2022年中小企業診断士1次試験を解いてみたメモ:経営法務編

2022年中小企業診断士1次試験、私は去年受かっていて今年保険受験するつもりがなかったので実際には受けていない。公開されている「E 経営法務」の問題にトライしてみたところ92点だったので、解答の際にどのようなことを考えていたのかを記してみた。

なお、以下は自分がどう考えて解答を導き出したかを書いたものなので、書いてあることが正しいとは限らない(つまり私が勘違いしている可能性がある)点には留意いただきたい。

また、コメントにある条文番号は別途調べたものもある。

解答手順

第1問

株式の併合と分割。
株を細切れにしたりくっつけたりするのだから、資本金は変化しない。
併合や分割の意味がわかっていれば、所有株式の増減も自明だろう。

手続要件はちょっと難しい?併合の場合、株主でなくなってしまう株主(例えば10株を1株に併合する際の、1株所有株主)が存在することを考えると、手続要件は厳しくなる。特に、株主としての権利が制限される系の決議は特別決議を要する。

ということでア。

第2問

取締役と監査役の任期。原則の2年4年と、監査役の任期短縮不可を知っていれば解ける。エ。

なお、監査役の任期短縮が不可だと知らなかったとしても、このように取締役と比較して聞かれているんだから、制度が異なるという推測は成り立つのでは。

もっとも同じ論は任期の伸長についても言えるが、短縮の「できる」「できない」という定性的な比較に対して、伸長の場合の定量的な比較で取締役の2→10に対して、監査役の4→8はいささか不自然ではなかろうか。

第3問

これは知らないと厳しい。エ。

しょーもない議案を提出する株主が結構いたらしいよ。

第4問

これはイだね。取締役は、株式会社の手足となって実際に動く立場だから、法人ではなく自然人でないと、という趣旨。持分会社の場合は、法人が社員になることはできるけど、その代わりに職務執行者を登記することになる。

ウとエの論点は株式会社と合同会社で差異なし。アは、株式会社は出資額の半分以上は資本金に上乗せしないといけないけど、合同会社はその規定がない。

第5問

分割と事業譲渡。細かい。

事業譲渡は、事業の売買だから金銭対価はもちろんOK。分割の場合、原則は株式だったと思うが、対価の柔軟化というやつで金銭もOKだ。なお、新設系組織再編では金銭を対価とすることはできない。

対価を株式とするのは、会社分割ではもちろん可能。事業譲渡も、要は事業を現物出資するようなものだから、可能と考えて良い。(設問1:エ)

後半、
ア:反対株主の買取請求権は、会社分割ではOK。事業譲渡は単なる取引だからダメでしょう。
イ:どちらも契約書記載の効力発生日のはず(新設系だと登記が効力発生要件)。
ウ:合ってる…と思う。
エ:会社分割では債権者保護手続必要。事業譲渡ではどうだったかな。
というわけで、ウ。

第6問

非公開会社(というのは会社法の用語ではないが)とその株式についての定めの問題。

ア:それは公開会社の場合。非公開会社は決議要件はともかく、できることは自由度が高い。
イ:んなこたーない
ウ:属人的な定めというやつ。これもア同様株式設計の自由度の高さ。
エ:んなこたーない
ということで設問1はウ。

設問2については、
ア:そりゃそうだ。商号は定款の絶対的記載事項。
イ:最近は電子定款が主流ですかね。
ウ:昔の有限会社は300万円が下限でしたね。今は制限なし。
エ:発起人の数も今は制限なし。昔は7人とか。厳しい。
ということでア。

第7問

普通決議は過半数が決議要件。なので A=50%。
特別決議は2/3が決議要件。なので B=3分の2、C=特別決議
Dは多分デッドロック。クローバックという語は知らない。
エ。

第8問

お。知財法。
これは知ってるかどうかだよね。不実施裁定まで覚えないといけないの?
エ。

第9問

専用実施権は、特許権者の代わりに権利を活用してもらうイメージに近いので、もちろん侵害予防の請求なども可能。
共有特許権は、実施については制約なし(そのための共有、とも言える)。
専用実施権を与えた範囲で特許権実施不可能(特許法第77条第2項)。
未成年者も権利主体になれる(手続きはできない(特許法第7条第1項))。
イ。

第10問

著作権法。いかんな。だいぶ忘れている。
細かいところを聞いてくる問題だけど、幸い、無言劇については記憶があった。エ。

第11問

不競法。これもあやふやになりつつある。
アは氏名も商品等表示に含まれる(第2条第1項第1号)のでバツ、エは技術的なものに限定されない(いわゆるビッグデータを指す)。

