デッドエンドの銃声
【タイトル】
「デッドエンドの銃声」
殺し屋シリーズ・1部1話
【キャスト総数】
5(男:2 女:3)
【上演時間】
20〜30分
【あらすじ】
――「誰だって、死ぬときゃ死ぬだろ。」
街の最果てにひっそりと佇むバー「DEAD END」。
瀟洒でムーディな店内には、今宵もある業界の者が集う。
「殺し屋」。
3人組で仕事を行う女たちがカウンターで歓談している。
静かにグラスを磨くマスター。
「シャーク」と呼ばれる女の、
怒気を含んだ声が響くところから物語は始まる。
【登場人物】
・シャーク(女)
3人組(チーム)で仕事を行う殺し屋。
荒っぽい言動が目立つ。
・センチピード(女)
3人組(チーム)で仕事を行う殺し屋。
ゲーム好き。
・ブルズアイ(女)
3人組(チーム)で仕事を行う殺し屋。
色男には目がない。
・ウルフ(男)
業界では「最高峰」と呼ばれる殺し屋。
かつてのシャークの師。
・マスター(男)
バー「DEAD END」のマスター。
落ち着いた雰囲気の紳士。
【本編】
バー「DEAD END(デッドエンド)」店内。
女性の二人組がカウンターに並んで座っている。
一人は手元のスマートフォンの操作に忙しい。
二人と向かい合う形でマスターらしき男が静かにグラスを拭く。
シャーク:てめぇ、もう一回言ってみろ!
センチピード:……。
シャーク:てめぇに言ってんだよ! 耳付いてんのか!
センチピード:あ、ごめん。
センチピード:このクエスト終わってからでいい?
センチピード:ちょうど今、アツいのよね。
シャーク:マジでぶっ殺すぞ。スマホ置け。
センチピード:金にならない殺しなんてやるの、あなた。
シャーク:てめぇの減らず口を閉じられるんなら、喜んでやってやろうじゃねぇか。
センチピード:何カッカしてんのよ。
シャーク:だから、もう一回言ってみろっつってんだ!
センチピード:「鮫のくせに、いちいち止まるのね」
シャーク:そう、それだよ。
シャーク:どういう意味だ。あ?
センチピード:鮫って、止まらないのよ。
センチピード:止まると呼吸ができなくなって死ぬから。
センチピード:それなのに、あなたは立ち止まってばかり。
シャーク:何だと……。
センチピード:迷うくらいなら、辞めなさいよ。
センチピード:それでもプロ?
シャーク:てめぇ!
荒々しい口調の女が、傍らの連れに掴みかかった。
マスターの男がそれを制する。
マスター:お二人さん、そのあたりで。
シャーク:……ちっ。
穏やかながらも有無を言わさぬマスターの声に、女は手を離す。
センチピード:ごめんなさい、マスター。
センチピード:この子、生理中なの。
シャーク:ちっげぇよ、バカ! 殺すぞ!
マスター:何かあったんですか。
センチピード:今日の仕事ね、マトが子連れだったのよ。
センチピード:小さい子に弱いのよねぇ、この子。
マスター:引き金が鈍りましたか。
シャーク:鈍ってねぇよ。きっちりやった。
センチピード:そ。なのに子どもやるといつもウジウジしちゃって。
シャーク:してねぇよ、黙れ。
マスター:良心が痛みましたか。
シャーク:ハッ、マスター、笑わすなよ。
シャーク:良心だぁ? 何の冗談だよ。
センチピード:違うの?
シャーク:そんなもん持ってたら仕事にならねぇだろうが。
シャーク:痛める資格なんざねぇよ、あたしは。
センチピード:心配しなくても、あなただけじゃないわ。
マスター:左様ですな。
マスター:因果な商売であるとは思いますが世の摂理というものです。いつの時代でもね。
シャーク:……ふん。
センチピード:おっしゃる通り。
センチピード:マスター、ジントニックちょうだい。
マスター:かしこまりました。
傍らの女に目を向けるマスター。
マスター:お嬢さんは?
