遠野妖物語5

「翡翠さま、今年も花をつけましたよ」
「ああ、見事だ。夜空よ、あの子はもう来ないのだろうか。我らに名をくれたあの黒髪の」
「あのときの小さな芽が大樹となるほどに時は過ぎたのですから、もう」
「変わらぬものは我らだけ」
「見送りましょう、山神の務めのままに。すべての花が落ちるまで」

原文:柳田国男『遠野物語』五(http://www.aozora.gr.jp/cards/001566/files/52504_49667.html)

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