Diary

冷凍保存の憂鬱。開けた段ボールの数。あらゆる階層が用意された人生と名付けられた呆れるほど長い夢。列車から降りすぐに壁に手をつける。交差する昼と夜の国境で佇んで待ってて。その時は是非笑ってね。死んだ顔で傘突っ立てて見た無垢な水晶みたいな瞳。「また駄目にしちゃったね」って項垂れるぼくの頭を優しく撫でて欲しい。ばら撒かれたブロックを片付けるのは。持ち帰ったファストフードをお腹いっぱい食べる。部屋ではトヨタのCMが流れていてぼくはそれをさっとゴーストバスターズの映画に切り替え白い楽園のような枕に頭をつける。酩酊して冷え切ったぐらぐらの脳に垂直の線を描くこと。15年前にたまに吸ってたウィンストンの煙草。16年目の今日はたった一人だった。玄関ホールをはしゃいだまま名前も知らない貴女と手を繋いで通り抜ける。印字されたゴシック体の活躍を誰かが覗き込んでいる。みっともないと吐かれた唾を俯きがちにただ受け止めよう。都市の改札をくぐり抜けるときのシンクロニシティ。1995年と近未来SFと物語性。その厚い地層の奥に霞んで見えるのは真実か否か。もし遠くで悲鳴が聞こえてもぼくはきっと窓のシャッターを降ろすだろう。白々しい瞳でそっと見捨てたのは。結局人間は独りでしかないけれど分かり合えなくても君のこと好きだよぐらいの距離感が案外ちょうどいい。地球儀をひっくり返す。子供達の手品。必死になれない虚無のなかで小さく光るもの。ルールも思想も美学も信念もない競争。高層ビルの配列が織り成す。壮観。換気扇の下で笑った。一滴の水を欲しがればいい。きっと南極の海はとても静かなのだろうと思う。黙ったまま一言も発さない。そんな人生の美しさにふと想いを馳せる。繋がれた白いイヤフォンのLとR。持ち帰ったチケットの半券がたまに開ける引き出しに残っている。中指立てない親指下げないって適当につけたタイトルを秀逸だねって言いながら鼻で笑う高いブランド物の指輪を付けた根はヤンキーの女の子。ぎりぎりで正気を保とうとしている私の眼には何もかもが異常に見えた。誰かにとっての私もまた同じことなのかもしれない。諦め。今日もビールが美味しい。浮き輪を着けて海を泳ごう。ここは清潔に隔絶された部屋。血管の収縮。羽ばたく時間を待つ夜の飛行場の点滅する航空機の群れ。甘美な旋律の誘惑。遠い誰かへの淡い夏の日の空想で斜塔から流れ出る白い体液。君の舌の上で溶ける時を待っている。綺麗に着飾ればまた街へと出掛けた。写真と残像。その壮絶で凄惨で穏やかな父親殺し。ユングは裏の机上で密かに曼荼羅を操る。神話。双子。時代を跨ぐ。あの強がりはぼくの弱さの現れそのものだったと知る。諍いを避けるように。丁寧に描く。誰かを愛するということがこれほど尊く尚且つこれほど難しいことだと思ったことは今までになかったな。

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