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日々に遅れて

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詩・散文詩の倉庫03
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2023年5月の記事一覧

笑いの亀

ずいぶん久し振りに 笑いのツボにハマった レンタルの古いコメディ映画 『 裸の銃を持つ男 』だ レスリー・ニールセンぐっじょぶ! 笑いのツボは温泉スパにあったのを ダイハツの軽トラに乗せて持ち帰っていた 身体がすっぽり入るツボ風呂だ いや 間違えた これは壺風呂じゃなくて  甕風呂だった 私は笑いのカメにハマったのだ お尻からザッブンと漬かると あひゃひゃいひゃひゃうひゃらららんザッパーン 笑いが四方八方へ溢れ出た 何処からか笑いの亀が這い出て来て えひゃらお

或る日の光景

日曜日のショッピングモール お洒落な私服姿の女子高生が二人 通路のソファチェアでお喋りしている その向かいのソファチェアでは 髭ボサボサに野球帽のおっさんが のけ反り姿勢で大鼾を掻いている 街でよく見掛けるあの人だ 相当な年齢 臭うようなボロを着て いつも手押し車を押して歩いている 積み荷は汚れたナベヤカンその他ガラクタ 書店コーナーへ向かいながら 今見た光景を思い出す 女子高生の一人がスマホカメラを構えて おっさんのソファチェアにそっと歩み寄り 大口を開けた寝

初夏を聴くーラップフィルム

 初夏を聴く。初夏を聴け。そんな言葉を呟きながら、初夏の風が吹くイチョウ並木の道を自転車で走る。ショッピングモールの裏手に差し掛かった時、商品搬入口の半開きのシャッターが、風に打たれてガタッと音を立てた。チラと目を遣った瞬間、白い大型犬がシャッターの上方から飛び降りて来たように見えた。そいつは段ボール箱を積んだキャリーカートの上でフワッと宙返りすると、風に押し戻されて空中で一時静止し、その後ゆっくりと地上に舞い降りて来た時には優雅な女人の立ち姿にも見えた、と思ったら風に折り畳

初夏

JR駅に行く途中 歩道に並ぶヤマモモの樹から 喋り声が聴こえて来た 葉陰を覗いてみても誰もいない 代わりに鈴なりの実を見つけた 表面にぶつぶつがあった 郵便局からの帰り道 ケヤキの下を通り過ぎる時 笑い声が聴こえて来た 見上げてみても誰もいない 青空に向かって分かれた太い枝 葉っぱがぎざぎざしていた モスバーガーへの道すがら 初夏のイチョウの群葉は こんなに鮮やかな緑色だったのか 葉陰で小さな者たちが作業している いったい君たちは何者なの? 近付いたらサッと引っ込んだ

忘傘記

信号待ちの車の中で 傘が無いことに気が付いた 何処に忘れたんだろう 昼食のラーメン店では 入り口のすぐ傍に車を停めて 傘を差さずにさっと入った 本屋に着いた時は雨は止んでいた コーヒーショップの駐車場でも 傘は使っていない 首を傾げながら 青信号でアクセルを踏む 失くしたと思ったら現れる 紺色系チェック柄の長傘 あいつは以前から風来坊だった 私に似ているような気がして 愛着も湧いてくる 帰宅すると 玄関の傘立てに 傘はしれっと収まっていた 「お先でし

洗濯の詩

洗濯の詩を 書いてみたいものだ よく晴れた日の青空と 清々しい風を感じる 女性が書いた 洗濯の詩を 幾つか読んだことがある あなた達の生活の 喜びと 楽しみと  夢と 憧れを 悲しみと 失望と 倦怠と 寂しさを しぼって パンパン叩いて 洗濯バサミで吊るして 風に晒せば みんな 何処へ 飛んで行くんだろう 白いシャツに 陽光が染み込んで 洗濯の詩 私にも書けるだろうか もちろん書ける 独居男性は もう長いこと 自分で洗濯しているから そうそう たまには 外干ししてみるか