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ドーナツホールの標的

【タイトル】
「ドーナツホールの標的」
殺し屋シリーズ・2部6話

【キャスト総数】
3(男:1 女:2)

【上演時間】
20〜分

【あらすじ】
豊富なバリエーション、長年愛され続ける味、
丁寧な接客、安心感と安らぎを基調とした店内。

大都会に甘い一時を。
ドーナツ「パルフェ」。

――殺し屋さえも愛する味。

ドーナツの穴から覗く標的に銃口は向けられる。

【登場人物】
・ホープ(女)
業界では「エクスマキナ」の名で知られる殺し屋。
銃やナイフの扱いに長ける。

・レオ(男)
マフィア「ベルトリオファミリー」初代頭目の一人息子。
現在は組から離れている。

ブルズアイ(女)
3人組(チーム)で仕事を行う殺し屋。
奔放で色男に目がない。

【本編】
 「不運(アンラック)」の襲撃から数日後。
 銀の計らいにより、目立たない拠点で身を隠しているレオとホープたち。
 ある日、耳にした一報に激しく憤るレオの声が部屋に響く。

レオ:ちくしょうッ!

 レオの拳が壁を打つ。
 その姿を冷静に見つめているホープ。

レオ:あいつ……やりやがったな……!
レオ:アッシュの野郎……絶対に許さねぇ。
レオ:必ず殺してやる!
ホープ:落ち着きなさい。
ホープ:怒りは判断を鈍らせるだけよ。

 ホープを睨むレオ。

レオ:うるさい!
レオ:誰もがお前みたいに……機械のように冷静でいられると思うなよ、「エクスマキナ」!
ホープ:……。

 そっと視線を外すホープ。
 頭を抱え顔を伏せるレオ。

レオ:マルコ……すまない。
レオ:仇は必ず取ってやるからな。
レオ:必ずだ……。

 悔しさに唇を噛みしめるレオ。
 何も言わず、ホープは静かに部屋を出ていく。

ホープ:(「ベルトリオ」ファミリーの幹部、マルコという男が殺された。)
ホープ:(鋭利な刃物で頭を割られる残虐な手口。)
ホープ:(銀(イン)の掴んでくる情報に間違いはない。)

 廊下を歩いていくホープ。

ホープ:(「兄のような存在だった」と彼は言う。)
ホープ:(血は繋がっていなくても、彼にとっては紛れもなく家族だったのだろう。)
ホープ:(それを引き裂かれるのは身を切られるように辛いこと。)
ホープ:(今のあなたにはそれがわからないの?)
ホープ:(ねぇ……リグレット。)

 立ち止まり、窓から遠くを見る。

 ――翌朝。
 やつれた表情でリビングに顔を出すレオ。
 先に座っていたホープが顔を上げる。

レオ:……起きてたのか。
ホープ:ええ。

 ホープの向かいに座るレオ。
 やがて、静かに口を開く。

レオ:……悪かったな、昨日は。
ホープ:別に気にしてない。
レオ:そう、か。

 つかの間の沈黙。
 ホープがレオの顔を見る。

ホープ:ひどい顔ね。
ホープ:寝てないの?
レオ:……眠れないさ。
レオ:目を閉じても余計なことばかり考えちまう。
ホープ:無理もないけど、いざという時に倒れられても困るわ。
ホープ:「不運(アンラック)」が都合よく待ってくれるとは思えない。
レオ:ああ……わかってる。
レオ:だが、簡単に割り切れるものでもないんだよ。
ホープ:……割り切れとは言わない。
レオ:えっ……。
ホープ:ただ、自分は狙われてる立場だということを忘れないで。
ホープ:その上で最低限の自衛をしてくれればいい。
ホープ:あとは私が守る。

