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清宮幸太郎36年ぶりのミラクルとBIGBOSSの気遣い         ――140字では収まりそうにないプロ野球

■ 36年ぶりのミラクル

 2022年7月26日。マイナビオールスターゲーム2022第1戦が、PayPayドームで行われた。
 今年は、直前になって新型コ口ナウィルス陽性判定者や故障者が相次ぎ、セ・パ両軍合わせて12人もの出場辞退者を出すという、異例の球宴となってしまった。辞退者の中には、巨人の坂本勇人をはじめファン投票選出者が6人も含まれていたため、こんな状況ならもはや中止でもいいのでは、という声さえ聞かれたくらいである。
 今年は、3年ぶりに観客の入場制限が解除され、フルパックのスタジアムで開催される久々のオールスターゲームだというのに、その点でもなんとも皮肉な限りである。

 そんな「主役不在」のオールスターゲームは、しかしながら、「代役」が躍動した好ゲームとなった。

全セ 110 000 000  2
全パ 010 001 001x   3

 セ・リーグが初回から、ヤクルト・塩見泰隆、阪神・近本光司というリーグ屈指のリードオフマンが連打に盗塁を絡め、横浜・牧秀悟の犠牲フライで先制。
 2回には、中日・ダヤン・ビシエドが、パ・リーグ防御率2位のオリックス・山岡泰輔から逆方向への弾丸ライナーの一発で追加点。
 パ・リーグも、そのウラにすかさず、パ・リーグの4番、埼玉西武・山川穂高が、打った瞬間それとわかる豪快な一発で1点差に詰め寄る。
 さらにパ・リーグは、6回ウラに二死満塁のチャンスから、オリックス・宗佑磨のタイムリーヒットで同点に追いついた。

 こうして試合は2-2のタイスコアのまま、9回ウラ、2死ランナーなし。延長戦がないため、あとは引き分け目前という場面で、北海道日本ハム・清宮幸太郎が、広島・森下暢仁から左中間テラス席の最前列へ劇的なサヨナラホームランを叩き込んだのだ。

 オールスターゲームでのサヨナラホームランは、1986年の巨人・吉村禎章が放って以来36年ぶりの快挙であり、パ・リーグでのサヨナラ弾となれば、1974年の阪急・高井保弘以来48年ぶり2人目ということになる。

■ 清宮幸太郎のポテンシャル

 乾いた音を残し、普段ではあまり見られないやや低い弾道の放物線がテラス席に飛び込んだのを見た時、地元のファイターズ贔屓である筆者は、当然の如く歓喜に震えたが、嬉しそうにダイヤモンドを一周する清宮を見ながらこうも思っていた。
良くも悪くも、清宮幸太郎だよなぁw

 ここまでの清宮幸太郎の成績は以下のとおりである。
82試合 打席277 打数243 安打55 本塁打11 打点24 打率 .226 OPS .772

 51試合を残す前半終了時点で、安打数、本塁打数はすでにキャリアハイを記録しており、打席数もここまでの最多が2019年の278なので、こちらも更新は時間の問題だ。
 打率の低さは気になるが、その割にはOPSが高く、総じてまあまあ良くやっている方なのかな……という風に見えなくもないギリギリのスタッツである。

 でも、清宮幸太郎という選手に対して肌感覚として物足りなさを感じているファンは決して少なくはないだろう。そして、その不満は、彼にかかる期待の大きさゆえの反動、という理由だけでは決してないのが、次の記録で見えてくる。

得点圏における成績 71打数 12安打 打率 .169 本塁打0 

 そう、清宮幸太郎はあまりにもチャンスに弱すぎるのだ。
 ホームラン数はチームトップの11本だが、そのホームランは総てソロホームランである。
 それでいて、皮肉なことに、彼にはよくチャンスが回ってくる。得点圏での打席数は実に82打席。この数字はチームトップの野村佑希の83打席とほぼ同数だ。清宮の打席数は277なのだから、「得点圏打席率」は実に 29.6%。
ざっくり言えば3回に1回程度は清宮にチャンスが回ってくる計算だ。もう、どちらかというと、チャンスの方が勝手に清宮を追っかけてくると言っても過言ではない気がする( ̄∀ ̄)。

 では、なぜに清宮幸太郎はチャンスで打てないのか?というのが気になるところではある。
 この理由については、記録面からだけでは完全な説明は難しい。ただ、清宮幸太郎はもとより、ファイターズを移転元年から見続けている一野球ファンが、どシロート目線で言わせてもらえるなら
 まだまだ修羅場の勝負では勝負にならないような未熟なレベルだから
僭越ながらそういう風に見えてしまうからだ。

 当たり前の話だが、清宮におけるチャンスは、相手バッテリーにとってはピンチであり、ランナーなしやランナー1塁といったケースと比べたら警戒度も高くなり攻め方も変わってくる。この、より厳しい配球での勝負では、清宮幸太郎はまだまだ未熟者なのだ。

