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装飾電車と花電車【東京のりもの散歩~いちょうマークの車窓から5】

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<都電クリスマス号の車内(2017年)>
2017年12月8日(金)~12月25日(月)にかけて運行された、冬の風物詩「都電クリスマス号」。都電荒川線 9002号の車内・外にクリスマス装飾が施され、大勢の人の目を楽しませた。
※天皇陛下(明仁さま)は2019年4月30日に退位され、皇太子徳仁親王が5月1日に新天皇に即位されました。文中の「皇太子殿下(現在の天皇陛下)」は「上皇陛下(明仁さま)」についての記述ですので、ご承知願います。

 『思い出ガタゴト 東京都電diary』を読んだ。2016年に東京都交通局が都営交通105周年を迎えたことを記念し、都電にまつわるエピソードを一般から募集したものをまとめた本である。
 子供の頃に自宅近くの電停から家族一同よそゆきの服装でデパートに出かけた思い出を熱く語る人、都電の頭上を上野動物園のモノレールが交差する瞬間を興奮気味に振り返る人、ツーマン運行だった時代の車掌との人間味あふれる交流に思いをはせる人……。最盛期には40を超える系統を有していた都電が人々の生活にどれほど根付き、愛されていたかが、当時を知らない筆者にも手に取るように伝わってくるような良書だった。中でも花電車に関するエピソードが多いのが興味深かった。
 花電車とは、大きな祭事の際などに、車体に装飾をほどこして運行をする特別電車のことで、原則として乗客を乗せずに運行する「見て楽しむ」電車である。都電では、1959年の「皇太子殿下(現在の天皇陛下)御成婚奉祝記念花電車」など、戦後に6回運行されている。近年では、2011年に都営交通100周年記念として33年ぶりの花電車が運行されたことが記憶に新しい。11年の花電車は筆者も見物に行ったが、バースデーケーキを模したような独創性の高いきらびやかな装飾は夜になると一段と見栄えがし、沿線の歓迎ムードとともに、今でも鮮明な記憶として残っている。
 花電車は文字通り華やかな電車である。とはいえ運行自体が珍しい上、原則として乗車することができない。しかしながら都電では、花電車とは別に、車内外に装飾をほどこし、ヘッドマークをつけた装飾電車を毎年期間限定で運行している。
 17年だけでも、「都電さくら号」「都電バラ号」「都電納涼号」「都電ハロウィン号」「都電クリスマス号」が運行された。それぞれの電車は季節感あふれる装飾で彩られ、しかもこちらには乗車することができるのだ。時代は便利になり、今や都電運行情報サービスのサイトから、携帯電話やパソコンで該当車両の現在地を調べることもできる。昨年「都電クリスマス号」に乗車した。天井には都電のマスコットキャラクター「とあらん」のイラストが描かれ、色とりどりのミラーボールのような装飾や電球が吊るされており、手すりもカラフルになっていた。
 見て楽しむ花電車。乗って楽しむ装飾電車。いずれにせよ、次回の運行が楽しみである。

都政新報(2018年1月12日号) 都政新報社の許可を得て転載
【参考資料】
東京都電diary -思い出ガタゴト-(東京都交通局/編・東京新聞)