LSE/ロンドン留学記(LT Week 1)

久しぶりに振り返りをしている。

イギリスの感染状況もだいぶ落ち着いてきたようでよかった。
今学期以降のすべての授業がオンラインになる事が決まったが、荷物がロンドンに残ってるから、どっかのタイミングでは一度戻らないといけない。
ただ、入国制限が寛容だったイギリスも、全渡航者に渡航前PCRと渡航後10日間の自主隔離を義務付けるようになり、渡航は以前よりも難しくなってきている。

冬休み終わりにロンドンに予定通り戻るという選択肢もあった。
でも、ロンドンに行っても大学も店も開いていなくて寮に缶詰になってしまう事、その時点でロンドンの状況が感染状況的にも規制的にも悪化する一方で先行きが不透明だった事を考えると、時差の影響で授業が夜になったとしても日本に留まるメリットが大きかったのではないかと思っている。
ロンドンにいた時は、ずっと部屋にこもってるのが原因なのか、誰とも会わないのが原因なのか、ワークロードが高いのが原因なのか、リフレッシュ方法が限られているのが原因なのか、まぁどれもが関係してるんだろうけど、いわゆるバーンアウト的に視野が狭くなって苛立ちやるくなっていくのを経験した。
コロナによるこういう閉ざされた環境は精神面に大きく影響してるんだろうと思う。先生や同級生の中でも、ある人はタスクに集中できるようになったと言っているけど、多くの人はパフォーマンスが落ちたと話している。まぁバランスの問題なんだろう。
ロンドンに戻っていたとして、おそらく今の段階では大きな差は生まれてないと思うけど、やはり5週くらいいるとだんだんストレスが溜まって、また視野が狭くなってきたりしていたのではないかと思う。
結果的には広島の課題に目が向くようになったし、快適な食事・運動の環境を手に入れてストレス無く生活できている。

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勉強の方は、Urban Social Theoryのsummative essayに奮闘している。
どうやって読んだ文献を自分のエッセイに組み込むかが大きな課題だ。
自分も色々と批判的・論理的に物事を考える方だと思ってたが、こんなにロジックの組み立てが難しいとは思っていなかった。。
医学のせいにしていいのか分からないが、どうやって異なった立場・パラダイムの読者に説得力のあるロジックを組み立てるか、という点をあまり意識していなかったのかもしれない。
これがまとめられたらだいぶすっきりするんだけどなぁ。。

色々文献を読む中で、いかに自分が医療とか都市の背景にある社会・経済的な構造について無知だったかを思い知らされる。
新自由主義が何物なのか、資本主義が何物なのか、力関係がいかに世界を構築しているか。
背景にある社会構造を考えずに、浅薄なまちづくりの考え方になっていただろう。
だからこの段階できちんと暴露されてるのは、大変だけど大事だし必要な事だと思う。
ただ、ちょっと分かったような気がした直後には、やっぱりわからない、というのが襲ってきて、その繰り返し。もがいてる時が一番成長していると信じてがんばるしかない。

世の中も不安定だけど、自分のキャリアも不安定で、何かと自信が無くなりそうな今日この頃。

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今学期の授業は通年のStudio Projectと、今学期だけのCities and Social Change in East Asiaの2つだけで先学期の半分だ。

<Cities and Social Change in East Asia>東アジアにおける都市と社会変化

東アジアの都市化はその急速さに特徴付けられる。
ヨーロッパ諸国のGDP per capitaが5倍に増えるために100年以上かかったのに対して、東アジア諸国はわずか25年で達成した。
つまりヨーロッパでは数世代をかけて経験する社会変化をわずか1世代で経験することになった。

こうした急速な都市化が可能になった背景には独裁的・中央集権的な政府の強力な介入があった。
政府の指示で迅速な資源の配分が行われ、経済的な発展を至上命題とすることで、それに伴って生じる排斥や抑圧を正当化した。
西洋諸国においては、産業化(primary circuit)に追従する形で都市化(secondary circuit)が起こるが、東アジアでは政府が誘導する形で不動産開発・投資が先行し、都市化を誘導した後に産業化が追従する形を取る。これにより都市化と産業化がより密接に関係しているのが特徴である。

<Studio> Guest Talk by Tolu Oni (Urban Epidemiologist)
医療分野以外の要素が健康状態に大きな影響を及ぼしている(Upstream determinants of health)。
Life course approach(小児期の環境が将来的な健康リスクに影響する)という時間軸での視点も重要である。
都市化そのものが健康に悪影響を及ぼしている(8つの要素8S:Sugar, Salt, Sports recreation, Sleep, Stress, Safety, Social cohesion, Smoking, Smoke)

こうした問題を解決するのが難しい理由は大きく2つある。
1. problem blindness。介入(原因)と結果に空間的・時間的に隔たりがあるとアクションは取られにくい。
2. wrong pocket problem。お金を出す部門と、それに恩恵を受ける部門が異なるので、資金調達が難しい。

将来の予想される悲劇を招かないためにできる事。それは
1. 若年者の健康にもっと注意を払う
2. 科学をより市民の身近なものにし、市民参加による政策決定を行う
3. 分野横断的な協働と疾患の枠組みを超えた健康状態の調査
4. 予想される将来の有害事象を、数的データを用いることで現在の介入の必要性を説得力のあるものにする

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