邂逅の神様

10年以上ぶりに、『jaaたけや』という芸人と一緒になった。しかも、二人とも昔お世話になっていた劇場で。

最後に会ったのはお互い20代。若手部門として立ち上がった新しいプロジェクトに所属していた当時は、誰もが一番最初にTVに出てゴールデンのスターになってやる!と若さ剥き出しだった。
今もそうでなくてはならないのかもしれないが、当時は野心だけが先立ち、『自分が本当に何をやりたいのか』という一番大事なものがすっぽ抜けていた気がする。それを証拠に僕は金髪におかっぱ頭で漫才をやっていた。『jaaたけや』も頭を一部金髪に染めていた。(彼はキャラクターに合っていたので僕とは違う理由だが)

当時、彼は仲間の中で唯一『エンタの神様』に出演が決まった。僕は劇場で会い、嫉妬心をギャグに込めて「てめー、エンタ出たからって調子に乗ってんじゃねーぞ!」と言うと、彼は僕を一瞥してどこかに行ってしまった。
今思い返しても当時僕は自ら無駄に誤解を招いてよく怒られていた。

今日、開演時間から少し遅れて入ってきたお客さんに入り口を教えていた僕。(昔出ていた劇場だが本来なら今ちゃんと所属している方に促すべきだったが誰もいなかったため我が物顔で案内させていただきました)

案内している僕に、真っ黒な短髪の男が挨拶してきた。まさかの『jaaたけや』だった。
咄嗟に「てめー、エンタ出て調子に乗ってんじゃねーぞ!」と言うと全てが水に流れたように彼は笑った。

10年越しの伏線の回収に成功した僕は、『インディーズのアンジャッシュ』を名乗ることにした。エンタにもよく出てたし。

♪気まずいことが駄目なんだ~

というjaaたけやのエンタ時代の歌はかなり奥深い。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?