シャーク:カルアミルク。
センチピード:かーわいっ。
シャーク:殺すぞ。
センチピード:わー、こわぁ。
手元のゲームから電子音が鳴る。
センチピード:あ、クエスト終わっちゃったじゃん。最悪。
シャーク:知るかよ。
シャーク:つうか、ブルズアイはまだ来ねえのか。
センチピード:今向かってるって。
シャーク:いつもいつも遅ぇんだよ、あいつ。
センチピード:仕事より男とベッドの上にいる方が長いからねぇ。
シャーク:クソビッチが。
センチピード:男の方が寄って来るのよ。蜜が欲しい虫みたいに。
シャーク:ヤることしか考えてねぇ奴らだろ。
センチピード:男って大半がそうよ。
センチピード:虚勢を張るのが大好きなカマキリちゃんたち。
センチピード:かわいいわよね。
正面のマスターが苦笑を漏らす。
マスター:耳が痛い話ですな。
センチピード:マスターは良い男。
シャーク:虫が相手なら独壇場ってか。
センチピード:そういうこと。
シャーク:ムカデ女が吹きやがる。
センチピード:男の味を知らないシャークちゃんには早すぎた?
シャーク:んだとコラ。
センチピード:ごめんねぇ、まだ夢見てたいもんね。
センチピード:あはは、マスター、シャークに「ミモザ」あげてよ。
マスター:はあ、かしこまりました。
シャーク:何だってんだよ。
センチピード:ミモザの花言葉、知ってる?
センチピード:「秘密の恋」だってさ。あなたにぴったりじゃない。
シャーク:てめぇ、ムカデェ!
センチピード:マスター聞いてよ、この子さぁ……。
シャーク:ぶっ殺す!
マスター:やれやれ、お話どころではありませんな。
再び一触即発の空気。
同じタイミングで来店した女性が二人に声をかける。
ブルズアイ:ハァイ、ごめんなさいね、遅れちゃってぇ。
センチピード:あぁ、お疲れ様。
シャーク:オイ、こっち向けコラァ!
センチピード:はいはい、ホント冗談の通じない子。
ブルズアイ:お疲れぇ。
ブルズアイ:ムカデちゃん、またシャークちゃんと喧嘩?
シャーク:おっせぇんだよ、ブルズアイ! クソビッチが!
ブルズアイ:ちょっとぉ、いきなりヒドくない?
センチピード:生理中なのよ、この子。
シャーク:違うっつってんだろ!
ブルズアイ:こちとらブッとい仕事だったんだからさぁ、少しは労ってよぉ。あーもうマジ疲れた。
ブルズアイ:マスター、ビールちょうだぁい。
マスター:かしこまりました。
グラスにビールを注ぎ、差し出すマスター。
ブルズアイ:んー、ありがとぉ。
マスター:上々ですか、お仕事の方は。
ブルズアイ:まぁね。同業相手は骨が折れるわ。
センチピード:同業? 珍しいわね。
ブルズアイ:殺し屋が殺し合ったってイタチごっこなのにねぇ。
ブルズアイ:お偉いさん方はぜぇんぜんわかってない。
シャーク:次はあんたなんじゃねぇのか。
ブルズアイ:私が簡単にやられるタマだと思う?
シャーク:どうだろうな。
センチピード:あなたをやれる人なんているかしら。
ブルズアイ:んー、いないんじゃなぁい?
センチピード:あ、じゃあ……ウルフは?
ブルズアイ:ああ! 良いわねぇ。殺され甲斐があるかも。
ブルズアイ:あはッ、濡れちゃいそう。
センチピード:幸せねぇ、あなた。
ブルズアイ:色男にならやられてもいいもんねぇ。
楽しそうな二人をよそ目に頬杖をつくシャーク。
シャーク:……けッ、笑えねぇよ。
ブルズアイ:ちょっとぉシャークちゃん、どうしたの?
ブルズアイ:しょぼくれちゃってぇ。
センチピード:あーごめんなさいね。
センチピード:ウルフの名前出しちゃった。
シャーク:わざとだろ、てめぇ。
センチピード:違うわよ、有名人だもの。
センチピード:自然と名前が出るのは仕方がないわ。
ブルズアイ:なになにィ? シャークちゃん、まだ引きずってんの?
