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石原稔久 器の景色@無垢里

彫刻とうつわに境界線を引いて作っていない、そう語る石原稔久(いしはらとしひさ)さんの個展が代官山の無垢里で開かれています。
石原さんのうつわは手びねりが基本。第一印象は拙く見えるかもしれません。しかしその実は、飽きのこない味わい尽きない魅力を秘めています。

お店の方も「見かけによらず使いやすいんですよ」といいます。ご本人は「15年やってきた中で、どれくらいの形や深さなら、どう料理が入るかが分かっているから、その感覚が自然と入り込んでいるのだと思う」といいます。なので使い勝手は間違いありません。

それでも、テクスチャや形を見て、自分のライフスタイルに合わないとかんがえる人もいることでしょう。しかし、石原さんのうつわを実際見たらなぜか迷ってしまうと思います。
自分の使い方に合わなさそうでもどこかひかれる、なぜか他の作り手のうつわとは違った魅力を感じる。そんな風に気になってしまうのです。

「回り道の途上にしかない手応えのある収穫」。これがその魅力のキーワードになるかもしれません。

たとえば今回も出ているリム皿は、轆轤で挽けば短い時間で作ることができる形ですが、石原さんのは土の塊からくり貫いて作っていきます。何倍も手間のかかる作り方です。しかしそうすることで出る味があり、また、そうした手間をかけて作る方向性の先に石原さんが追い求めるものがあるのです。

釉薬を筆で塗る、その技法によるムラの味わいも間違いなくあるのですが、その筆で塗るというのもやはり時間がかかる方法で、それを惜しまずに進まねばならない道を石原さんは選択しています。石原さんが歩むその作品作りの道から得られるもの、それを使い手はうつわを通して感じることができるのだと思います。

動物を主とした土のオブジェを作ることでも知られる石原さんですが、ある意味、動物オブジェの方がはるかに分かりやすく伝わるかもしれません。
うつわの魅力は実際に手にしないと分かりません。いえ、手にするだけではダメかもしれません。厄介なことに石原さんのうつわの魅力の大半は、使ってみないと分からない気がします。

会期は4月1日の17時まで。
今回の無垢里では1点を除き作品の全てがうつわです。冬の間楽しくてうつわを作り続けていたということで、いつもの個展よりもうつわの数自体多いことでしょう。

この機会を逃さず石原さんのうつわを手に入れてみることをおすすめします。家で使ってみることで次々に魅力の扉を見つけることがきっとできるはずです。

この黒いお皿は、今回の個展が楽しいものになると石原さんに思わせてくれた、DMにも使われた作品です。初の試みとなったうつわです。石原さんご自身にお話をお聞きできましたが、もし惜しくも在廊されてない時に行かれたら、ぜひ手にとってじっくり観察してみてください。

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