「国民民主党の政策はわかりにくい」問題を考える

先日、玉木代表が記者会見で、「政策がわかりにくいと言われる」「わかりやすい国民民主党を目指す」といった趣旨を発言されました。

はい。

ただ…政策がわかりにくいのは、どの政党もだいたい同じだと思うんですよね。

私、各党の政策集をチェックしてみました。どの政党の政策集も、難しい専門用語、「これ予備知識ないとサッパリわからんよね」という難解なお話、いっぱいあります。

どの政党も、政策は同じくらいわかりにくいんです。

では、どの政党も同じように「政策がわかりにくい」と言われているのか?
これも調べました。おそらくNOです。国民民主党はやたらと「政策がわかりにくい」と評判です。

どの政党も同じくらい「政策は難しい」のに、国民民主党だけやたらと「わかりにくい」という声が多い。

確かに、たとえば公式サイトの政策ページを見れば、レイアウトや表現など、わかりやすく改善できる余地はいくつも見つかります。しかし問題の本質はそこなのか?

「わかりやすいキャッチコピーがあるか?」という観点から見ても、『給料を上げる』『国を守る』は、めちゃくちゃわかりやすいキャッチですよね。

街頭演説やYoutubeでの発信を確認しても、他党さんに比べて難しい話をしてるわけじゃない。確かに一般には馴染みのないテーマの話もあるけど、それはどの政党、どの政治家でもだいたい同じです。山本太郎さんだって街頭でけっこう難しい話してる。

もちろん、皆さんに「国民民主党の政策のどこが分かりにくいですか?」と聞けば、「難しい用語ばかりだから」「文字ばかりだから」とか、色々具体的に挙がってくると思います。でもそれは、他の政党でも同じなんですね。

にもかかわらず、調べてみると明らかに、しかも長期にわたって、「国民民主党の政策はわかりにくい、難しい」という評判は確かにある

なんなら個人的には、維新さんの政策もよっぽど難しいと思っているのだけど、調べてみると、「維新の政策はわかりにくい」という評判は…意外なことに…無くはないけど、それほどでもないのです。

保守かリベラルかハッキリしないから?
たぶん維新さんもそれは同じなんですよね。

国民民主党は他党より政策が注目されている?
いや、政権与党である自民・公明さんのほうが、よっぽど世間的には注目されているはず。

「玉木さんの話はわかりやすい」という評判も

なんなら、「国民民主党の政策はわかりにくい」と同じぐらい「玉木さんの話はわかりやすい」という評判もある。

不思議ですよね、これ。
ここで言う「玉木さんの話」の内容って、讃岐うどんの話じゃないですよ。政策の話です。

玉木さんの政策の話はわかりやすい。
国民民主党の政策はわかりにくい。

確かにこの2つの評判があるのです。

普通に考えれば、両者のクラスタが異なるから…となると思うんですが、僕の観測範囲内だと、たとえば同じ国民民主党支持層かつエンジョイ勢の中からも、「玉木さんの政策の話はわかりやすい。国民民主党の政策はわかりにくい。」が出てくるわけです。

調べれば調べるほど謎なんですよ。

仮説1:情報発信のTPOのミスマッチ

ひとつ仮説として言えるのは、『情報発信のTPOのミスマッチ』です。

わかりやすい解説が期待される場面で、わかりやすい解説を期待している人に、厳密な(=難しい)発信をしてしまっていないか?

たとえば公式サイトもそうですが、他党さんを見てみると、ページコンテンツは本当にキャッチコピー+平易な解説ひとことぐらいで、難しい用語を使った厳密な政策案内はPDFで別途開く形になってたりする。国民民主党の公式サイトの場合、政策のページコンテンツ自体が…あれでも削ぎ落してるんでしょうけれど…馴染みのない言葉で文字がミッチリ。

パっと見てなんとなく政策の毛色を知りたいとか、そういった情報需要に応える、『入りやすい入口』をもっと充実させることは、一つの処方箋にはなるのかな…と思っています。

仮説2:政策以外の判断材料を提供できていない

個人的には、これも結構あり得る仮説だと思っているのですが。

他党さんも政策は難しいんです。政治家の皆さんも難しい話をしている。
けれども、その”政策が難しい”ということが、特に問題にならないんですよ。たぶん。

「政策の話は難しいからワカンナイけど、それでも~~だから私は〇〇党を応援するよ!」

みたいな感じで、政策以外の判断材料で支持・不支持を判断できるし、それで納得できる。だから、「政策、難しいなあ、よくわかんないなあ。でもまあいいか」で済ませられる。

