見出し画像

フォグナイトの狩人

【タイトル】
「フォグナイトの狩人」
殺し屋シリーズ・2部2話

【キャスト総数】
4(男:2 女:2)

【上演時間】
20〜分

【あらすじ】
また一人男が殺された。

近頃、街を騒がせている連続猟奇殺人事件。
深い霧がかかる夜に決まって犯行は行われる。

その名を「霧のリグレット」。
巨大なブッチャーナイフを携え、
死体さえも斬り刻む残虐な手口。
夜の街に一匹の怪物(モンスター)が紛れ込んだ。

保安官のウィリアムは
懇意にしているバーに友人を招いた。

もはや手段など選んでいられない。
夜の街の支配者は「殺し屋」なのだ。

【登場人物】
・クルム(男)
「魔弾の射手」の名を持つ殺し屋。
ホープのバディであるスナイパー。

・ウィリアム(男)
クルムの友人である保安官。
裏社会にも通じている。

・リグレット(女)
「霧のリグレット」の名で恐れられる猟奇殺人犯。
数々のナイフを用いて獲物を刻む。

・ホープ(女)
業界では「エクスマキナ」の名で知られる殺し屋。
銃やナイフの扱いに長ける。

【本編】
 その夜、大都市には深い霧が覆っていた。
 人気のない路地裏で、暗がりに佇む女が目の前の男に語りかけている。

リグレット:あなた、神を信じますか?
リグレット:苦痛や絶望に足を取られた時、心に浮かぶ存在はありますか?
リグレット:人の子は等しくか弱い雛鳥です。
リグレット:誰もが安息と救いを求めています。
リグレット:この醜(みにく)い常世(とこよ)の街にこそ確かな導(しるべ)が必要です。

 優しく微笑み、目の前の男に視線を合わせる。

リグレット:ですが我々は、すべからく傲慢でした。
リグレット:文明の繁栄を笠(かさ)に着るうち、神の与える救いをないがしろにしてしまった。
リグレット:あたかも知恵の実を食し原初の罪を犯したアダムのように。
リグレット:おわかりですか? 皆、履き違えているのです。
リグレット:自らこそが全能たる「神」であると。

 立ち上がり、男を見下ろす。
 壁を背に頭を垂れた男は血を流しすでに事切れている。

リグレット:どれほどに哀れな生き物でしょうか。
リグレット:私の「後悔」は、あなたのような「模倣の神」にすがりつくしかなかったことです。
リグレット:ああ……忌々しい。忌々しいッ!

 女性が手にした巨大なブッチャーナイフで男の死体が何度も斬り刻まれていく。
 すでに原型を留めていない男の顔。

リグレット:……故に正さなければなりません。
リグレット:大いなる「変革」をもって、歪んだ常世(とこよ)を正しましょう。
リグレット:愛しております……私の神様。

 振り下ろされたナイフが死体の頭を割る。

 ――街の一角に佇む、とあるバーの店内。
 カウンターに並んで座り、語り合う二人の男。

ウィリアム:……それで、上手くやれてるのか?
クルム:何がよ? 仕事の話か?
ウィリアム:そっちは特段、心配してない。
ウィリアム:「エクスマキナ」とだよ。
クルム:ああー……。
ウィリアム:お前と関わった女はご多分に漏れず泣かされているからな。
クルム:馬鹿言え。女運が悪ィんだよ、俺は。
ウィリアム:ふッ、女の方も同じ台詞を吐いてるだろうな。