イ:デッドコピー3年の起算…外国…国内だったかな…うーん。
ウ:「規定されている」の地雷感たるや。

イと解答したが、ウが正解だった。

第12問

実案かー。
ア:出願日からだね(実用新案法第15条)。
イ:これ弁理士試験だと「図面」か「必要な図面」かが論点なんだけど、診断士試験ではそこを聞いてるわけじゃないよね?(実用新案法第5条第2項、特許法第36条第2項)
ウ:ん?意匠?
エ:推定されません。実案は緩いので、権利者の保護も弱い。というイメージ。
イが答え。

第13問

パリ優先権とマドプロ。
パリ優先権は6月か12月か。マドプロ出願に本国登録は必要か否か。
ガチンコ知識勝負。おそらく推論で答える余地はないと思う。
ア。

第14問

新規性喪失の例外。特許法第30条。
1年、1年半、2年、のどれか。
特許を受ける権利を有する者、それ以外の者、両方、のどれか。
これもガチンコ知識勝負だが、1年と知っていれば瞬殺。
ア。

第15問

著作権と著作者人格権。
同一性保持権は後者で移転不可。
…と知っているかどうか。イ。

第16問

とりあえず、特許権は共有者の同意なく実施はできるけど、共有者の同意なく別の者に実施させる(移転、実施権設定)のはNG。なのでアエはバツ。

著作権の場合はどうか。記憶はあやふやだが、特許権の共有はその後の実施を想定して共有として出願するのに対し、著作権は著作を共同で行ったかどうかであって、実施の許諾までは想定しないはず。…ということで、実施には他の著作者の同意が必要。なのでウ。

第17問

これは英文の意味を理解できるかどうかですわな。
後半は、この手の無理矢理押し付け系をどの法で制限しているか。
ウとイ。

第18問

時効。民法改正でフォローがちゃんとできてない部分。まずい。
とりあえず、身体系は知って5年、という微かな記憶に基づいてエ。

第19問

保証契約。主に保証人保護。
ア:保証人が法人の場合は書面ならOKでは。
イ:主債務が消えたわけじゃなくて、弁済不能になっただけだから、保証債務が消えるというよりむしろ保証人の出番、ということだろう。
ウ:電磁的記録は書面の代わり、電子署名は署名捺印の代わり。民法上署名捺印を要求する条文はないのでは?
エ:んなこたーない。保証人たまったものではない。
ということでイ。

第20問

相殺。給与債権や銀行債権をイメージすると理解早いよ。
ア:差押禁止債権の代表例は給与。この例で「できる」とすると、雇用者が何らかの債権(寮費とか?)を理由に給与を振り込まないということが許されてしまう。
イ:銀行で考える。差押を受けた債権は、誰かの預金債権。この場合の第三債務者は銀行。差押前に取得した債権はたとえば住宅ローン。銀行は、住宅ローンと預金の両方があるお客がいた場合に、その預金に差押がかかったらどうするか。そりゃ住宅ローンの弁済に預金を充当したくなるでしょう。それができないと銀行かわいそう。
ウ:相殺の意思表示には条件も期限も付けられません。
エ:これはその通り。
ということでエ。

第21問

相続放棄、代襲相続、胎児の権利。
相続放棄は初めから相続人でなかったことになる。
胎児は相続できるかという論点は有名(というか条文にある)だけど、知らなくても、こういう聞き方をされたら「さては生まれてなくても相続する?」と疑うのがセオリー。
イ。

放棄したら代襲的なことは起こらない(=Kは相続しない)とか、既に死亡した親の相続分をさらに子で按分(IJはBの半分)とか、その線からでも正解は可能か。

第22問

相続もう1問。
ア:超えない部分は登記せずとも対抗可能。超えた分は登記が対抗要件。
イ:放棄したら初めから相続人でなかったことになる。残った人たちで熟慮すべし。
ウ:5年は短期賃貸借になるか…?
エ:配偶者居住権が新設されたのは知ってたが、対抗要件は通常の賃貸借と同様引き渡しでOKか、登記が必要か。

悩んでエとしたが正解はウ。
確かに、通常の賃貸借より要件を厳しくする理由はないよね。不覚。

総括

まとめると、

  • ちゃんとわかってて正答:1, 2, 3, 4, 5-1, 6-1, 6-2, 8, 9, 12, 13, 14, 15, 17-1, 17-2, 19, 20, 21

  • 消去法で正答:5-2, 7, 10, 18

  • 推論で正答:16

  • 誤答:11, 22

でした

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