 強い瞳でレオを見るホープ。

ホープ:次は負けないから。

 真っ直ぐな瞳に見入りそうになるのを慌てて逸らすレオ。

レオ:と、ところで……マネージャーと「魔弾の射手」はどうした?
レオ:先日から姿が見えないが……。
ホープ:今回のシノギに関連して会っておきたい人がいるそうよ。
ホープ:クルムは護衛で付いていってる。
レオ:誰だ?
ホープ:さぁ。「ラスボス」とか言ってたけど。
レオ:何だそれは……悠長だな。
レオ:こうしている間にも奴らは勢力を伸ばしているのに。
ホープ:だからこそよ。
ホープ:こちらは少数。全員相手にするわけにもいかないでしょう。
ホープ:綻(ほころ)びを探して入り込むしかない。
ホープ:その為に動いているはずよ、銀(イン)は。

 ため息をつくレオ。

レオ:全く、ぐうの音も出ないよ。
レオ:お前の言ってることは正しい。
レオ:それはわかってる。
ホープ:……。
レオ:だが……その正しさで自分を納得させられる程できた人間じゃないんでな、俺は。

 物憂げに目が伏せられる。
 レオの様子を一瞥し、ホープが口を開く。

ホープ:……あなた、昼食は摂った?

 突然の問いかけに面食らうレオ。

レオ:はっ? いや……摂ってない。
ホープ:じゃあ、少し付き合ってくれない?

 立ち上がり、歩き出すホープ。

レオ:お、おい……どこへ行く気だ。
レオ:ちょっと待て!

 レオが慌ててそれを追っていく。

レオ:(突然出ていったかと思えば会話もなく進んでいく。)
レオ:(相変わらずよくわからない女だ……。)
レオ:(しばらく歩くと、何かの店が見えてきた。)

 パステルカラーが基調のこじんまりとした外観の店。
 「パルフェ」という表記が見える。
 釈然としない表情で席についているレオ。
 やがて、向かいに座るホープに対し口を開く。

レオ:……オイ。
ホープ:何?
レオ:どういうことだ、これは。
ホープ:昼食、まだだったんでしょう。
レオ:いやそういうことじゃなくて……。
レオ:どこなんだ、ここは。

 遠慮がちに周りを見渡すレオ。

レオ:俺の目が正しければドーナツ屋に見えるんだが……。
ホープ:「パルフェ」。味は保証する。
レオ:そういうことでもなくてだな……。
レオ:ああもういい。
レオ:こんな所、来るんだなお前……。
ホープ:疲れた頭には糖分が要る。
ホープ:美味しいものならなお良し。
ホープ:そう思うのだけど。
レオ:……もしかして気を遣っているのか?
ホープ:……家族を失う痛みがわからないわけじゃないから。

 予想外の返答にやや困惑し、苦笑するレオ。

レオ:それで殺し屋とマフィアがドーナツ屋か……ははッ、笑えるな。
ホープ:その前に一人の人間でしょう。
レオ:機械仕掛けの言葉とは思えないな。
ホープ:心まで機械になったつもりはない。
レオ:……そうだな。悪かった。
ホープ:私を何と呼ぼうが勝手よ。
ホープ:だけど私は他の誰でもない。
ホープ:人間で殺し屋。
ホープ:生きる為に自分の意志で殺すだけ。
ホープ:その気持ちに嘘はつかない。

 迷いのないホープの瞳がレオを見据える。

レオ:……。
ホープ:食べないの?
レオ:あっ……ああ。

 ドーナツに手を伸ばすレオ。
 もくもくとドーナツを食べるホープをうかがう。

レオ:(こいつはちゃんと自分の意志で仕事を全うしている。)
レオ:(思ったよりずっと人間らしい。)
レオ:(俺はどうだ……?)
レオ:(ファミリーの為とは言うが、何ができる?)
レオ:(取り戻したとしても……あいつらを守れるのか?)
レオ:(こいつのような強さも、親父のような統率力も俺にはない。)
レオ:(何ができるんだ、俺には……。)

 うつむくレオにホープが声をかける。

ホープ:また悩んでる。
レオ:っ!
ホープ:失礼だと思わない?
レオ:な、何のことだ?
ホープ:ドーナツに。
ホープ:こんな美味しいのに上の空なんて。

 小さく笑うレオ。

レオ:……よほど好きなんだな。
ホープ:ええ。
ホープ:銀(イン)の分を買ってくるから、ちゃんと向き合いなさい。
レオ:……ドーナツの話だよな?
ホープ:そう。自分と向き合うのはその後にして。

