストさんとBTSの話題になり、あまり知らないという彼がBTSにどんな印象を持っているのか聞いてみた。長年の担当で何でも話しやすい間柄である彼が率直に言ったのは、「まあ、カッコいいと思いますよ。特にV?テテ?でもこの人は・・ちょっとあんまり出てこなくていいかな・・(笑)」と。わざわざ容姿を酷評されてしまったメンバーがRMだった。テテ(V)がカッコよくてRMがイマイチというのはだいたいBTS初見の人が最初に抱く率直な反応だろう。。(今や私の一二を争う推しだが)
RMのルックスがアイドルに相応しくないと叩くアンチも初期は多かったようだが、BTSの心臓であり、要であると言える人物を無知とはいえ特別低く評価するのを聞き捨てならず、その場で簡単に私がレクチャーした「BTSをあまり知らないでジャッジしている人に知ってほしい事」をここでは少し詳しくまとめてみる。



●元々BTSはアイドルグループを目指して集めたメンバーではなかった。

 15歳(日本年齢13歳)でラップを始めアンダーグラウンドで3年ほど活動していたRMの才能にBIG  HITの代表パン・シヒョク氏が目をつけて、デビューさせようとしたのが大元の始まりだった。‘RM‘というのはパン代表が彼につけた名前「ラップモンスター」の頭文字をとったものである。
 RMをリーダーとしたヒップホップグループを育てるために集められたメンバーが、アンダーグラウンドで活動していたラッパーで作曲家志望のSUGAと、ストリートダンサーとして評価されていたJ-HOPEだった。
そこへ容姿が良くスカウトを受けたが歌もダンスも全く経験のないジンや、ヒップホップに関わらず容姿やそれぞれの能力を備えた若いメンバー(グク、V、ジミン)も加わり、当初のヒップホップグループのイメージがアイドル寄りになってしまったという経緯があった。
スタートがアングララッパー中心のヒップホップだったため、昨今のアイドルオーディションのようにダンスや歌の素地もなく、地方の一般家庭で育ったガタガタの個性の集まりだったのがBTSだ。それがデビュー後数年でK-POP界のダンスパフォーマンスをリードするグループになっていたことはその裏に血の努力が想像できる点である。

BTSという名はデビュー当時の名前「防弾少年団(バンタンソニョンダン)」の頭文字をとったものだ。

(※各写真は年代バラバラですが、参考のため特徴のわかりやすいのを貼ってます。多少ムラのある紹介はお許しください・・w)




●無名事務所からのマイナススタート

 超大手事務所JYPやSMエンターテイメントから声をかけられたことのあるメンバーもいたのに、彼ら7人が練習生として選んだBIG HITは倒産寸前の無名事務所。(ここが最大のドラマ!)大手事務所タレント以外はテレビ出演も難しい韓国芸能界。BTSデビュー当時の「防弾少年団」という名前も、元々アングラ志向の強いヒップホップというジャンルをアイドル風グループにやらせているという印象も中傷の対象となり、「すぐに消える。」と予想されていた。


 つまりは、最近のK-POPグループのように最初から世界を視野に入れてルックスや技術を揃えた精鋭集団として有名事務所で作られたグループではなかった。BTSはあらゆる面で逆境にあり、誹謗中傷の的だった。テレビや音楽業界での扱いも低く、大手事務所アイドルの出演キャンセルの穴埋めや、ファッションショーのバックダンサー等をさせられたり、低予算衣装で、小さな舞台での無料ライブなどから始めたアイドルだったということである。


 そして、業界に強いパイプのないことを逆手にとりBIG HITが続けた努力が今のK-POP業界の戦略の主流になっている。
それはライブストリーミング・アプリを使ってファンとの交流プラットフォームを作ったことだ。そこでメンバーに積極的なライブ配信やファン(ARMY)との自由な交流を促したのである。カメラマンやスタッフを通した配信ではなくメンバーがプライベートな場所から自撮りで自主的な配信ができるという点は日本の芸能界では(当時なら)考えられないようなオープンさだ。また、そのアプリを使ってテレビ出演に依存せずBTSのバラエティー番組などを放送することもできた。そういった戦略が結局は国内の人気よりも先に海外での人気を高める重要な要因となったようだ。SNSの活用は時代に何よりマッチしていたのだろう。
国外にファンダムが広がったBTSは自然と米ビルボードにも名前が現れ始め、2016年、デビューから3年目で韓国史上最高順位を記録する。日本とのようにレコード契約を結ばずにアメリカへの進出につながるが、そこでもRMがキーパーソンとなる。


