LSE/ロンドン留学記 (LT Week 8)

LTが再開して2週間。
ロンドンの天気は安定しており、ランニングにちょうどよい気候が続いている。
12月は16時に日没していたのに2週間で日没が30分も伸びて今は18時まで明るい。
今月末にはサマータイムになるからますます夕方が明るくなるだろう。

日本の方では、オリンピックで外国人の観客を入れない方針が決まった。
今のところ日本側からは帰国前のPCR、帰国後3日間のホテル隔離とGPS登録が義務化されており、イギリス側も出国時に正当な理由での渡航である旨の申告が必要になっている。
検疫は今後強化される一方になっていくだろう。
イギリスでレストランなどのすべてのサービスが元通りになるのはまだまだ先であり、今学期末で授業が無くなると、ロンドンにいるほぼ唯一のメリットである時差の問題も無くなってしまう。
ということで来月に入ったら寮を引き上げて帰国しようと考えている。

<Cities and Social Change in East Asia>金融資本主義、福祉、都市の危機
〜住宅の特徴3つ〜
- 住む場所(社会的再生産のための存在)としての住宅 vs 資産としての住宅
- 住宅は本質的には土地に縛られて動かないものだが、金融化によって流動性を持つようになり、空間を超えて取引されるようになっている。
- その一方で、住宅を現金化しようと思っても他の金融資産のようにいつでもどこでも現金化できるわけではない。

金融化は日常生活に染み込んでいる。人々は銀行口座を開き、貯金をする事を美徳として推奨されている。
また、金融リテラシーやリスク管理も日常生活に浸透してきている(リスク思考と金融化というのは密接に関係している)。
人々は金融システムに参加することを誘導され、新自由主義社会の中で自ら起業家として自らの資産を管理する事が求められいている。
そうした中で、動かない資産である不動産の人気は高まっている。
「資産としての不動産」という考え方は、不動産投資に参加できない下層階級にも刷り込まれている。
社会福祉も国が責任を持つのではなく、自分の資産を使って対処するものへと変化してきている。

しかし、資産に基づいた福祉、という考え方にはいくつもの問題点が存在する。
- すべての人が合理的に行動して福祉のための資産管理をできる保証は無い
- 不動産投資は、初期に購入した人たちは利益を得られるが、後から参入した人はすでに価格が高騰しており競争に参加できない。これにより世代間格差が生じる。
- 多くの資本をすでに持っている人がより多くの富を増やすチャンスを得られるため、富の不平等が増大する。
- 住宅価格は上昇し続けると信じられているが、その保証は不確か。
つまり、この福祉の形で恩恵を受けられる人は限られており、不平等な福祉システムとなる。

西洋諸国では、戦後福祉国家が形成された後に民営化・新自由主義化が進んだ。
一方で、東洋諸国では戦後の最初から福祉国家は存在せず、最初から国家は福祉を個人・家族の責任に任せてきた。つまり、自分の資産に対して責任を持つように戦後直後から誘導されてきた。そうした中で、資産を増やす手段として不動産を重視する文化が形成され、下流階級も含めたすべての階級にこの文化が浸透している。


<City Design Research Studio: Film Session> Q2P
インドのムンバイとデリーを舞台にしたジェンダーとトイレを扱ったドキュメンタリー。
ムンバイはインドでも人口密度が高く、人口が多く、経済の中心的な都市。
グローバル都市に向けて急速に発展している。
しかしその影で、衛生インフラの整備は追いついておらず、特に女性のトイレ事情は劣悪である。

カースト制度の中で、もともとトイレの汲み取りは特定のカーストの人々の仕事とされてきた。
法律的に人手による汲み取りは禁止されたものの、彼らは未だに清掃業などに従事させられている。
彼らの多くが暮らすスラムには個人宅のトイレなどはほとんど存在せず、公衆トイレが一般的だが、それも機能していない事が多い。
そのため屋外での排泄が一般的に行われている。
屋外での排泄を強いる状況は女性を性暴力やハラスメントのリスクに晒すだけでなく、その恐怖から女性は飲水や排泄を避けるためにUTIや脱水などの健康障害に苛まれている。
また、公衆トイレが不足している事は、女性が屋外に出る自由を奪い、男性と比べて長時間並ぶ事で時間的ジェンダー不平等を生み、彼女たちの社会進出を妨げている。
カースト制度、貧困、女性、という問題が複雑に絡み合って、スラムに暮らす下位カーストの女性の生活を苦しめている。
インドのトイレ問題は、女性の自立を妨げる課題を象徴していると言える。

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