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ドイツ歌曲の楽しみ Freude am Lied㊺

生のコンサートでは“今まさにここで生まれる音楽”を共有していただける喜びがあります。その時間を1曲1曲切り取って“今まさに”のひとかけらでもお届けできたら!とお送りするドイツ歌曲の楽しみ Freude am Lied…

45曲目もR.シュトラウス♬…ひとかけら、届くかな?

リヒャルト・シュトラウス(1864-1949)作曲
子守歌Wiegenlied Op.41-1

                 ソプラノ 川田亜希子 ピアノ 松井 理恵

夢を見なさい、夢を、私の可愛い命よ
花をもたらす天の夢を
花は輝き、揺れている
あなたのお母さんの歌をききながら

夢を見なさい、夢を、私の心配のつぼみよ
花が咲き出でたあの日のことを
明るい花咲くあの朝のことを
お前の小さな魂が、この世に現れた日の夢を

夢を見なさい、夢を、私の愛の花よ
静かで、聖なるあの夜の夢を
お父さんの愛が
この世を天国にしてくれたあの夜のことを


 リヒャルト・デーメルRichard Dehmel(1863-1920)の詩による。

 愛しい我が子を前にして、その行く末を案じることを許された幸せに酔いしれる母の歌です。ピアノパートの細かい細かいアルペジオは幸せ成分の粒子…。宙に舞ってどこまでも甘く響いています。歌声部はR.シュトラウス特有の言葉の引き延ばしがふんだんに使われ、溢れる感情を表しています。第1節では天国的な母の幸せが歌われ、第2節では我が子の未来を案じ短調に転じます。が、その甘さは揺らぐことなく響きます。なぜならば、それは… なんということでしょう、第3節で明らかになる甘さの根源、それはまさに愛の結晶が生まれたその瞬間にあるからです!我が子への愛情と並行して歌われているのは、愛の営みの幸せだったのですね。どうりで甘いわけです♡ 1番から3番まで歌い出しのメロディは同じなのですが、途中で拍子が変わったり転調したりと、これ以上ないくらいの豊かな変容が印象的な、素晴らしい変化有節歌曲となっています。

✻リヒャルト・シュトラウスRicherd Strauss(1864–1949 )✻✻✻✻✻✻✻✻✻
ドイツの後期ロマン派を代表する作曲家。ミュンヘン宮廷楽団のホルン奏者を父に持つ彼は4歳から音楽教育を受け、6歳で既に作曲を始めていた。早くから才能を発揮し、20歳を過ぎる頃には名指揮者として名を知られる存在となって、本格的な管弦楽曲やオペラの作曲も手掛けるようになる。作曲活動は『ドン・ファン』や『英雄の生涯』などの交響詩は初期から中期に、『サロメ』『ばらの騎士』などのオペラは中期から後期にかけて行われているが、200曲を超える歌曲は、少年だったころの習作的作品から80歳をこえて作曲された最晩年の『四つの最後の歌』にいたるまで、生涯を通して作られており、歌曲は彼にとって重要なジャンルであったことがうかがえる。23歳で知り合って30歳で結婚した妻パウリーネがソプラノ歌手だったことも彼の歌曲創作への意欲を高めた大きな要因ともいえる。




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