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追い風が消えるという話が飛んできたので

阿部さんからとんでもないボールが飛んできまして。

よくわかりませんが振られた無茶振りは打ち返すのが礼儀だと思うので読んでみました。
元記事はこちら https://coralcap.co/2020/05/when-tailwinds-vanish/

以下、まとめられてる自信はありませんがざっとしたまとめと雑感です。

「追い風が消える」とは

90年代後半からネット利用は爆発的増加し、企業のSaaS利用が爆増、ネット関連のスタートアップも大量に台頭してきた。この流れが「追い風」であり、「消える」とはその鈍化、スローダウンを意味する。「追い風が消える」結果、ビジネスの競争環境や投資対象、金融の形などがどのように変わるか。ざっくり言うとそういう論(だと読んだ)。

英文和訳特有の言い回しでなかなか読みにくいところがあるけれど、詳しくは元記事にあたってもらうとして、ここから先は読んでいてポイントだと思った記述を順に取り上げて私見を交えてみる。

「追い風が消える」理由

背景はインターネット利用の成熟・飽和。
人の数も時間も無限ではないので利用率が上がり、利用時間が増えていけば当然どこかで飽和する。ひとりがこれ以上多くの時間をネットに割いたり、これまで利用してこなかった層が大量にネットを使い始める、といったことが起こりにくい程度には普及した、ということ。

ゼロサムゲームの加速

新規市場開拓から「奪い合い」に移行する。
「追い風」の吹いているうちは、規模の経済を活かしたブリッツスケーリング(極めて短期間に圧倒的シェアを獲得する手法)が有効であったが、人材獲得競争の激化、不動産高騰、顧客獲得コストの増加を理由にこれは過去のものとなりつつある。
日本だとYahoo!BBのADSLがモデム配ったりしたのを思い出す。短期間で大規模なシェアを取ってしまえば勝ちというゲーム。
ネット利用が飽和してくると、「未開拓市場で短期間にシェアを取りに行く」よりも「既存企業と顧客の奪い合い」が主戦場になる、という話かな。
ペンと紙のアナログ市場をデジタルに置き換えていく、という戦いも、デジタル企業どうしの争いに形を変えてゆく。

研究開発から販管費へ

「追い風が吹いて」いるインターネットの成長期は研究開発に投資するのが鉄則だった。ところがネットが成熟・飽和してくると顧客獲得コストが増加、競争も激化してくる。そうすると研究開発から販管費へ投資対象が変わってゆく。ここでいう販管費は営業や販促も含めたマーケティングコストなどがイメージしやすい。そういうシステムや人材に投資しなければならなくなる。

「追い風が吹いていた」ときはSaaS利用などによってスタートアップの設備投資コストは限界まで下がり、ひとりでもそれなりの環境を整えて起業できるようになった。ところが「風が消える」と販管費の上昇が設備投資コストの低下を相殺するようになる。
より少ない投資で大きなリターン、というスタイルから「大きなリターンを得るには大きな販管費」というスタイルへ移行するように。

販管費は管理しやすい

販管費への投資はROI(投資対効果)が把握しやすくなる。あるスタッフがどの程度の売上を作り出しているか、どのマーケティングツールがどの程度の顧客獲得につながっているか、数値化ができるようになる。研究開発投資よりも管理しやすい。
これらを「仕組み化」するニーズが出てくるので、そういうサービスが生まれるはず。

新たな金融サービス

ROI(投資対効果)が予測可能になると、新たな金融サービスが登場するはず。
テクノロジーと金融サービスを理解したフィンテック企業などが有望。
「将来の経常収益の証券化」が起こる、というのはけっこうありそうな話。
VCの役割も変わってくるよね、とかいろいろ書いてあったけどこのへんは割愛。

クロスファンクショナル

これまで圧倒的成功をおさめてきた起業家はSTEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics=科学、技術、工学、数学)を学んでいることが重要だったが、「追い風が消える」環境ではこれに経済学、統計学などが加わるかもしれない。
研究開発から販管費への移行は、純粋なエンジニアリングの価値を相対的に低下させ、マーケティングなどと組み合わせた複合的(=クロスファンクショナル)なスキルが求められる。

これからの成長企業

インターネット利用が進んでいない業界(法律、建設、農業、採鉱業etc)には、これらにテクノロジーを活用した成長企業が出てくる可能性がある。
しかし爆発的成長をする企業が純粋なインターネット企業である可能性は低い。

それで、どうなるのか

シリコンバレーの話をメインに書かれているので、日本の地方都市で暮らしている我々の肌感覚とはちょっと違うところもある。「追い風が消える」として、上記のような変化が(日本を含め)どこまで起こるかはわからない。コロナショックを織り込むとさらによくわからなくなる(元の英文記事は2020年4月に書かれている)が、「これまでの我々の生活にインターネットが登場してきた」道筋の延長線上に未来があるわけでは無さそうだ、という感覚はある。
1000億ドル規模の企業を目指すので無いとしても、あらゆる場面でクロスファンクショナルの価値は高くなるんじゃないかな、と思う。これまでのインターネットは、「これまでの自分に関係ない」情報を遮断することに極めて便利に作用してきた。これは見方によってはクロスファンクショナル化を阻害する。ネットファースト企業同士の「奪い合い」に市場環境が変化するとして、その中で戦う土俵を変えられるのは特定のテクノロジーではなく目の前の景色に異なる意味を見出すクロスファンクショナルな価値観なのではないか(テックが不要と言いたいわけではない、念のため)。


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