遠野妖物語8

山に戻った女は手首に巻いた細い糸の端を引いた。髪は艶やかな緑の黒髪へ、染みと皺は消え、手足はすらりと伸び、肌は瑞々しく張る。女の刻は砂一粒も落ちておらず。あの日ともにゆくことを拒んだ妹は、その死の床で涙した。永遠に美しいままの姉だけがその意味を知っていた。

原文:柳田国男『遠野物語』八(http://www.aozora.gr.jp/cards/001566/files/52504_49667.html)

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