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大谷工作室陶展 ぼくもろくろの廻るまま@gallery uchiumi

稀に見る数の大谷工作室さんのうつわは、うつわ好きの胸を高鳴らせるくらい良いものが揃っていました。

顔を持ったユルい形のオブジェで知られる大谷工作室さんが、麻布のギャラリーuchiumiでうつわを中心にした個展を開かれています。会期は3月29日までです。

今回DMがうつわの写真となっているのですが、大谷工作室さんの個展では異例。企画名からしてもうつわが揃うのだと思っていましたが、やはりオブジェの印象があったので、うつわも毛色の変わったものだろうと思い出かけてみました。

予想は半分当たっていました。ギャラリーの中に、uchiumiとしては今まで見たことがないくらいの数のうつわが並んでいました。もちろんオブジェもここかしこにあります。

外れていたのは、うつわが意外にも真面目な形をしていたことでした。焼締の小壺などは特に轆轤挽きの正確さが表れています。バリエーションも予想以上にありました。土器のような質感のオブジェが印象的な大谷工作室さんが、これだけいろいろ試され作ったものを見て、この人は本当に陶芸家なのだなと感じました。

真面目な形、といっても、手にとって見ればそこには大谷工作室さんらしさがやはり感じられます。口縁の高さが一定でなかったり、高台脇に削り残しと思われるようなところがあったり。
スリップウェアで使われるような墨流し技法で描かれた文様も、滲んで垂れています。

それがまたいいのです。同じようにしても他の人だとわざとらしさが感じられそうですが、大谷工作室さんの作ったものは、それが大変な魅力となっているので不思議なものです。

ご自身もうつわが好きで、使うだけでなくじっと眺めることもあるそうです。そうやって一人のうつわ好きとして味わったものが、確実にうつわ作りの栄養になっているのだと思います。

大壺の次に大作の、この片口大鉢は本当にかっこいいです。すり鉢のように櫛目がありますが、それと灰が一体となった素晴らしい景色を作っています。

オーソドックスな形や色の焼物のうつわ。一見だけではそう見えかねない大谷工作室さんのうつわですが、実際手に取り、そして自分の家で使うと、尽きない味わいをじわじわ出してくれます。

これだけの数のうつわを作ったのは数年ぶりとのこと。次はいつこれだけ見れるか分かりません。今回の貴重な機会にぜひ見に行って手に取ってみてください。



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