母が送ってくれた浴衣は梅の柄だった。
日本舞踊の先生にどの浴衣を着たらいいかわからなくて、送ってもらった浴衣一式見せた。

「梅の柄ね、わたしも好き」

そう言われて、梅なのだと分かった。
梅は嫌いなはずだったのに。
忌むべき、捨てるべき花でもあったのに、母は梅を悪く言ったことがなかった。
捨てずにわたしに受け継いだ。
「お母さんの浴衣を送ったよ」
嫌いになるはずだった花を、母は娘に贈った。
わたしは梅には触れたくなかった。
花の名前も口にしたくなかった。
それでも母は梅を継いだのだ。
わたしのために捨てずに、なぜか。

母の浴衣は綺麗だった。
絞りの梅の浴衣。
美しい絞りの浴衣だったし、丁寧に畳まれて送られてきた。
お稽古のときは適当に畳んで持って行くわたしと大違い。

梅を着てぎこちなく舞う踊りは、届くのだろうか。
母に、父に。

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