シャーク:んなわけねぇだろ、いつの話だよ。
センチピード:うそつき。
シャーク:あ?
センチピード:泣いてたくせに。
シャーク:なっ……。
ブルズアイ:うっそォ、マジィ?
センチピード:泣き上戸よね、あなた。
シャーク:んだよそれ! 知らねぇぞあたしは!
センチピード:えっ覚えてないわけ?
ブルズアイ:あっはは、ざんねぇん。見たかったなぁそれ。
シャーク:クソが! オイ、これ以上蒸し返すなら殺すぞ。
センチピード:殺し屋が殺し合ってもイタチごっこでしょ?
ブルズアイ:その通りィ。
シャーク:うるせぇんだよお前ら!
3人のやり取りにマスターが目を細める。
マスター:ふっ……。仲がよろしいですな。
ブルズアイ:そうよぉ。何たってチームだしィ?
ブルズアイ:美女だらけの。ね、ムカデちゃん。
センチピード:あ、ごめん。新しいクエスト始まる。
ブルズアイ:もー、釣れなぁい。
マスター:ウルフさんも、あなた方には一目置いているみたいですよ。
シャーク:マジか?
センチピード:めっちゃ食いつくじゃん。
マスター:ええ。シャーク、センチピード、ブルズアイ。
マスター:皆さんなかなか業界に名が通っています。
マスター:女性の3人組というのも珍しいですからね。
ブルズアイ:ふっふぅん。でしょォ?
ブルズアイ:ま、私のおかげさまかも?
シャーク:調子乗んなよ、尻軽が。
顔を上げたマスターの顔から笑みが消える。
マスター:だが、お気を付けなさい。
マスター:この世界の闇はとてつもなく深い。
マスター:名を馳せた若い芽が引きずり込まれていくのを、何度も見てきました。
シャーク:どういう意味だよ。
マスター:慢心は命取り、ということです。
ブルズアイ:ご忠告ありがと、マスター。
シャーク:誰だって、死ぬときゃ死ぬだろ。
シャーク:特にあたしらみてぇな輩は弾みで死んでも文句は言えねぇ。
シャーク:そういう商売だろうが。
センチピード:まぁ、ロクな死に方はできないでしょうね。
ブルズアイ:はぁ、どうせなら良い男の上で死にたいわぁ。
マスター:ふっ、心配など無用でしたかな。
シャーク:殺される覚悟で殺せ、ってな。
マスター:ウルフさんの受け売りですか。
シャーク:……チッ。
吹き出したブルズアイが軽快にシャークの肩を叩く。
ブルズアイ:あははッ、ドーンマイ!
シャーク:触んなビッチ。
後方でドアの開く音。
一人の男が入店し、離れたカウンターへ腰掛ける。
マスター:おや……。噂をすれば、ですかな。
ブルズアイ:あらぁ! 色男が来たわね!
シャーク:……。
腰掛けた男へと声をかけるマスター。
マスター:いらっしゃいませ。
ウルフ:ああ。ラガブーリンはあるか、マスター。
マスター:ええ、仕入れてますよ。
ウルフ:ロックで頼む。
マスター:かしこまりました。
すかさずブルズアイが男へ近づく。
ブルズアイ:どーもぉ、お兄さん、ねぇ一緒に飲まない?