一方、国民民主党の場合、「政策以外の判断材料があまり提供できていないのではないか」という仮説を立てると、その良し悪しはともかく、まあ説明はつくんですね。

仮説3:「今何をやっているのか」がわからない

たとえば、自民党の政策集を見たことがなくても、ある程度チェックしていれば、「岸田さん外交がんばってるよね」とか、「改憲に燃えてるらしいけど大丈夫かな?」とか、そういった雰囲気は何となく伝わってきます。

同じように、「立憲さんは裏金問題の追及がんばってるよね」とか、「維新さんは万博がんばってるよね」とか、「れいわさんは消費税減税ずっと訴えてるよね」とか…その政党の政策をチェックしてなくても、何をやっているのか、何をやりたい人達なのかは、なんとなく伝わってくるわけです。

で、じゃあ国民民主党は、それがちゃんと今、伝わっているのか?ということです。

賃上げ?改憲?氷河期世代の支援策?いやいやトリガーは諦めたの?
一歩離れたところからパっと眺めた時、「この人たちは何をやりたい人達なのか」が、いまいちボヤっとしてしまうのかもしれません。

そのボヤっと感を指して、「政策がわかりにくい」という話になっている可能性もあると思います。

<追記> 2022参院選の時のコレは良い感じだったと思います。

https://election2022.new-kokumin.jp/downloads/

これ常設施策でやりませんか。「氷河期対策」とか「ヤングケアラー」とか「ケアマネ更新研修」とか「アクティブサイバー防衛」とか色々加えて…あとセキュリティクリアランスと…中小企業支援と…非正規の賃上げと…政策増えたなあ…。

仮説4:ナラティブの不在

ナラティブ、つまり「大きな物語」です。

自民さんなら「憲法改正・自主憲法制定」という悲願がある。
立憲さんは…ごめん、ちょっと把握してない…。
維新さんは、「規制改革」を旗印に、より自由度の高く活発な社会というヴィジョンがあるように見えています。
共産党さんは明確で、「何百年かかろうが共産主義社会を目指す」という感じかなと。

こういう「大きな物語」ですよね。

こういった話をすると、「そんな綺麗事のスローガンは聞き飽きた!」「こんなもん政策じゃない!」「キラキラした言葉だけのマニフェストで結局なにも実現できなかった、あの悪夢の民主党政権を忘れたのか!」というご意見が飛んでくるとに想像できるのですが。でも、その”悪夢の民主党政権”を倒したのって、「日本を取り戻す!」というスローガンを掲げて戦った人たちですよね。

「世界の中心で燦然と輝く日本」
「今日より明日はもっと良くなると信じられる社会」

こういったフレーズに代表されるような、”キラキラした大きな物語”って、やっぱり実は必要なんじゃないかと僕は思っているのです。

そういった意味では、玉木さんの言う「国家の3つの役割」は、ある種、今の国民民主党の”ナラティブ”の土台になるかもしれないと思っています。

まとめ:”政策がわかりにくい”問題、実は難しい

さて、つらつらと書いてきましたが。
要するに今回僕が言いたいのは、

”政策がわかりにくい”問題の解法は、”政策をわかりやすく発信する”ことだけではない可能性がある

ということなんです。
「もっと政策をわかりやすく話してくれ」と言われた時、その人が本当に求めているのは、「わかりやすい政策解説」ではない可能性がある。

そもそも…残念ながら有名な話ですが、だいたい誰も政策なんてマトモに見てないわけです。見てないものに対して「わからない」ということは、普通ないんですね。「知らない」「興味が無い」ならともかく。

なので、『国民民主党は意外と政策を見られている』か、『本当にわからないのは政策ではなく別の何かである』か、もしくはその両方です。

そういった観点から、4つの仮説を一旦整理してみました。

・情報発信のTPOのミスマッチ
・政策以外の判断材料を提供できていない
・「今何をやっているのか」がわからない
・ナラティブの不在

これで可能性の洗い出しができたとは全然思っていないのですが、ともかく一旦、歯切れは悪いですがこの辺にしておきます。