 席を立つホープ。
 苦笑し、ドーナルを口にするレオ。

レオ:……美味いな。

 陳列された商品を選ぶホープ。
 となりにはメニューに悩む一人の女性客。

ブルズアイ:……ん~……。
ホープ:……。
ブルズアイ:これ……っかなぁ。
ブルズアイ:いや、こっち?
ブルズアイ:あぁもう、聞いとけばよかったぁ。
ホープ:……。

 となりのホープに気づき、話しかける女性客。

ブルズアイ:ねぇねぇ、ちょっといーい?
ホープ:……何?
ブルズアイ:友だちにおつかい頼まれてるんだけど、どれがいいか全然わかんなくてさぁ。
ブルズアイ:あなたのおすすめでいいから教えてくれない?
ホープ:本人に聞いた方が確実だと思うけど。
ブルズアイ:電話出ないのよぉ!
ブルズアイ:多分ゲームかな……。
ブルズアイ:ね、お願い。あなた見る目ありそうだし。

 手を合わせて懇願する女性客をまじまじと見た後、商品棚の方へ視線を移す。

ホープ:……これと、これね。この2つは誰におすすめしても喜ばれる。
ホープ:あと期間限定のメニューは外れがないから押さえておいた方がいい。
ブルズアイ:わぁ、ありがとー! 助かるわぁ。
ブルズアイ:これと……これね、ふふ。

 嬉しそうに商品を選んでいく女性客。
 その様子を一瞥するホープ。

ホープ:あなたは食べないの?
ブルズアイ:うーん、糖質高そうだし……。
ホープ:そこ、ギルトフリーの商品が並んでるわ。
ブルズアイ:マジィ? 詳しいわねぇ。
ブルズアイ:じゃ、せっかくだし食べよっと。
ホープ:用が済んだのならこれで。

 背を向けるホープ。

ブルズアイ:あっ、待って待って。
ブルズアイ:お礼にお姉さんがおごってあげるわよ。
ブルズアイ:一緒に食べよぉ。
ホープ:いや、別に大丈夫。
ブルズアイ:仲良くしましょうよぉ。
ブルズアイ:こんなところで同業に会うなんて何かの縁じゃない?

 ゆっくりと視線を合わせるホープ。

ホープ:……そうかもしれないわね。
ホープ:身分を明かすつもりはなかったけど。
ブルズアイ:だよね〜ごめんごめん。あなたさっき話した友だちとちょっと雰囲気似てるし、気になっちゃって。
ブルズアイ:あ、でもぉ、おすすめ聞きたかったのはホントだからね?
ホープ:……わかった。連れがいるけどいい?
ブルズアイ:ぜーんぜん! ほら、どれがいい?
ブルズアイ:遠慮しなくていいわよぉ。
ホープ:じゃあ、この5つとパーティセット、ドリンク付きで。
ホープ:コーヒーはミルクだけ。
ブルズアイ:めっちゃ買うじゃぁん!

 ――数分後。
 釈然としない表情で席についているレオ。

レオ:……オイ。
ブルズアイ:あら! 連れって男の子だったのぉ?
ブルズアイ:わぁごめーん、お邪魔虫だった?
ホープ:気にしないで。
ホープ:それで、あなた……。
レオ:ちょ、ちょっと待て!
ホープ:……何?
レオ:勝手に話を進めるな。
レオ:お前、その女は……。
ブルズアイ:ハァイ、可愛い坊やねぇ。
レオ:な、何でこんなところに……。
レオ:いや、その前になぜ当然のように相席を……?
ブルズアイ:あら、私のことご存じ?
レオ:当たり前だ。有名人だぞ……。
レオ:殺し屋・ブルズアイ。

 名を聞いたホープの顔色が変わる。

ホープ:ブルズアイ……?
ブルズアイ:せいかぁい。
ブルズアイ:私のこと知ってるなんて、坊やもその筋の子?
レオ:あ、いや……。
ブルズアイ:まぁまぁそんな警戒しないで。ほら、食べようよぉ。
ホープ:……。
レオ:だから何で知らないんだお前は……!
レオ:業界でもトップクラスのプレイヤーだろ……。