 その傍証となるかどうかはわからないが、すでにキャリアハイとなる11本のソロホームランは、うち9本が清宮の好きなコース――
高さでいえば真ん中からむしろ低め、コースでいえば真ん中からややアウトコース――
甘いトコなのだ。ちょっと上手く打てたかなぁ、と思えるのは
5月5日の対埼玉西武ライオンズ戦で岸孝之から打った2本目のインコース
7月7日の千葉ロッテマリーンズ戦で佐藤奨真から打ったインハイのカーブ
このくらいだ。
 さらに言えば、11本のホームランのうち、打者不利なカウントから打ったホームランはわずかに1本 で、残る10本中9本は打者有利なカウントから甘く入ったストレート系の球を気持ちよくスイングしたホームランである。

 ちょっと酷な言い方をすると、ここまでの清宮のホームランは、相手投手の失投やストライクを取りに来た甘い球を打っているに過ぎない。
 勿論、そのことを否定する気は毛頭ない。というのも、失投を逃さずに打つことも好打者の絶対条件なのだから。
 ただ、打者のチャンス (=投手のピンチ) では、そういう失投が来るチャンスは相当低くなるはずなのだから、チャンスボールしか打てない清宮が結果を出せないというのは、半ば当然の帰結ともいえる。

 かといって、清宮幸太郎が箸にも棒にもかからないダメダメなバッターなのかというと、それは断じて否、だ。

 「森下さんがずっと真っすぐ投げていただいたので、しっかりそれにフルスイングで応えることができた

 そう清宮自身がヒーローインタビューで語っているとおり、100%の真っすぐを100%のスイングで打ったにせよ、打ったコースは真ん中であっても低めギリギリの154km/hである。それほど簡単に長打になるコースではないし、まして逆方向のホームランになるようなボールではない。フラットに見れば失投どころかナイスボールの類だ。
 そのナイスボールをホームランにできるのだから、清宮幸太郎の打者としてのポテンシャルは決して低くはないということでもある。

 ちなみに、清宮幸太郎の今年の特徴の一つとして挙げられるのが、フルカウントの多さである。
 277打席中、フルカウントまでいった打席数は63。実に全打席の22.7%にも及ぶ。
 これは、相手チームのバッテリーが、清宮幸太郎の潜在的な長打力を警戒している、と見ることもできる。
(まぁ、それでいてそのフルカウント時の打率が49打数4安打 打率 082というのは、さすがに寂しすぎるが( ̄∀ ̄))

 今はまだ、チャンスに弱く頼りない長距離砲かもしれないが、ファイターズファンは、どうかもうちょっとだけ長い目で、この未完の大器が本当に覚醒するところを待ってみてほしい。

■ BIGBOSSの気遣い

 そもそも、清宮幸太郎の快挙については、昨日のつぶやきで触れたところなのだが、その140字では触れることができなかった大事な部分があるので、急遽この記事を書こうとしているところでもある。

 監督推薦で伊藤大海が、プラスワンで清宮幸太郎がオールスターゲームに出場することが決定したことについて、BIGBOSSが次のような激励を与えたことを明かした。

 「MVP取ったら300万だっけ? あれ、分かんない。オレも2回しか取ったことないから(笑い)。それを裏方さんにね、ちょっとプレゼントしてあげてほしいってことは伝えた。(賞金を)全部じゃないですよ、気持ちで

 これに対して、
清宮は「それは、すごいいいことですね。すごい裏方さんにはお世話になっているので、ぜひやりたいです
伊藤は「もちろん何か出来れば。僕と幸太郎でいい活躍を出来るように頑張ります
と答えていた。

 BIGBOSSは、普段の言動や行動がとかく突飛かつチャラチャラしているように見える上に、本業の采配の方でも、それまでの野球の「常識」からはかけ離れたことを頻繁に実行するので、スキキライのはっきり分かれる人物である。ていうか、やることなすこと気に食わないというBIGBOSSアンチも、一定数以上は確実にいるだろう。

 ただ、人間・新庄剛志について、彼のことを悪く言う球界人はまずいないと聞く。それは、彼が「どんな場面でも人のことを決して悪く言わない」からであり、ちゃらんぽらんなようで実は礼儀正しかったり、上記のような発言のように、裏方さんのような普段陽の当たらないスタッフにもナチュラルに気を配れる人間性があるからなのだと思う。

 BIGBOSS采配が気に食わなくて仕方ない、というアンチの方も、せめてこういう部分くらいは、素直に評価してほしいな、そう思うばかりである。

 第1戦で (中島監督の言葉を借りればw)まさかのサヨナラホームランを放ち、見事MVPを獲得した清宮幸太郎。
 さてさて、普段お世話になっている裏方さんにどんなプレゼントをあげるのだろうか♪(⌒~⌒)♪


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