●RMの言語能力とBTSの運命

 元々世界進出を目標に集めたメンバーではないにも関わらず、RMだけは通訳のいらない英語力があったため、アメリカの番組出演でも大活躍しさらに人気を高めることになった。
実はRMはIQが148あり、英語力は独学で得たものだ。中学生でTOEIC900点をマークしていたという彼は米英TV出演やインタビューではメンバーの通訳もしながら当意即妙に楽しくやりとりができる。BTSのメッセージを的確に代弁し、差別的偏見や批判的意図のある失礼なインタビューや会見の場でも頭の回転が早く、冷静に対応する態度は世界中から尊敬を集めている。また、曲作りを担当するSUGAやRMが歌詞の中で伝える言葉やメッセージは文学者も唸るような深さで、世界中の若者に訴えかけてきた。2018年にはLOVE  YOURSELFというアルバムのコンセプトでユニセフとパートナーシップを組み、国連総会で初めて韓国のアイドルグループのリーダーとしてスピーチをした。RM自作の英語のスピーチは世界中のK-POPに興味のなかった若者の心にも深く届くものだった。BTSの個性的な7人をまとめるだけでなく世界中の国や人種の違いを超えて、どんな混沌の中でも前向きな方向性を示すことができるリーダーシップが彼にはある。それをメンバー全員が指標にしてBTSがまとまってきたのがよくわかった。BTSは言語活動によって世界で成功したと言っても過言ではないだろう。それはコンセプトや曲の世界も含めたBTSの軸となる世界観に関わる。BTSのどこを切っても一貫してブレない大きなナラティブがあり、そこに世界中の人々が強力に惹かれていると思う。それは彼らの‘苦難‘と‘成長‘だったり、‘弱さ‘を抱えたヒーローの姿だったり、‘マイノリティー‘や、‘抑圧‘を受ける若者を守ることだったり、ありのままの自分を‘愛する‘ということの追求だったりする。楽曲について語る時もRMの考えや言葉はBTSのナラティブを引っ張っているなあと思える。メンバーも含め人々はそこに、それぞれの生き方を当てはめて共感するのだ。

 BIG HITがRMと出会ったことは神の一手である。
 そのRMに、事務所の見学時に出くわし、彼のラップをする姿に一目惚れしてBIG HIT入所を決めたというメインボーカルのジョングクも、BTSのマルチアイドル路線を進めるには欠かせない神の一手だった。そんな神の一手が少なくとも確実に七回打たれた結果がBTSだと言うしかない。メンバーそれぞれが、押しも押されもせぬダンス部門のトップ、ビジュアル部門のトップ、作詞・作曲部門、歌の部門でトップに成長し、リーダーの能力に引けを取らずBTSを多方面でのトップの地位に引っ張り上げた。そして何より「ファンバカ」「ファンオタク」と称される彼らはARMYへの想いや絆も業界トップであると断言して間違いないだろう。


残る“神の六手“についても説明したいところだが、過小評価されがちなRMの重要性をポイントにまとめてみた。上にまとめたのはRMの魅力のほんの一側面であり、RMには実は誰もが急激に親近感が持てる、破壊力抜群のギャップの魅力がある。それは少しでも興味を持った人が発見してほしい。(YouTubeなどで“破壊神“と打てば出てくる伝説の数々が見られます。)唯一無二の愛すべき存在に昇格することは折り紙付で保証する。腹筋をコアから鍛えたい人、日々のストレスを忘れたい人にもおすすめする。彼のギャップをフルレンジで堪能したい方はぜひ2018年のBTS国連スピーチから見ていただきたい。 
(本業のラップも忘れてはならない。アイドル目指してなかったことが端的に伝わる初期のコアな一曲を一番最後に貼っておくので興味があればぜひ。)


 この記事を書いてるうちに書いておきたいことが膨らんで実際話したことよりだいぶ熱量が加わっている。。。(質量も・・)
スタイリストの彼は私の熱いレクチャーに押されたのもあってか、「そんな話聞いたらちょっと興味出てきましたね。。」と言っていた。特に、今はメンバー一人一人がミリオネアクラスの世界的グループが、無名事務所からのマイナススタートだったという点にはとても驚いたようだった。

驚く話は終わりがないほどあるので、またいつか。。。



Rap Monster ‘JOKE’


#BTS  #RM #ナムジュン

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