遠野妖物語6

村人が逃げ出してすぐ、日は尽きた。濡れた闇にとぷんと呑み込まれ、嗚呼と喘ぐ。髪の先まで滾る神気に身を震わせ、仰いだ空に月は無し。なるほど、かつて愛した男の肉を食むのに相応しい夜かもしれぬ。森の僕どもの歓声が男の最期を飲み乾すまで、寸刻追懐するも悪くはなかろう。

原文:柳田国男『遠野物語』六(http://www.aozora.gr.jp/cards/001566/files/52504_49667.html)

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