昆虫園女子的インプロヴィゼーション 【エッセイ】
E谷は、私が住む海辺の街の北に位置する小さな谷である。小さいとは言え奥が深く、山腹もなかなかに急峻だ。谷の東側の斜面には、内陸の市町村に向かって北上する急カーブの道がくねくねと続き、車の転落は稀としても、昔から事故の多い道路として知られている。
かつて、このE谷の入り口に小さな昆虫園があった。友人のKと一緒にこの昆虫園に行ったのは三十年以上前のことだ。今となっては記憶も朧げだが、かなり古びた木造平屋の建物だったと記憶している。私の街に遊びに来たKに、こんな所にひなびた昆