ウルフ:ブルズアイか、久しぶりだな。
ブルズアイ:ええ、お互い生きてて何より。
ウルフ:官僚の飼っていた同業者とやり合ったと聞いた。
ブルズアイ:あら、耳が早いわね。
ウルフ:腕は鈍っていないようだ。
ブルズアイ:ふふ、派手にジャックポッドを決めてやったわ。
男は奥の席に座る二人へと目を向ける。
ウルフ:センチピードと……シャーク。
ウルフ:3人おそろいか。
センチピード:どーもぉ。
シャーク:……。
ブルズアイ:ちょっとぉ、シャークちゃん。
ブルズアイ:シケた顔してないでさぁ。
ブルズアイ:楽しく飲もうよぉ。
センチピード:行ってくればいいじゃない。
センチピード:話したいんでしょ、先生と。
シャーク:……うるせぇな。
なおも視線を逸らすシャークにウルフが語りかける。
ウルフ:シャーク。
シャーク:何だよ。
ウルフ:元気そうだな。
シャーク:……あんたもな。
ウルフ:幸いにも五体満足でいる。
ウルフ:ここの酒が飲めなくなるような体にはなりたくないものだ。
マスター:あなたにしては悲観的ですね。
センチピード:業界の最高峰でも愚痴のひとつやふたつあるでしょ。
ウルフ:俺をどう評価しようが勝手だが、大海を知らん蛙(かわず)にはなるなよ。
ウルフ:多少、名を上げた奴は視野が狭くなる。
ブルズアイ:平気よぉ。私ら強いから。
乾いた笑みをこぼし、酒を口にするウルフ。
シャーク:先生。
ウルフ:もう俺はお前の師ではない。
シャーク:悪ぃな、他に呼び方がわからねぇんだ。
ウルフ:……。
シャーク:何かあったのか?
シャーク:酒が不味そうじゃねぇか。
ウルフ:お前も人の心配をするようになったか。
シャーク:あたしを何だと思ってんだよ。
ウルフ:いつまでも金切り声のうるさいガキじゃあないんだな。
シャーク:ガキはこんなところ来ねぇだろ。
いつの間にやら作られた二人の雰囲気を眺めるブルズアイ。
小声で傍らのセンチピードに話しかける。
ブルズアイ:ね、ね。もしかして私たち……おじゃま虫?
センチピード:さぁね、そんな虫は知らないわ。
ブルズアイ:ゲームばっかやってないで私の相手してよぉ。
センチピード:イヤ。
ウルフは顔を向けないまま、シャークへ話しかける。
ウルフ:……シャーク。
シャーク:ん?
ウルフ:後悔してないか。
シャーク:はあ?
ウルフ:俺とこうして肩を並べていることに。
シャーク:馬鹿言うな。
シャーク:あたしはあんたの影すら踏めてねぇ。
ウルフ:いや、お前は強いさ。
ウルフ:お前の牙は容赦がない。
シャーク:褒められてんのか?
ウルフ:だが、獣になりきれないのもお前だ。
シャーク:あんまり難しい言葉使わねぇでくれよ、先生。
ウルフ:子どもに情けをかけるクセ、直ったか?
シャーク:ああ、そのことか……。
センチピード:直ってないわよ。
シャーク:黙ってろ、ムカデ。
ウルフ:それでいい。
シャーク:は?
ウルフ:欠片でいい。人の部分は残しておけ。
ウルフ:俺達は獣ではない、人間だ。
ウルフ:理性で人を殺すんだ。
センチピード:へぇ、そんな考え方なのね。
ブルズアイ:そうよぉ! 子ども好きなところも、シャークちゃんのかわいいところじゃなぁい!
シャーク:……。
ブルズアイ:シャークちゃん?
シャーク:先生、どうしちまったんだ、あんた。
ウルフ:ふっ、焼きが回ったのかもな。
シャーク:ちゃんとあたしを見て話せよ、なぁ。
ブルズアイ:ちょ、ちょっとぉ、シャークちゃんってば。
シャーク:何でそんな遠くを見てんだ!
シャーク:あんた、いつもそうだよな。
シャーク:あたしの目をちっとも見やがらねぇ……。
ウルフ:……。
シャーク:また、あたしの前から消えるんだ。
シャーク:あたしの気も知らねぇで、どこかへ行っちまう!
ウルフ:シャーク。
シャーク:ふざけんなよ……!
豹変した空気にたじろぐブルズアイ。
ブルズアイ:えー……。ちょっと何これぇ。
ブルズアイ:どうしよ、ムカデちゃん。
ブルズアイがセンチピードの方を揺する。
その体は揺れ、席から床へと転げ落ちる。
センチピード:……ッ……。
ブルズアイ:え……。ちょっとムカデちゃん!?
シャーク:おい、どうした!?
