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70年代のバイク乗りの週末・3

「 こんなはずじゃなかった…… 」 片岡義男かぶれ・79年のバイク乗り達

やはり防波堤の内側にすればよかっただろうか…

パーキングの中で大型に引っかけられない、明かりの下に行き

サイドスタンドを出す事ぐらいしか考えられなかった

軟らかな地面をもとめ、砂浜に薄っぺらいシュラフを広げて眠りについた

夜の潮風が冷たく感じても、湘南も夏にはかわりない

気持ち悪く汗ばんでしまったジーンズの不快感で目がさめてしまった

何時間たったのだろう

空はどんよりと明るいグレイにちかずいてはいる

メットの中にグローブといっしょにつこんだメガネをかけると

海の中に鯨のように黒いサーファー達が見える。

浜に起こした焚き木にあたる人たちもみえる

場違いな気がして、そそくさとシュラフをまるめて

バイクのところにいくと、まだ明けきらない青っぽい光りを受けて

FTのブルーが昨日の夜とちがってみえた。


メーター類にまとわりつく、夜露とも潮風ともつかないものをそのままにして

ぼくは走り出した。

目が痛い

ごろごろと痛い

あんなにいた大型は何処に消えてしまったのか、不思議なくらいだ。

冷たい、すっかりぬれてしまったジーンズが

早く夜があけて、夏のひざしがささないだろうか

前には黒く沈んだ山のラインと星。

ミラーのなかには、真っ白な空なのになぜか浮きあがってみえる月がみえる。

このまま、西湘バイパスに乗って箱根にいってみるか・…


とつぜん高回転の金属音がした

2サイクルだ

ブルーのラインの350

黒にゴールドのラインの250

ともにヤマハRZ…

ぼくがミラーの中で気がついて、少し左に寄ると

ほぼ同時に抜いていった。

つんとするオイルのにおいを残して…

今度はボルドールカラーのCB750だ

後ろについてワンテンポおいて、ぼくを観察している

右手をアクセルから放してだらんとしたら

すかさず追い越しをかけて、左手でクラッチを切った瞬間に

小さいVをつくって前方に黒いつなぎの背は、遠ざかっていった。


ぼくは、大磯で右へ曲がった



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