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学びの場づくり 対面VSオンライン!?

コロナ禍のなか、ほとんどの大学でオンラインがメインとなっているというニュースがある。対面授業が待ち望まれているという論で伝えられることが多いが、果たして対面にさえなればよいのか?

1.対面VSオンラインではない・・・

対面であることの良さは、「空気感」が伝わること。その場の熱気や共感だけでなく、冷めた視線や心ここにあらずも伝わる。人と人のちょっとした偶発性も引き起こせる。一方、オンラインであることの良さは、通信環境さえあれば、どこからでも参加できることや、一斉に多くの人に同じ教材を提供できる。時間を区切ることができる。・・・

今年、さまざまなオンラインでのコンテンツを経験してみて、実際のところ、オンラインであっても同じように「学び」の価値を提供できると感じている。対面でも、その方法・進め方によっては、価値を感じられないものにもなってしまう。だから、授業だけみれば「VS」の構図にはならないはず。

むしろ、大学という場は、授業以外の部分のもつ対面(人と人とのコミュニケーション)の意義がとてつもなく大きいと思うので、そこはオンラインでは越えられないものがあると思う。その点で、特に親元を離れて入学した新入生は大変だったろうと想像できる。

2.授業内容への関心

大学は、高校までとは違い、あくまでも「自主的に」「学ぶ」場なので、どんな手段で提供されても、各人がそれを自分で活かすことは大事。ただ、大学も少子化に伴って、サービス業の一面も持ち合わせるようになっていることを考えると、学生が学ぼうという気持ちになったり、学びを深めるきっかけを作ったりするための授業の場をつくることが求められていると思う。

しかし、先生方は基本的に研究者であり、教える内容をよりよく伝えることが専門ではないといわれる。だから、授業において工夫をしようという先生は限定的な場合も多いのではないか(個人的見解だが)。例年であればそうやって先生と学生の“相互理解”のうえに過ぎていたことが、今年のコロナ禍の状況下において、相当数の大学で、授業の内容に注目が集まったと思う。

対面であればなんとなく見過ごされ、学生にも許容されていたことと同じことをオンラインでやろうとすると、ただでさえコミュニケーションに不安を覚えている学生から圧倒的に不満が寄せられる。当然のことだが、対応しきれない先生方も多いのが現状なのだろう。そこから、対面を望む声が大きくなったと。

3.授業で提供できる価値

今年修了したWSD(青山学院大学社会情報学部ワークショップデザイナー育成プログラム)のオンライン授業は、目標を設定し、緻密に設計され、対面も組み合わせつつ、オンラインでできることを最大限に活かしていた。

リフレクションというテーマをもとに、オンラインでも人と人が想像以上に関われ、一人ひとりが内省できる。それでも、受講期間のなかで、人がリアルに出会える瞬間の高揚する気持ちをも共有できたことは代えがたいものだった。むしろ人への関心は高まったともいえる。

そのためには、人が出会うことの意義を共有しつつ、オンラインVS対面と考えるのではなく、年間のカリキュラムや時間のなかで提供できる価値そのものを考えるような授業設計が望まれていると思う。

4.大学のオンライン授業を見学して

そういう問題意識をもつなかで、たまたま人のつながりのご縁のなかで、京都にある2つの大学のオンライン授業に参加できた。そもそも外部の社会人を選定することなく、参加させていただけること自体が驚きだった。

一つは、同志社大学政策学部の授業で、教育と子育てというテーマの回に興味を持ち参加。複数学部から参加の学生さんは大学教室にいて、いわば対面の状況。外部参加者はオンラインでその発表を聞く。発表は、人口減少少子化社会に向けて高齢者と子供を教育の場で融合しようという提案。そのあと学生を交えてブレイクアウトルームで対話、という流れ。先生はファシリテーションをしながら、そっとアドバイスされている印象。素直で真面目な印象の学生さんたちと接し、オンラインの画面上でも緊張しつつお話されている若者たちとの楽しい時間だった。

もう一つは、京都工芸繊維大学の授業で、チームティーチングで、外部ボランティの方が授業運営をしつつ、私のような外部の授業見学者が学生さんの今後の発表計画に向けたお話を聴く。あくまでも聴くのが主体。最後に感想をお伝えするというスタンス。予備知識を持たないまま参加してしまったのと、オンライン独特の“間”や緊張も感じてしまったが、自分の考えをとっさに言語化するというのも、オンラインならではなのだろうと、自分自身への課題も見つけた。

前者は3回生、後者は1回生の学生さんたちだったが、オンライン授業の壁のようなものも受け止めたうえで、適応していると感じた。こうした社会人見学のような授業も、他ではあまりないものだと思う。選ばれて参加しているわけではないので、良い影響ばかりではないと思うが、そこも含めて授業としているのかな。

5.学びの場づくり

まだ、たった2つの授業だけに参加しただけなので、だからこうだ、とは言えないが、やはり「大学」そのものというより、大学のなかで授業をされる方々の意識や実践にかかっているんだろうな、と思った。

大学は、学生が自ら問いを立てて考える「学びの場」であり、これからは社会人にとっては「学び直しの場」になっていく。その場は大学に限らないが。その場づくりをどう考えていくのか。こういう時代になったからこそ、伝えるのための手段であるオンラインや対面の特徴を最大限に活かすことを考えられるかどうか。これからも、テーマとして考えてみたいと思う。

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