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【0デリ企画】起業の”いろは”を学ぶゼミナール 2024/6/14

2024/6/14 (金) 六限

 この度は工田明美さんをお呼びして、起業家のマインドセットを学ぶゼミナールを開きました。さらに5名の生徒が30秒のエレベーターピッチを実演し、工田さんのフィードバックをいただきました。

 工田さんはシリコンバレーを拠点とする戦略コンサルティング会社 USAsia Venture Partners の創設者兼CEOで、エンジェル投資家としてもご活躍されています。さらにスタンフォード大学では起業の講師をされており、今回ご帰国のタイミングで、Diligentにいらしてくださいました!



シリコンバレー直伝です

自己紹介とキャリアの歩み

 工田さんは10歳の時に見た世界地図がきっかけで、広い世界を見てみたいという夢を抱いたそうです。日本という島がこんなに小さくて、中国もロシアもアメリカも大きな大陸なので、そのことに非常にショックを受けたと言います。自分で世界を見て、新しい文化を体験して、新しい人たちに出会いたいと、この頃から熱望していらしたそうです。

 高校卒業後、アメリカへ移住し、航空会社に勤めながら世界中を旅行。その強い意志と行動力には驚かされます。その後は外資系大手企業や日系ハイテク企業に勤められました。これらの経験から得た知識やネットワークが、後の起業に大きく役立ったと仰っていました。

コンサルタント会社の設立

 工田さんは、データサイエンティストのパートナーとともに航空運賃の機械学習を利用したスタートアップを開始。平日は仕事をしながら、土日にご友人らと集まって取り組んでいらしたそうです。その後、日本とアメリカのビジネス文化に対して感じていたギャップを解消するため、現在の戦略的コンサルタント会社 USAsia Venture Partners を設立されました。実際に日系企業に勤めていた時の経験が、このとき役に立ったそうです。

スタンフォード大学での経験

 スタンフォード大学のエグゼクティブ・プログラムに参加したことが、工田さんのキャリアに大きな影響を与えました。経営に求められるコンセプチャルな思考が鍛えられる、知識ではなく徹底的に思考力が求められるプログラム内容だったそうです。このプログラムにはシャネルやアストラゼネカのCIOなど、世界のトップレベルのビジネスリーダーも参加しており、彼ら彼女たちからのダイレクトに学べる素晴らしい機会でした。クラスメイトとの交流は大きな刺激となり、現在でもそのネットワークが活きていると工田さんは言います。

 授業には例えばこんなものがありました。自転車をバラバラの部品に分解されたものもらって、それを5人グループで組み立てる。そして自分たちでこういう自転車を作りましたとプレゼンをする。エンジニアの方はマニュアル通りに一からやろうとするし、一方でビジネスバックグラウンドの方はコンセプチュアルに「こんなのかっこいいんじゃない」などと言って、さまざまに議論を交わしながら課題に取り組んで行ったそうです。


皆さん真剣です

ボランティア活動

 工田さんは15年間にわたってボランティア活動を続けられており、ボランティアの重要性を強調されてました。経済シリコンバレー(Keizai Silicon Valley)というNPOでの活動や日本商工会議所でのボードメンバーとしての経験は、ネットワークを広げるという意味でも貴重な経験となったそうです。

 アメリカでは小中学校からボランティアが当たり前であり、有名大学に入るにしても勉強のみならず、ボランティア経験があることが必須です。「東大生の皆さんも、お勉強が忙しいとは思いますが、それだけでなくボランティアも経験してほしい」と工田さんは繰り返し仰っていました。

起業家精神の重要性

 起業家精神の重要性について、工田さんは次のように述べています。まず、経済や技術の急速な変化に対応するためには、柔軟性とイノベーションが不可欠です。特に日本では、起業家教育がまだ十分に普及していないため、これからの若者にとって起業家精神を持つことがキャリア形成において重要です。
 
 また、起業家精神は新しいビジネスモデルの創出や社会問題の解決に貢献します。特に高齢化社会が進む日本においては、「新しい解決策」が求められています。個人の成長や能力開発にも繋がり、リスクを取る精神が重要です。

 起業家として成功するには、能力やスキルだけでなく、正しいマインドセットが重要だと言います。まず、チャレンジ精神を持ち、失敗を恐れずに新しいビジネスチャンスに挑戦することが必要です。自分のビジョンを信じ、情熱を注げる分野で事業活動を展開することが大切です。例えば、宇宙ビジネスに興味があるなら、その分野でスタートアップを起業するか、関連会社に就職することが良いでしょう。パッション(情熱)があれば、何度失敗しても続けられるので、持続性が生まれます。

