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70年代のバイク乗りの週末・4

「 こんなはずじゃなかった…… 」 片岡義男かぶれ・79年のバイク乗り達

こんなはずじゃなかった…

でも、箱根で降られるよりは、良かったかもしれない

まだ、保土ヶ谷インターだが。

どんよりくもった夜明けは

ざまあみろといわんばかりに、そのままだった。

夏はおあずけ…

あんなに蒸し暑い夜の後なのに

いや、あとだからか。

ついにふりだした、シールドにこつんこつんと雨があたる。

せっかく乾いたジーンズは、また振り出しにもどって

気休めにタンクバックだけカバーを付けようとパーキングに入った。

対向のパーキングにはたくさんのバイク

ひざに擦りまくった、勲章をつけたレーサーレプリカたち

サイドカーにゴテゴテつけた集団

ピンク白のつなぎに白のVT これだけはいただけない…

もう、今日はあきらめたほうがいいよ、と心の中でつぶやきながら

第3京浜の上りにのった。シールドの前は水族館。

川崎I.Cを過ぎるころには、先行車に水煙があがっている

日曜日をはじめるには、あまりにずぶぬれで、

風呂屋に横ずけしても、あまりに早すぎる

といって、シャワーを借りる友達のところによって行くにしても

昨日からの話をしきれないうちに、きっと夕方まで眠ってしまい

そこの家主の日曜日が台無しになってしまうだろう。

面倒で黙っていれば、

なにもこんな日に走らなくても…と言われる、はずである

それに答えることばは、バイク乗りにしか通じない。

そうだ、あそこに行こう。

環八にでる最後のコーナーで、思いついた

未完成部分を通りぬけ、15号を北上し始めたら、中途半端に雨は止みだしてきた

あちらこちら泥が乾き、真っ白である。

きっといわれるだろう 「こんな時間にどこ走ってきたの?」

「そんなかっこで・・」と良子に。


裏道をにはいって、まだ早い日曜日の午前中

回転を押さえて、そっとマンションの前でエンジンを切った

濡れて重くなったブーツで2階に上がりインターホンを押した

ドアの向こうにでなぜか、知っている男の声がした。

反対の階段の下にには、雨で濡れてはいるが、きれいなスズキの400が止まっていた

見た事のある品川ナンバーだ。

こんなはずじゃなかった…………

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