 ドーナツを口にするブルズアイ。

ブルズアイ:あっ、おいしーこれ!
ブルズアイ:マジでギルトフリーなのぉ?
ブルズアイ:ムカデちゃんが推すだけはあるわねぇ。
ホープ:ブルズアイ……ムカデ、センチピード。
レオ:おい、聞いてるのか……。

 顔を上げ、ブルズアイを真っ直ぐに見るホープ。

ホープ:あ、あの。
ブルズアイ:んー?
ホープ:シ……シャーク……さんの、相棒……?
ブルズアイ:そうよぉ。
ブルズアイ:チームだもん、私ら。

 明らかに動揺の見られるホープ。

レオ:ど、どうしたんだ、お前。
ホープ:げ、元気にしてる?
ホープ:変わりはない?

 薄く笑みを浮かべ、ホープを眺めるブルズアイ。

ブルズアイ:ワケありみたいねぇ。

 ふと、視線が店の窓に外される。

ブルズアイ:その前に私の質問に答えてもらっていーい?
ホープ:何?
ブルズアイ:外に張ってる連中はお知り合い?
レオ:な、何だと!?
ブルズアイ:あんまり顔に出さない方がいいわよぉ、坊や。
ブルズアイ:あなたが一番見られてる。
ブルズアイ:ほら、自然に。スマイルスマイル。
レオ:馬鹿な……つけられていたのか? いつから……?
ホープ:落ち着きなさい。多分、賞金稼ぎよ。
レオ:賞金稼ぎ?
ホープ:あなたの首。
ホープ:今回はルール度外視で動いてる連中も多いって聞いてるから。
ホープ:それにしても気配の消し方が杜撰(ずさん)だし、殺し屋としては程度が低い。
ブルズアイ:あはは、確かにィ。随分とお粗末ねぇ。
ブルズアイ:ずっとソワソワして可愛い。
レオ:でも、どうする気なんだこれから……。
ホープ:……。
ブルズアイ:おびき出して殺(や)ればいいんじゃない?
ホープ:同感ね。
ブルズアイ:ね、手伝ってあげようか。
ブルズアイ:ドーナツ選んでくれたお礼も兼ねて。
ホープ:……いいの?
ブルズアイ:うん。シャークちゃんのことも聞きたいんでしょ?
レオ:だが、おびき出すと言っても……どうやって?
ブルズアイ:簡単よぉ。餌に食いつくところを狙えばいいだけ。
レオ:……餌……?

 ――数分後。
 路地を歩いていくレオ。
 だんだんと人気がなくなっていく。

レオ:……なるほど、俺が餌ね。
レオ:妥当ではあるが……何だかな。

 物陰に潜み、様子をうかがうホープとブルズアイ。

ブルズアイ:んー、5・6人ってとこかなぁ。
ホープ:そうね。用心深さだけは板についてる。
ホープ:なかなか尻尾がつかめない。
ブルズアイ:急に消えた私らのこと警戒してるんじゃない?
ブルズアイ:ま、大体の位置は掴んだし後は根比べねぇ。
ブルズアイ:あなたは対面側の蟻ちゃんをお願いしていーい?
ホープ:了解。

 立ち上がったホープにブルズアイが声をかける。

ブルズアイ:あっ、ねぇねぇ、お名前は何ていうの?
ホープ:……ホープ。
ブルズアイ:ふふ、よろしくねぇ、ホープちゃん。

 銃を取り出したブルズアイが立ち上がり、標的の動きを観察する。
 その口元は薄い笑みがうかがえる。

ホープ:(飄々(ひょうひょう)としているけれど動きに一切の無駄がない。)
ホープ:(立ち姿だけでも相当の実力者であることがわかる。)
ホープ:(これがブルズアイ。)
ホープ:(あの人……シャークの相棒の一人。)

