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エッセイ・散文・その他

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2023年9月の記事一覧

ツリーアドベンチャーと、その他若干のこと。【エッセイ】

 鬱蒼とした森の続く山中に小さな谷があり、谷底には小川が流れている。小川の周りの広葉樹や杉の木は、地上八メートルの高さで吊り橋などによって繋がれている。吊り橋の床板は、簡単には渡って行けないよう飛び飛びになっていて、手すりのロープもユルユルで頼りない。樹と樹の間を繋ぐのは、他にも丸太が一本だけだったり、ブランコみたいな物が十幾つ連なっていたり、いろいろだ。要するに樹上のアスレチックコースを想像すればいい。挑戦者は胴体にハーネスを装着し、ヘルメットを被って、コースに沿って張られ

クラシック小爆発!【エッセイ】

 一九九〇年代のと或る冬の日、大阪市淀川区西中島の横断歩道を渡った所で、別れ際にクミさんが言った。 「今度アシュケナージを聴きに行くんですよ」 「え? あしゅ‥‥? 何ですかそれ」  聞き返す私。 「ピアニストですよ」  ウラディーミル・アシュケナージは、二十世紀後半を代表するピアニストの一人である。指揮者としても著名な彼は、来日も頻回に渡っており、クラシック愛好家でなくてもその名を知っている人は多い。それほど有名なアシュケナージを、私は知らなかったわけだ。  クミさんと