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路上対局inデリー

散歩をしたら、ふと、思い出した2001年に旅したインドの夕方の街角。

深夜特急ごっこ5_0012

デリーの日曜日の夕方時でした。

何処の国でもみかける、道端での対局です。

テーブルを出して、チェスのような白黒の盤に、いろいろな、駒。

ジイさんと若者、2人のゲームなのですが、見物人が4、5人?

じっくり2人だけでやらせてもらえないのがインド、なのです。

僕も観戦させてもらいました。

どーやら局面は中盤。

チャイを飲みながら、余裕で押し気味のジイさん。

顔は白く彫が深く、髪はもう無いがカッコいい欧米風の趣。

対する若者。よく焼けた、いや、ごめんなさい…

黒い肌に横分けヘヤーで口髭。典型的なインドの若者風。

ちょっとぐらい押され気味でも、ほお杖ついて、真顔で勝負。

それを取り巻く面々は、

ジイさん側に1人、白いクルタのジイサンがついている。

若者側に、やはり口髭の若者がアドバイスする。

中央には、まるでレフリーのようにドカン、と座っているのが、

ターバンを巻いたシーク教徒のおじさん、

今時、レイバン型のメガネをして渋めにキメる。

さらに対面には足を組んだ「そんなに熱心には見てないよ…」と

気取ってはいるが観戦中の若者1人、

ピッタリのブラックジーンズに、細目のメガネ、お洒落なインテリ?

駒が動いた、

動かしたジイさんは無言なのに、隣りのジイさんが、

やいのやいの…こいつがウルサイ。

すかさず逆襲で駒をとった若者に

隣りのセコンドがなにか耳打ち…

ひと駒ぐらいとられても動じないジイさん。

なのに、周りが「いわんこっちゃない、それを動かしたから…」やら、

手を出しては、自分の作戦に同意を求めてアピールするやら…

誰の対局なのか、判らなくなりそうだ。

しかし、2人はかまわず勝負。

この位でうるさがっていては、インドでは生きていけない。

グ、グッと、駒を進めたジイさん、

ム、ムッと、頭を抱え込む若者、

気取っていたインテリ君も、我慢できなくなって口を挟む、

「ホラ、ホラ、ア~ダ、コーダ…」

横に駒を逃がして、切り抜けようとする若者に、

追い詰めるようにジイさんの駒がねじり寄る。

腕組みしていたシークのおじさんも、思わず身を乗り出し、

「ソ、ソレが…ソコを…」

おっと突然!

向かいの八百屋の野菜を食べた野良牛が、

おばちゃんに棒でぶたれて、こちらへ逃走。

全員すっと立ったが、盤を死守。

飛びのいたのは僕ぐらい、

さすがデリーの下町っ子達。

あ~驚いた、

なにもなかったように、勝負は続く。

流れが変わり幸いしたか、若者が新展開をくりひろげ、

勝敗の行方は五分五分に。

さすがのジイさんも口を開き、ゆびで指しては、

ブツくさ、ドーコー…心理作戦開始か?

舌戦、負けじと言い返してはニヤつく若者、

さあ、逆転なるか。

しかし、インドの勝負、なかなか決まらない、

ジワリ、ジワリとベテランのテクで攻めるジイさん。

駒数が減り、キングの駒に詰め寄られ、

苦戦を強いられる若者。

若者、隣りのセコンドに小銭を渡す、

すると、すぐにセコンド君はお買い物。

インド男性みなさん愛用の噛みタバコを買ってきた。

若者、一息で口に放りこむ、

口の中に広がる、ハッカの味で気分転換。

お構いなしにジワリ~っと駒を動かしたジイさんサイド。

タイミングを外すかのように、タバコの唾をはいてみる若者。

さすがの周りも黙った緊張の終盤。

若者の、つい、なにげに動かしてしまった駒を、

ジイさんは見落とさなかった。

ザックリ、と「王手」

ここで日本式なら「参りました」といくところが、

若者サイド、「それはないョ~~」

「こーすれば、まだ、まだじゃぁん!」

当の若者を差し置いて、周りがワイのワイのおさまらない。

これがインドか…往生際が悪い。

ついに若者本人、「never,give up」などと呟きながら、

駒を並べ直し始め、リセット。

手は敗北を認めた。

ジイさん、ニンマリ。

おや、まあ、僕にも親指たてて笑顔、

勝者の貫禄。

あたりも少し黄昏てきたのに、

また第2ラウンドをはじめるようです。

01/ 04 / 2001 in Delhi INDIAの頃の長々と・・失礼しました・・・

深夜特急ごっこ5_0009

2000年から2001年にかかけて”深夜特急ごっこ”と称してユーラシア大陸を旅した頃の”大沢君ごっこ”をした、カルカッタハウラー駅構内です。

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