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ちゃんと出来た?

「ちゃんと出来た?」

今までに何回、いや何万回、口にしただろう。

「今日、さんすうのテストがあった〜」
「あら。ちゃんと出来たん?」
「うん!」

「ちゃんと出来た?」は子どもとの会話において相槌のようなもの。もちろん「ちゃんと」出来たかどうか、結果の問題ではない。会話を続ける接続詞のようなものだ。

これは息子が大学生になり、一人暮らしを始めた今でもよく使う。

「バイトの面接があった」
「ちゃんと出来たん?」

「サークルのライブでソロやった」
「ちゃんと出来たん?」

「ゼミの打ち上げで飲みに行った」
「ちゃんと出来たん?」
「は?」

背が低く、フォルムがまあるい息子(いわゆるシュッとしていない&イケてない)は、20年間カノジョなしの人生を歩んできた。そしてそれはおそらく結婚するまで続くだろうと勝手に思い込んでいた。彼の父親がそうだったように。

『高校・大学時代にカノジョができなくても、真面目に生きていれば、母さんのような優しく美しい人と結婚できる。(ホンマすんません)』

これはモテない息子と私の共通の認識だと、これまた勝手に思い込んでいた。


人生、何が起きるかわからないもので、そんな息子に初カノジョが出来た。

「公には言えないけど、付き合っている」
「公にはって何?」
「同じサークルの幹部同士だから、非公開という意味」
「知らんがな」
「ほんで昨日、泊まりに来たわ」
「ふうん。ちゃんと出来・・・」

決して口にしてはいけない一言をぐぐぐぐっ〜と飲み込んだ母であった。

(終わり)

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