 数発の銃声が鳴り響く。

レオ:姿を現したな。

 懐から拳銃を取り出し構えるレオ。

レオ:簡単に殺(や)れると思うなよ……。

 抗戦しようとするレオを制するホープ。

ホープ:下がって。
ホープ:後は私たちで殺(や)る。
レオ:俺もやる。銃の扱いを覚えろと言ったのはお前だろ。

 レオの顔をうかがうホープ。
 そこに恐怖は見られない。

ホープ:……勇み足だけは気をつけて。
レオ:わかってる。

 数発の銃声。
 ブルズアイが顔を出す。

ブルズアイ:はい、ジャックポットぉ。
ブルズアイ:蟻ちゃん3匹。
ホープ:こっちも終わったわ。
ブルズアイ:ぜぇんぜん手応えなかったわねぇ。
ブルズアイ:拍子抜けだわぁ。

 悔しげな表情で佇み、二人の女性を見ているレオ。

レオ:……。
ブルズアイ:んー? どうしたの、坊や。
レオ:……いや、歯がゆくて。
レオ:早過ぎて何が起こったのか全くわからなかった。
ブルズアイ:あッはは! ドンマイ!
ブルズアイ:そうねぇ、得物を手に馴染ませるところから始めた方がいいわよぉ。

 ホープに向き直るブルズアイ。

ホープ:ありがとう。助かったわ。
ブルズアイ:んーん。やるわねぇホープちゃん。
ブルズアイ:とっても綺麗な動き。
ホープ:見てたの?
ブルズアイ:うん。秒で終わったし。
ブルズアイ:しかも坊やを守りながら……。
ブルズアイ:良いわねぇ。足手まといがいると強くなるんだ。
レオ:おい、言い方があるだろう。
ブルズアイ:そういうとこちょっと似てるかもなぁ。
ブルズアイ:シャークちゃんに。

 ホープの目が開く。

ホープ:あの人は……。
ブルズアイ:変わらないわよ。
ブルズアイ:止まらずに前を見てる。
ブルズアイ:走り過ぎることもあるけど……まぁ私らがいるし大丈夫。
ホープ:……そう。
ブルズアイ:会わせてあげよっか?

 目を伏せるホープ。
 やがて顔を上げブルズアイを見る。

ホープ:やめておく。
ブルズアイ:あら、何で?
ホープ:彼女の仕事の邪魔をしたくない。
ホープ:私は心も強さも、あの人の足元にも及ばないから。
ホープ:同じ場所に立って肩を並べて……会いたい。
ブルズアイ:そっかぁ。
ブルズアイ:ふふ、嫌いじゃないわよぉそういうの。
ホープ:それに……。

 柔らかい笑顔を見せるホープ。

ホープ:元気でいるってわかっただけでも……嬉しい。

 微笑み、優しくホープの頭に手を置くブルズアイ。

ブルズアイ:じゃあねぇ。
ブルズアイ:また会いましょ、ホープちゃん。
ホープ:ええ。生きていれば、また。

 小さく手を上げ、去っていくブルズアイ。
 その背中を見送る二人。

レオ:「シャーク」と面識があるんだな。
ホープ:……。
レオ:「最高峰」の呼び声高い殺し屋だろう。
レオ:シャーク、センチピード、ブルズアイ……裏では相当に名が通っている三人組だ。
ホープ:……今の私があるのは彼女のおかげ。
レオ:何があったんだ?
ホープ:……仕事とは全く関係のない話。

 歩き出すホープ。

レオ:あっ、おい、待てよ!
ホープ:それより、あなた……全然なってない。
レオ:は? な、何の話だよ。
ホープ:銃の扱い。あれじゃ構える頃には死んでるわ。
レオ:う、うるさいな。承知の上だよ……。
レオ:悪かったな、素人で。
ホープ:誰でも初めはそうよ。
レオ:えっ……。
ホープ:基本的な扱い方なら教えられる。
ホープ:帰ったら私の部屋に来て。

 面食らうレオ。

レオ:……あ、ああ。

 歩いていく二人。

ホープ:(神なんかよりあなたを信じる。)
ホープ:(あなたから貰った言葉で今も私は引き金を引ける。)
ホープ:(いつかお礼を言いたい。)
ホープ:(暗い檻から救ってくれた、強いあなたの隣に立てたなら。)

 街が夕暮れに染まっていく。

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