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合志真由子 陶展@RUEVENT

目白のRuevent(ルヴァン)で11月3日から14日まで合志真由子(ごうしまゆこ)さんの個展が開かれています。

今回はギャラリーの空間に似合う、大きくもなく小さくもなくというサイズのラインナップで、使う場面の多そうな食器が揃いました。
合志さんの作品の中でも、ありきたりな言葉でいえば、オシャレな雰囲気でそろえられていると感じました。

その志向はこのDMの写真にも出ているかもしれません。雰囲気の良いこの写真は合志さん本人が撮られたとのことです。

DM写真の組み合わせは会場でも見れました。他にもセットとしては、浅鉢と組み合わせたものもありました。

今展の特徴をもう1点挙げると、コーヒーのある食卓に合ううつわが多かったことです。
その一番の象徴がドリッパー。

今年5月に鎌倉で個展を開かれた合志さん。そこで一緒に立たれたコーヒー豆屋ぐりこーひーさんの影響でドリッパーを作られたようです。
ぐりこーひーさんは、ペーパーフィルターだとKono式ので淹れられるそうで、今回のRueventではポットやカップにのせられるKono式ドリッパーが大小のサイズ出されていました。

Kono式では円錐形のペーパーフィルターを使うので、一般的な底のあるペーパーだと入れづらいとこもありますが、逆にいうとあまり他ではないドリッパーの形。コーヒーが好きな人は一見の価値ありです。
陶胎なので冷めにくく、温度を保って淹れることができるのもガラスのドリッパーと違います。

他にはないという点では、この耳のついたボウルもそうでしょう。
この形と質感、そして控えめながら魅力をぐっと引き出している白い線文。
耳の反り具合を見ても、シンプルでありながら趣の深さを出せる合志さんのセンスが表れています。

合志さんの作品は、マスキングの手法を使った模様が入る装飾と黄釉のような色合が特徴的で、今回もそれらが多くを占めていますが、その中に2つ異なる種類の作品もありました。
1つは、白い土に風化を感じるような茶色が入る花器です。

この質感は母校である武蔵野美術大学の卒業製作から始められた、合志さんが長く手がけているものです。
ざらっとしてるので食器に使うには抵抗がある、と花器のようなうつわにしか使ってないそうですが、合志さんの轆轤スキルが発揮された造形の妙を際立たせるテクスチャだと思います。

もう1つ違った質感のは、また違った方向性で、金属的だったりガラス的だったりする釉薬使いのものです。

こちらは比較的最近始められたものです。まだコントロールしきれてないと本人は言っていましたが、これはこれでダイナミックな力強さもあって好いと思いました。
あと何回か作ればコツが掴めそうとのことで、その時はまた合志さんのセンスがどう現れるか楽しみです。

現時点では、この黄色と黒と線の色模様が合志さんを代表するものであり、合志さんらしさが詰まった焼物だと思います。
個人的にはこの手のうつわを買うことはそうないのですが、なぜか合志さんのだけはいくつもある理由を今回の展覧会でようやく知った気がします。そこには合志さんが最終的に選び取ったものへの共感が含まれます。

選び取ったものが現れるまでの合志さんの作品作りの過程は、狂わない土できっちりと作った形、手間をかけて入れるグラフィカルな模様、そういったある意味計算し尽くしたプロセスですが、そこに自分の思わない偶然が現れる隙間をあえて入れ、そして最後に自分の手をすっかり放して焼成をおこないます。
たとえば、上の線の模様にしても、マスキングで同じ長さ・等間隔で入れるよう作業してても、流れが生じる釉を掛けるせいもあり、焼いた後には均整が崩れてしまいます。

それは画像で見ると、ちょっと失敗のように見えるかもしれません。実際失敗することもよくあると思います。
しかしその「ゆらぎ」がうまく調和すれば、合志さんの作品を1段上に引き上げてくれるのでしょう。
その人為的でない魅力、焼物がもつ本質的な魅力、それを作り手が最終的に選ぶからこそ出来上がる作品たちであり、合志さんのセンスでないと生まれないものなのだと思います。

合志真由子展は11月14日(土)まで開かれています。画像では伝わりそうでいて伝わりにくいデザインとゆらぎの妙を手に取って見てみてください。
ルヴァンでは、ダンボールで生物の形を表した玉田多紀さんの個展も同時開催されています。

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