 顔をしかめ、手にしていたグラスを傾ける。

クルム:……まぁ、あの嬢ちゃんは涙なんかとは無縁かもな。
ウィリアム:へぇ?
クルム:名が体を表してる。「機械仕掛け」とはよく言ったもんだ。
クルム:泣くどころか笑顔のひとつも見たことねぇよ。
ウィリアム:噂通りってわけか。
クルム:銀(イン)の頼みとは言え、俺が子守りなんざすることになるとは……。
ウィリアム:「青天の霹靂」って言うんだったか? お前らの言葉で。
クルム:俺は韓国人(コリアン)だっつってんだろ。
クルム:……あいつも何を考えてんだか。
クルム:「あの子にはストッパーが必要なんだ」とか何とか、わけのわからんこと言いやがって……。
ウィリアム:「ストッパー」、か。
クルム:大体俺はなぁ、熟れた女が好みなんだ。
クルム:10……いや20年後だな、あの嬢ちゃんは。
クルム:全く、その辺を理解してもらわねぇと困る。
ウィリアム:何に困るのか、さっぱりわからんな。

 グラスを傾けるウィリアム。

ウィリアム:……まぁ、気にかけてやれ。
ウィリアム:腕は立つようだが業界ではまだ新人なんだろ。
クルム:ふっ、保安官の言う台詞じゃねぇよなぁ、ウィル?
クルム:お前のその耳の早さはどういうカラクリなんだよ。
ウィリアム:行きつけのカフェの店主が博識でな。
ウィリアム:その辺りの情報に聡(さと)い。何より美人だ。
クルム:ふん……カタギが首を突っ込みすぎると痛い目見るぞ。
ウィリアム:はは……今さらだな。手段なんか選んでられんよ、こっちも。
クルム:で? 早ぇとこ本題に入れ。眠くなっちまうだろうが。
クルム:誰を殺(や)るんだ。
クルム:官僚か? マフィアか?
クルム:身内絡みなら隠ぺい工作の準備は万全なんだろうな。
ウィリアム:……いや、今回はもっとタチが悪いのが相手だ。現場では俺も協力する。
クルム:ほう?
ウィリアム:「霧のリグレット」。巷(ちまた)を騒がせてる連続猟奇殺人犯だ。

 ――街の一角。
 歩くホープの持つ携帯電話に着信が入る。

ホープ:……もしもし。どうしたの、銀(イン)。
ホープ:ええ、あれから彼とは会ってないけれど。

 銀の話を無表情に聞くホープ。

ホープ:……それは雇用主としての命令?
ホープ:それとも単なるお願い?
ホープ:……そう、わかった。
ホープ:その代わり私からも一つ条件がある。
ホープ:これが最後にして。
ホープ:ええ、前にも言ったけど一人でやるから。

 電話の先からため息が漏れる。

ホープ:……場所を教えて。すぐに向かう。
ホープ:……うん。また連絡する。それじゃあ。

 通話を切るホープ。
 顔を上げると街には深い霧が広がっている。

ホープ:……視界が悪い。これは……霧?

 霧の中にホープの姿が消えていく。

ホープ:(……消せない記憶に胸が痛む。)
ホープ:(ちょうどあの日も、こんな風に霧がかった夜だった。)

 バーでの会話。

ウィリアム:奴の行動パターンには一定の法則性がある。
ウィリアム:現れる可能性が高いとされるポイントはすでに割り出した。
クルム:そりゃあ有能なことで。
クルム:で、次はいつ現れるんだ?
クルム:明日か? 一週間後? 一か月後?
クルム:張り込みなんざ勘弁しろよ。
ウィリアム:……霧の夜。
クルム:あ?
ウィリアム:深い霧がかかる夜に奴は現れる。
ウィリアム:故に「霧のリグレット」だ。

 鼻で笑い飛ばすクルム。

クルム:はッ、妖怪かよ。
ウィリアム:言い得て妙だな。
クルム:ちゃんと銃弾は効くんだろうな、そりゃ?
ウィリアム:奴が人間ならばな。
クルム:ケッ、冗談じゃねぇよ。

 肩をすくめ小さく笑うウィリアム。

ウィリアム:俺が囮(おとり)になる。
ウィリアム:お前の間合いまで引き付けるから後は頼む。
クルム:捕まえなくていいのか?
ウィリアム:言ったろう。手段は選んでられんと。
ウィリアム:「殺し屋」に殺(や)られた、という事実が欲しいんだ、上は。
クルム:へいへい。まぁ、金さえ貰えればいいよ、俺ぁ。
ウィリアム:視野の狭まる霧の中で確実に殺(や)れるのは、お前をおいて他にいない。
ウィリアム:任せたぞ、「魔弾の射手」。

 頬杖をつき、じっとりとウィリアムを見るクルム。

クルム:……それ、似合わねぇからやめてくれねぇ?

