LSE/ロンドン留学記 (LT Week 3)

エッセイの提出期限が迫っている。
それと同時に修論のテーマも考えなければならない。
今のところ、広島の新サッカースタジアム建設をテーマにしようかと考えている。
経済効果、にぎわい、というロジックで公費を使って既存の公共空間を私的空間へと開発する事がどの程度正当化されるのか。
経済的にも社会的にも一般市民への影響は果たしてプラスと言えるか。
地元住民を含めた反対意見はどのようにして棄却されたのか。
日本の再開発スキーム全体における課題にもつながるのではないか。
修論は今後のキャリアにも使えるものだろうから、できれば医学のバックグラウンドを生かして公衆衛生的な側面も絡めたいところ。

卒後のステップはMPHも考えていたけど、やはりせっかくこの道を開いたのだから、もうちょっと都市デザイン・都市計画を勉強したい、という思いが最近強まっている。
質的研究で、データ集めを終わりにするタイミングを、saturated(飽和)した時、とするアプローチがあるけど、それと同じで、まだこの分野での知識経験は全然飽和していない。というか知らない事がたくさんある、という事が分かったのが今の正直な状況かもしれない。
仕事だけではなくプライベートも含めて、将来設計を考え直さないといけない、と思っている今日この頃。


<Cities and Social Change in East Asia>都市化とアジア諸国の政治
東アジアの急速な発展はDevelopmental Stateという国家の形に特徴付けられる。

・Developmental stateの特徴
①産業的発展が至上命題で、産業化の利益を最大にするために都市化は利用される。
②Methodological Statism:地方の状況は無視される。国家はすべてに責任を取り、すべてを決定する。国家が市町村から都道府県まで色々なスケールで影響を及ぼす。意思決定がスムーズに行われる。
③権威主義的統治(1990年代になってglobalizationとdecentralizationの時代になるまで)
④代表的な都市は、目標とされ、どの都市もそれを目指すように向けられる。
東京の首長が日本の国政に影響するように、大都市は国家レベルでのキープレーヤーとして位置付けられる。
⑤developemental stateへの固執:decentralizationがglobalizationの中で起こっているにも関わらず、いまだに国家の影響力を維持しようとしている。それゆえに摩擦が起こっている。
⑥世界都市になるための方法として都市化を捉え、都市をそのための模倣や実験の場として使っている。

・Developmental stateの経済へのアプローチの特徴
①計画合理性(↔市場合理性)
②政治的エリートの過重労働による貢献
③政治的安定性を重視する
④経済性を優先して再配分に興味を示さない
⑤自律性を重んじる中での大企業優遇
⑥投資の振り分けに対する国家の強力な介入
⑦輸出偏重(国内市場が小さい)

・Methodological nationalism(Methodological statism)
小さなスケール(地方自治体のスケール)を無視して、大きなスケール(国家)ばかりで経済発展を説明しようとする。
この傾向には、当時の冷戦下で東アジアがその最前線だったという政治地理学的な要素が影響している。
その後、こうした国家の圧政による支配は、覇権的階級による下級社会の支配、という階級的社会構造による支配に置き換えられた。
domination & oppressionからpersuasion & cooptationへ、coercionからconsentへ。

・中流階級の醸成を介した国家の介入(Dictatorship of the middle class)
東アジアでは計画的に中流階級が増やされている。
欧米では中流階級が増えれば民主主義的自由が実現される、という考え方があるが、これは東アジアでは違っている。
実は民主主義的自由への動きを牽引しているのは中流階級ではない。
学生運動や批判的学者が、デモを行うと、中流階級は、もはや国家は守ってくれない、と考えるようになり、社会不安が生じ、民主主義への動きが高まる。あくまで中流階級はそうした流れに続いて動いているだけ。基本的には保守的な性質を持っている。

・State capitalism:国営企業など、特定の企業や産業への国家の支援による発展
どういう産業がテコ入れされるか、というのは国によって異なる。
シンガポールでは、国土が小さいという"vulnerablity"というロジックを軸に移民政策、ハイテク産業奨励、公営住宅・高層マンション建設の誘導への国家の介入が正当化された。
一方で韓国では住宅は基本的に個人が責任を持つものと考えており、大企業を支援する代わりに、彼らが労働者の社会福祉に責任を持つべき、というスタンス。

新自由主義は国家の介入を減らすわけではなく、介入の形を変えるに過ぎない。


<Independent Project>
<テーマを考える時の3つのポイント>
・curiousity:方法論でも、内容でも、自分が興味を持つものにフォーカスするように
・practicality:議論を正当化するために、先行文献を使わないといけないけどpracticalityを大切に。intelectural rationalとpractical rationalを両立するように。いわゆる科学的研究で用いられるような仮説を立てて、検証して、というのは必ずしも必要ない。特に今年は、どういうデータにアクセスできるか、どういう手法を使えるか、現実的なアプローチを考えるのが大事。
・instrumentality:このリサーチを今後の進路に使えるように。Design farmに働きたいか、PhDに行きたいか、とかによって内容は変わるだろう。そこに応募する時に使えるような内容をやるのがよい。


<アプローチを考える時の3つの注意点>
- should be based on research:必ずしもprimary researchである必要はない。いわゆる形式的なresearch paperである必要もない。色んな手法を使っていい。
- needs to have an argument:reportではだめ。必ずしもanalitical argumentでなくてもよくて、propositional argumentでもいいが、argumentは必要。argumentはtopicとquestionに対する回答に当たる。
- should be somehow spatial:これは必ずしもvisualである必要があるというわけではない。スケールはミクロでもマクロでもいいが、議論の焦点に何かしら空間的要素を盛り込むように。


<大きく分けて3つのprojectのタイプ>
※当然これらをミックスする事もあり、この3つのどれかに当てはめようとする必要はない。
- design oriented project: look like publications from design farm or architectural company. visualな方法を使うのが特徴。propositonal な形になる事が多い。
- policy oriented project: government, thinktank, policy schoolが出すようなスタイル。量的データを使うものでも、インタビューの内容や報告書をベースにした質的なものでもどちらでもいい。
- social science oriented project: academic articleのスタイル。visual methodにはあまり頼らない。インタビューやdiscourse analysis, visual analysisなどを使う。literature reviewなどを含む事が多く、academic questionに答える形になる。(policy based questionとacademic based questionはちょっと違う)

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