ブルズアイ:ムカデちゃんが……。
薄く開いた目で言葉を吐くセンチピード。
センチピード:……や、られた……わね。
センチピード:酒に……何か、盛られて……。
ブルズアイ:ムカデちゃん!
目が完全に閉じられ、動かなかくなる。
反射的に構えられたブルズアイの銃口がマスターに向けられる。
動じる様子もなくグラスを拭き続けているマスター。
ブルズアイ:マスター、どういうつもり?
マスター:お話は終わりましたかな。
ブルズアイ:どういうつもりだって聞いてんのよ!
ブルズアイ:風穴開けられる前に答えな!
マスター:殺してはいませんよ。
マスター:少し眠っていただいただけです。
ブルズアイ:舐めた真似……してくれる、じゃない……。
構えた照準が揺れ始め、ブルズアイの視界がかすんでいく。
ブルズアイ:ぐっ……。
シャーク:おい、ブルズアイ!
ブルズアイ:ごめん、シャーク、ちゃん……。
ブルズアイの体が揺らぎ、床へと崩れる。
マスターを睨むシャーク。
シャーク:マスター……てめぇ。
マスター:お嬢さんは眠る時間です。
マスター:ここからは大人の時間だ。
シャーク:殺してやる。
銃口を向けるシャーク。
ウルフが静かにそれを制する。
ウルフ:銃を下ろせ。
シャーク:先生……。
ウルフ:こいつは俺のマトだ。
シャーク:くそ……何でだよ……。
やがてシャークの足元がおぼつかなくなっていく。
ぼやけていく視界の先にはマスターと向き合うウルフの姿。
シャーク:……ふざけんな……待てよ。
ウルフ:シャーク。
シャーク:せんせ、い……。
ウルフ:死ぬなよ。
シャークのまぶたが閉じられ、体は床へ崩れる。
マスター:随分と丸くなられましたなぁ、あなたも。
ウルフ:そうかもな。
マスター:やるんですか?
マスター:店を汚したくはないのですが。
ウルフ:どちらにせよ、店じまいだろう。
マスター:おっしゃる通りですな。
懐に手をかけるウルフ。
グラスを置き、顔を上げるマスター。
ウルフ:全く、あんたのようなヤクネタに当たるとはついてない。
ウルフ:ここの酒は好きだったんだが。
マスター:それは残念ですな。
ウルフ:地獄で飲み直すよ。
マスター:……極上の一杯をご用意しましょう。
懐から銃が抜かれる。
夜も更けきったバーの店内に銃声が響く。
後日。
同じくバー「DEAD END」。
店内は何事もなかったかのように片付けられている。
音をなくした店内に立ち尽くすシャーク。
シャーク:……。
センチピード:見事に跡形もないわね。
センチピード:最初から誰もいなかったみたい。
ブルズアイ:綺麗過ぎて気味が悪いわ。
ブルズアイ:あのマスターの性格が出てるわねぇ。
センチピード:バー「デッドエンド」……行き止まり、ね。
ブルズアイ:期待してなかったけど手掛かりなし、かぁ。
ブルズアイ:帰るわよぉ、シャークちゃん。
シャーク:……ああ。
センチピード:死体もなかったわね。
センチピード:片付けられた後かしら。
シャーク:さぁな。
センチピード:もしかしたら生きてるかもね。
ブルズアイ:ウルフちゃんが簡単にやられるとは思えないもん。
シャーク:関係ねぇよ。
センチピード:強がっちゃって。
シャーク:うるせぇ。
ブルズアイ:まぁ、生きてたらまた鉢合わせるでしょ。
ブルズアイ:鉄火場(てっかば)でね。
シャーク:その時はきっちり殺してやる。
センチピード:あら、殺しちゃうの? 先生を。
シャーク:まだあたしの目を見ないつもりならな。
踵を返し、店を去っていくシャーク。
センチピード:おっかない顔してる。
ブルズアイ:ふふ、しょげてるよりあの子らしいじゃない。
ブルズアイ:あ、そぉだムカデちゃん。次の仕事の話なんだけどぉ……。
シャークに続いて店を後にするふたり。
閉ざされたドアには「Closed」の札が揺れている。
(了)
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