 ――某日。深い霧のかかる夜。
 薄暗い通りを歩くウィリアム。

リグレット:……我らは迷える子羊の群れ。
リグレット:主の導きを便りに荒寥(こうりょう)たる陸路を渡る。
リグレット:しかしお気を付けなさい。
リグレット:黒い毛並みのそれは悪魔の使い。
リグレット:神を喰らおうと、耽々(たんたん)として飢えた牙を隠す者。

 霧の中から、ゆらりと現れるリグレット。
 気配を感じたウィリアムが向き合う。

リグレット:……こんばんは、ミスター。
ウィリアム:こんばんは。私に何か?
リグレット:あなた、神を信じますか?

 突然の問いかけに肩をすくめるウィリアム。

ウィリアム:申し訳ないが信心深い方ではなくてね。
リグレット:それはいけません……。哀しいことです。
リグレット:神はおわします。
リグレット:硝煙(しょうえん)に烟(けぶ)るこの街に相応しい方法で我らを救ってくださいます。
ウィリアム:……それは素晴らしいですね。
リグレット:ミスター、よく顔をお見せください。

 薄く笑みを浮かべ、ウィリアムに近づくリグレット。

リグレット:ああ……その目も、鼻も、口も、舌も……。全てが贋作(がんさく)です。
リグレット:すべからく模倣なのです。
リグレット:哀しい……あまりにも。

 リグレットの懐から巨大なブッチャーナイフが引き出される。

リグレット:正さなければなりません。
リグレット:全ては、主たるあなたの思(おぼ)し召すまま。

 間合いが詰められていく。
 後退しつつウィリアムが小さく呟く。

ウィリアム:……やれ、クルム。

 霧を裂き、閃光のように奔る弾丸がリグレットの足を貫く。

リグレット:ッ! ……。

 リグレットの体が崩れ落ち、地に伏す。
 ブッチャーナイフが手から転がっていく。
 胸元のピンマイクに語りかけるウィリアム。

ウィリアム:……おい、聞こえるか?
クルム:何だよ。
ウィリアム:一発で仕留めろと言ったはずだが。
クルム:悪ィな。聞いてたより美人な妖怪だったもんでよ。
クルム:手元が狂っちまった。
ウィリアム:その悪い癖で足をすくわれんように願うよ。

 地に伏したリグレットの眼前に立ち、見下ろすウィリアム。
 懐から拳銃を取り出し銃口を向ける。

ウィリアム:……さて、とどめを刺すことになるとは思わなかったが……。
ウィリアム:ここまでだ、お嬢さん。

 うつむいたリグレットの口から呟くような言葉が漏れる。

リグレット:……主よ。流るる血も、脈打つ心臓も、四肢の全ても……。
リグレット:全てはあなたの為に。
ウィリアム:悪いな。化けて出るなよ。

 引き金に力を込めるウィリアム。

リグレット:……ぁぁあああッ!

 その瞬間、素早く立ち上がり懐から取り出した小刀で襲いかかるリグレット。
 咄嗟に防いだウィリアムの腕にナイフが突き立てられる。

ウィリアム:ぐあああッ!
クルム:おいウィル、どうした!?

 よろめき、腕の傷を押さえるウィリアム。

ウィリアム:バ、馬鹿な……。なぜその足で動ける……!?

 ブッチャーナイフを拾い上げ、ウィリアムに向き直るリグレット。
 足からは血が滴り、冷たい笑みが浮かぶ。

リグレット:贋作(がんさく)の首を奉(たてまつ)りましょう。
リグレット:ふふ……主の喝采が確かに聞こえます。
クルム:ウィルッ! おいッ!
ウィリアム:……怪物(モンスター)め……!

