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ありがとう7000形【東京のりもの散歩~いちょうマークの車窓から3】

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<東京最後の吊り掛け駆動車 都電7000形>
6月11日に開催された「2017路面電車の日記念『ありがとう7000形イベント』」の一コマ。一番左に見えるバスは、旧三田電車営業所所属の7075号車を模した都バスのラッピング車両(南千住営業所のL652号車)。都電の7000形は左から7022号車(青帯復刻デザイン)、7002号車(更新車標準色)、7001号車(赤帯復刻デザイン)。なお、イラストでのバス車両の配置はイベントでの実際の配置とは異なる。

 6月11日、荒川電車営業所にて、2017路面電車の日記念「ありがとう7000形イベント」が開催された。路面電車の日とは、路(6・ろ)面電(10・テン)車のゴロ合わせから制定された記念日で、毎年この時期になると全国の自治体や路面電車事業者などによる各種イベントが盛大に行われている。
 7000形が最初に登場したのは1954年。当時は車掌も乗務するツーマン運転であった。合計100両近くが製造されたが、都電の路線網縮小により廃車が進み、唯一残った拠点である荒川電車営業所に集約されたのは31両であった。その後77年から78年にかけ、ワンマン化に向けての大規模な車体更新を行ない、製造時には丸みを帯びていた旧7000形は直線的な外見となり、乗降時の段差も解消された。そして荒川電車営業所で活躍していた31両のうち、最後の1両である7022号車が、イベント前日の6月10日をもって営業運転から退いた。
 7000形は吊り掛け駆動の車両であった。吊り掛け駆動とは、一言で言えば、旧世代の駆動方式である。加速時にはうなるような「ブーン」という音が車内に響き、重厚な物体が動いているという実感を覚えたものだ。今や吊り掛け駆動よりも走行音が静かで乗り心地の優れたカルダン駆動にとって代わられ、全国的にも少数派の存在となった吊り掛け駆動。7000形は、実は都内を走る最後の吊り掛け駆動の電車だったのである。
 6月11日には7022号車の他、先に引退した7001号車と7002号車が車庫に並び、事前の抽選で選ばれた来場者を対象に撮影会が催された。遠巻きながら、撮影会の区域外からも、長い年月を走り続けた3両(うち2両は復刻塗装)の雄姿を拝むことができた。さらに、かつて都電の1系統(品川駅前~上野駅前)を運行していた三田電車営業所所属の車両を模した都バスのラッピング車両も展示され、一時代の終焉に華を添えた。
 都電荒川線では、昨年からクラシックモダン調の7700形が運行を開始している。これは7000形の車体や空調機器を活用した上で大規模な改修工事を行った再生車両である。駆動形式はカルダン駆動に代わったが、引退した7000形の面影を残した最新車両がこれからも運行を続けるのは興味深い流れである。まさに「ありがとう7000形」といったところだろうか。

都政新報(2017年8月15日号) 都政新報社の許可を得て転載
【参考資料】
・都営交通100周年 都電写真集 都電(東京都交通局 2011年7月14日発売)
・鉄道ファン 2017年4月号(交友社) 都電7000形 64年