 次に重要なのは、好奇心と創造性を持ち続け、新しい知識や情報を追求することです。異なる視点やアプローチを模索し、新しい価値を創出することが求められます。例えば、週末に新しいレシピを試すことや、今まで行ったことのない場所にハイキングに行くことなど、日頃から新しい経験を積むことが大切です。そういう小さなチャレンジなら失敗しても怖くないので、新しい挑戦をすることに慣れてゆけます。

 リスクを受け入れる覚悟も必要です。失敗を恐れて行動しないのではなく、失敗を学びの機会として捉え、計画的にリスクを取ることが重要です。迅速に行動し、失敗から学び、次のステップに進むことで、成功への道が開けます。

 チームビルディングも重要です。例えばサッカーでも、自分の活躍よりチーム全体にとって良いプレーを重視し、周りを活かすことが必要です。パーフェクトな人間はいないので、自分一人で全部やろうというのは無理です。良いチームを組むためにビジネスネットワークを広げ、人とのつながりを大切にしましょう。お互いの不足を補うチームを作ることが成功の鍵です。

 持続的な努力と柔軟性も重要です。失敗を恐れず、挑戦を続けることで、スタートアップを成長させることができます。スピード感を持ち、迅速に決断し、行動することが求められます。シリコンバレーは、圧倒的にスピード感が早くて、日本のように何か検討させてくださいといって一週間待ってもらうことはできないそうです。

 また、ロールモデルを見つけることも助けになります。年齢の近い先輩など、身近で相談しやすい人をロールモデルにすることで、自分のキャリアデザインを具体的に描きやすくなります。有名人をロールモデルにしてもなかなか直接アドバイスを貰うことはできないので、身近な人が良いそうです。工田さんの場合は、お母様をロールモデルにされていました。

 最後に、挑戦することを恐れず、年齢に関係なく新しいことに挑戦しましょう。今は若くて早すぎるとか、もう年を取りすぎたということはありません。人生はやりたいと思った時こそが一番良いチャンスです。小さなことから始めて、失敗しても大きな打撃を受けない小さなプロジェクトから始め、成功体験を積んでいってください、とのことでした。


インタラクティブな場でした

エレベーターピッチ

 工田さんのお話の後、5名の生徒が30秒のエレベーターピッチを実演し、工田さんのフィードバックをいただきました。中には他の生徒のピッチを見て面白そうだなと思い、急遽アドリブで考えたピッチを実演した生徒もいました。内容はそれぞれ以下のようになりました。

  • 生理で辛い女性がホルモンを測定して自身の体調を把握する商品

  • ど田舎の地元の中学生向けに東大生がオンラインで教える塾

  • インバウンド観光客を対象に、日本の公共交通機関を案内する事業

  • 光を通す太陽光パネルを用いた施設農業

  • モダナイズした東洋の伝統衣装を正装として売り出す事業

工田さんからは次のようなアドバイスをいただきました。

  • 問題提起:まず現状の課題や問題点を明確にする。

  • 解決策:自分のプロダクトやサービスがどのようにその問題を解決するかを説明する。

  • 市場規模:ターゲット市場の大きさや成長性も示す。

  • 競合分析:競合他社との差別化ポイントを明示する。

  • ビジネスモデル:収益化の方法や具体的なビジネスモデルを説明する。

  • ストーリー性:印象に残るエピソードや背景を取り入れることで、聞き手に共感を与える。


ピッチは盛り上がりました

終わりに

 今回はシリコンバレーで活躍する工田さんならではの、貴重なお話をお聞きできる機会となりました。とりわけボランティアやエグゼクティブ・プログラムで出会った方々とのネットワークが今に活きているとのお話は、繰り返し強調されており印象に深く刻まれています。さらに生徒参加型のエレベーターピッチを実演してフィードバックをいただくことができ、とてもよい刺激となりました。工田さん、お忙しい中来てくださり、ありがとうございました!

先生からのリクエストで東大のTポーズ!


 東京大学Diligentは、東大生のキャリアの視野を広げる機会をさまざまな形で提供しています。ご興味を持っていただけた方は、ぜひ以下のホームページもご覧になってみてください!

文責:石田統瑚

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