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ドイツ歌曲の楽しみ Freude am Lied➁

生のコンサートでは“今まさにここで生まれる音楽”を共有していただける喜びがあります。その時間を1曲1曲切り取って“今まさに”のひとかけらでもお届けできたら!とお送りするドイツ歌曲の楽しみ Freude am Lied…

前回に引き続き2曲目もメンデルスゾーン♪ …ひとかけら、届くかな?

メンデルスゾーン Mendelssohn:恋する乙女の手紙 Die Liebende schreibtソプラノ 川田亜希子 ピアノ 松井 理恵 

私の目に映るあなたの目の眼差し、 
私の唇に重ねられたあなたの唇からの口づけ、
私のように それを知ってしまった者には
他のどんなものが嬉しいと思えるのでしょう?

あなたから離れ、家族からも疎まれて、
私の思いはいつも堂々めぐりをしています。
いつもその思いはあの時に行き着くのです、ただ一つのあの時に。
そうして私は泣き始めてしまうのです。

涙はまたいつの間にか乾きます。
私は思うのです、あの人はこの静寂の中、愛を通わせている、
この思いがあの遠方に届かないわけはない、と。

この愛の息吹のささやきを聞いてください。
地上での私の唯一の幸福はあなたの心、 あなたの優しい心なのです。
どうぞ、 その印をお与えください!

ドイツの文豪ゲーテが58歳の時に23歳のミンナ・ヘルツリープという女性に思いを寄せて書いた詩。ソネットという厳格な詩形 (4・4・3・3という14行詩) で綴られており、この自由でない詩形と抑制されたゲーテの心情が相まって、独特の緊張感を生み出しています。メンデルスゾーンは朗誦的なメロディを用いることでこの詩形に対応しています。また、その中に言葉の引き延ばしを効果的に差し込み、乙女の切なる願いを見事に表現しています。メンデルスゾーンの歌曲の傑作中の傑作です。


…便箋にペンを走らす女性の姿がありありと浮かんでくるような出だし。行が進むにつれ高まる気持ち…。それを抑えようと筆跡を整えるように内省的になるメロディ…。そして返事を懇願して結ぶ愛の便り…。

“う~ん、たまらないっ!”という気持ち、どんな時に感じますか?
例えばドイツ歌曲(リート)を聴いてそんな気持ちになってみるのはいかがでしょうか?



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