 ブッチャーナイフを振りかぶるリグレット。
 それを制するように放たれた一発の銃声。

リグレット:ッ!

 咄嗟にリグレットがウィリアムから離れる。

リグレット:……子羊が、もう一匹。

 霧の中から拳銃を構えたクルムが現れる。

クルム:……チッ。
ウィリアム:馬鹿野郎……。スナイパーが身をさらしてどうする。
クルム:んなこと言ってる場合か。怪我の具合は?
ウィリアム:利き手を深くえぐられた。……分が悪いな。
クルム:マジもんの怪物(モンスター)かよ。
クルム:ったく、冗談じゃねぇっつったのによォ……。
クルム:やっこさん銃の効かねぇゾンビか何かか?
クルム:どうなってやがんだよ。
ウィリアム:だから一発で仕留めろと言っただろうが……。
ウィリアム:ゾンビでも頭を撃ち抜けば終わりだ。
クルム:あァ、耳が痛ぇな。

 銃を構えるクルムを見て笑うリグレット。

リグレット:あなた血の匂いがしますね。
リグレット:もしや……「殺し屋」では?
クルム:そうだと言ったら何だい?
リグレット:あははッ、「殺し屋」!
リグレット:黒い毛並みを持つ羊……!
クルム:んー、ツラは申し分ねぇんだけどなぁ……。
クルム:さすがの俺でもサイコ女は論外だわ。
リグレット:狩りの時間ですよ……ミスターッ!
クルム:チッ……!
ウィリアム:駄目だ、退けッ! クルムッ!

 ブッチャーナイフが振り下ろされる。

 瞬間、霧の中から現れた何者かが割って入り刃でナイフを止める。
 リグレットと鍔迫り合いの形になり、刃同士が火花を散らす。

リグレット:ッ!
ウィリアム:なっ……。だ、誰だあれは……!?
ホープ:……。

 真っ直ぐにリグレットを見つめるホープ。

クルム:……お嬢ちゃん。

 ホープのナイフを弾き返すリグレット。
 間合いが開き二人が対峙する。

ウィリアム:なぜエクスマキナがここに……。
クルム:いいから任せるぞ。手負いは大人しくしとけ。
ウィリアム:くッ……。
クルム:それに……この間合いは嬢ちゃんの独壇場だ。

 リグレットの顔に笑みが浮かぶ。

リグレット:……エクスマキナ……ホープ……「希望」。
リグレット:ふふふ……希望、ですか。
ホープ:……悪いけれど退いてもらえる?
ホープ:その人、死なれちゃ困るの。
リグレット:皮肉な名前ですねぇ。
リグレット:あれから、あなたなりの希望を見つけたのですか?

 リグレットの言葉に身が固まるホープ。

ホープ:何を……言ってるの。
リグレット:そうでしょう? 
リグレット:絶望に囲まれた檻のようなあの場所から逃げ出して……。

 ホープの目が驚いたように見開く。

ホープ:……リグレット……?
リグレット:……。

 リグレットの顔から笑みが消える。

ホープ:まさか……そんな。

 弱々しい足取りでリグレットに近づいていくホープ。

ホープ:リグ? リグ……なの? ねぇ……。

 ブッチャーナイフの切っ先が突きつけられる。

リグレット:近づかないで。
ホープ:……!
リグレット:滑稽ですね。声が震えていますよ?
リグレット:「機械仕掛け」なのでしょう?
リグレット:心も体も鉄で作られているのではないのですか。
リグレット:ほら……私を殺して、「希望」にすがって歩み続けなさいよ。
リグレット:あの時みたいに……私を置いて。
ホープ:リグ……違うの。聞いて。
リグレット:ああ、笑えますね。
リグレット:笑えて、笑えて……涙が出る。

 リグレットの体がふらつき、膝が折れる。
 足からは血が流れ続けている。

ホープ:リグっ!
ウィリアム:……本物のゾンビというわけではなさそうだな。
ウィリアム:クルム、チャンスだぞ。やれ。
クルム:……ふん。

 銃口をリグレットに向けるクルム。
 咄嗟に間に割って入るホープ。

ホープ:駄目ッ!
クルム:おいおい、何のつもりだ嬢ちゃん。俺のマトだぜ。
ホープ:手を出さないで……。お願いよ、クルム。

 懇願するホープに困った顔を浮かべるクルム。

クルム:ったく……どういう風の吹き回しだよ、こりゃあ。

 その隙を突いてリグレットが場を離脱する。

ウィリアム:クルムッ! 何してる、奴が逃げるぞ!
クルム:んなこと言われたってなぁ……。

 霧の闇に紛れたリグレットが口を開く。

リグレット:……ホープ。
ホープ:!
リグレット:「神」はいますよ。
リグレット:偶像などではありません。確かに存在するのです。
ホープ:リグ……私は……ッ!
リグレット:次は殺します。
ホープ:リグッ! 待って!

 気配が深い霧の中に完全に消え去る。
 顔を伏せ、唇を噛みしめるホープ。

 ウィリアムが傍らのクルムに語りかける。

ウィリアム:なぜ撃たなかった。
クルム:……勘弁しろよ。

 銃を収めたクルムがホープの横に立つ。

ホープ:……。
クルム:そんな顔もするんだなぁ、嬢ちゃんも。

 夜明けとともに霧が晴れていく。

 ――薄暗い路地裏。
 血を流しながら進むリグレットの姿。

リグレット:……主よ。私を救いたもうた絶対なる主よ。
リグレット:あなたが望むのならば、那由他(なゆた)の首を捧げます。
リグレット:ですから……その腕に私を抱いてください。
リグレット:どうか、がらんどうの私に慈悲を……。

 鮮血が地に滲んでいく。

 ――朝日を眺めながら煙草の煙を吐くクルム。

クルム:晴れてみりゃあ綺麗な朝焼けだなぁ。
ホープ:……お友だちは?
クルム:病院。傷は浅くねぇみたいだが、まぁ大丈夫だろ。
クルム:あいつもしぶとい野郎だ。
ホープ:どうして保安官と仲良しなのかは聞かないでおくから。
クルム:はは、ありがとよ。

 煙草を吸うクルム。
 そっとホープの方をうかがう。

クルム:……嬢ちゃんこそ、あの女とはお友だちなのか?
ホープ:……。
クルム:野暮だったか。
クルム:答えたくねぇなら別にいい。
ホープ:……意外。
クルム:ああ?
ホープ:気遣いができるのね、あなた。
クルム:オイオイオイ、聞き捨てならねぇな。
クルム:俺ほどのジェントルマンは滅多にいねぇぞ。

 真っ直ぐに朝焼けを見つめるホープ。

ホープ:あの子とはまた会う必要がある。
クルム:清々しいくらいに無視すんのやめてもらえる?
ホープ:悪いけれど、今回ルールは守れそうにない。
クルム:ルール?
ホープ:「他人のマトに手を出すな」。
クルム:あー……あったなぁ、そんなもん。
クルム:いいんじゃねぇの?
クルム:大体俺、カタッ苦しい決まり事大嫌いなんだわ。
クルム:自由を謳歌してこそ人生にハリが出るんだぜ?
ホープ:そんなこと聞いてない。
ホープ:……でも感謝するわ。

 きょとんとするクルム。
 やがて朗らかに笑う。

クルム:ははっ、なァんか急に良い女になったなぁ嬢ちゃん。
クルム:こりゃあ20年も待つ必要ねぇな。今のうちにツバつけとこ。
ホープ:……帰る。
クルム:あっ、待てって。メシでもどうだ?
ホープ:遠慮しとく。
クルム:「パルフェ」のドーナツは? おごってやるよ。

 ホープの足が止まる。

ホープ:……手を打とう。
クルム:はははっ、良いねぇ!

 歩き出す二人。
 朝日が街を照らしていく。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?