画面全体

次世代TRPGツールにさわってみた:TRPGスタジオ編

【趣旨】

 2020年のFLASHの終了に伴い、オンラインセッションツールとして長らく親しまれてきたどとんとふの終了も本格的に迫ってきました。
 次世代ツール、ポストどどんとふなど、後継と言われるツールは色々ありますがどれを使おうかまだ決めかねている方も多いかと思います。私も絶賛模索中です。
 そこで同じように次世代オンセツールを探している同好の参考になればと思い、各種ツールをさわった所感を記録していきます。
※使い方講座ではありません。そちらは有志のwikiや動画などを参考にしてください。

 今回使用したツールはTRPGスタジオです。

最初の画面


【プレイ環境】

 同じオンセといっても遊ぶシステムやプレイスタイルによってツールに求める機能は異なります。そもそも参考になるかどうかの判断基準にご利用ください。

分割テキストオンセ中心
・よく遊ぶシステムはシノビガミ、インセイン、アリアンロッド
立ち絵機能を利用
・凝った背景やBGMの使用はやりたい人だけやればいい派(自分では使わない)
・ツール内である程度データや情報を管理している


【TRPGスタジオ所感の要約】

 ざっとつまみたい方のための要約。正直なめてましたごめんなさい。

「ノベルゲーム風の画面で遊ぶ」ことに注力している印象
・ダイスを振ってロールする、くらいのシステムなら十二分
テキスト民の方がおすすめ度高い
きれいな背景がたくさん用意されていて視覚的に楽しい。立ち絵と表情差分の他、シーンの切り替えやおしゃれ背景、BGMなど凝ったセッティングをしたい人には特におすすめ
スマホにも対応
カード機能は未実装
・マップ上などでデータを色々管理したい人には微妙

 画面はこんな感じです。ノベルゲーム風。

画面全体


【細かい箇所の所感】

<部屋そのものについて>

 遊ぶにはTwitter連携が必要。PLもログインが必要かどうかは部屋を立てたGMの設定次第。

 部屋作成者=GMとして扱われる。ルームの収容人数、メディアボックス(素材集みたいなもの)の持ち込み許可、ダイスボットの指定や背景、BGMなどにさわれるのはGMだけ。強制退場もでき、かなり部屋におけるGMの権限が強い
 その分部屋の改造は全部GM一人がやる必要があるので大変そう。GM権限強い仕様が流行りなんだろうか。
 一人が作成しておける部屋は5つまで(プレミアム会員になると20個までになる)。よく同時に複数卓並行して回す人は上限に注意。
※試しに遊んでいる際、部屋から弾き出された後GMとして入れないトラブルが発生した。素材同期機能に気づかずリロードを繰り返していたせいか、頻繁に入退室を行うと発生するのか? GMとして入れないと参加許可を出せる者がいなくなり、部屋は実質死ぬ。おそろしい。なお、最悪の場合でもログだけは回収できる。

 部屋の設定をまるごと保存・復元といったことはできない。毎回全部1からセッティングする必要があるため、手のこんだことをしたい人は気合いがいる。とはいえ素材セットは他の部屋にも使い回せるので最初に準備をしておけば案外再現は楽、かもしれない。
 部屋情報のバックアップは5分ごとに自動で取られる。安心。

 部屋はURLを知っている人限定にすることも、オープンスペースに立てることも可能。マイページの最近閲覧したセッションに残っていればそこからも入れる。鍵をかける設定はなさそう。
 参加者はGMに申請を出し、許可されることで初めて画面にさわれる。見学だけなら可能(収容人数内であれば。通常は5~10人)。見学者もニコニコ動画のコメントみたいな形式であれば発言可能。
 部屋の使用時間を3時間か6時間で設定する。とはいえ時間が過ぎても復元して立て直せるし、そこまで長時間ぶっ通しでやることもそうそうないと思うのであまり気にしなくて良さそう。

 チャットウィンドウの位置など、レイアウトそのもののカスタマイズ性はほぼない。ノベルゲーム風の仕上がりを意識していると思しきツールなのでそのあたりはなるべくしてなっている気もする。


<テキストまわりについて>

 文字色や文字サイズの変更はできない
 一回の推奨文字数が90字に設定されている。それ以上でも受け付けはするが、ウィンドウに収まりきらない(右のログには残るので全文確認はできる)。
 Enterで改行、Ctrl+Enterで送信。どどんとふ式に慣れていると送信できないので慣れるまで少し戸惑う。
 チャットの新着マークはつくが音は特に出ない。

 タイムスタンプはつかない
 入力中の人がいると左上に入力中と表示される。この機能はありがたい。この表示にはTwitterのアイコンが反映されるので不都合がある場合は事前に変更しておこう。
 入室・退室の履歴は一切ログに表示されない。閲覧中の人数は画面右下に表示される他、参加者メンバーリストも確認できる。

 発言できるタブは「ログ」「チャット」「コメント」のみ。タブの追加、変更はできない。
 ログでの発言のみメッセージウィンドウに反映される。ログは表窓、チャットは裏窓、コメントは見学者用に使い分ける形か。チャットの方もtwitterのアイコンと名前が反映されるのでなんとなく恥ずかしい。

タブ

 メッセージウィンドウが広いので発言はこちらを中心に見る形になりそう。
 メッセージウィンドウの文章を読み上げる機能がついており、ON/OFFを切り替えられる(デフォルトはOFF)。今の所読み上げボイスは女性声の一種類のみ

 ログでは★に登録した発言を絞り込んだりログ内の単語検索が可能。情報項目や後で拾いたいロールを取っておけるのでこれは便利そう。ただし一度部屋から出ると★は解除されるので分割で遊ぶ時は特に過信してはいけない。

 秘匿会話もできる。チャットタブ内で発信先を選ぶ形になるので誤爆に気をつけよう。

 ログの出力はGM特権。PLもログが欲しい場合はGMからもらう必要がある。ここはちょっと不便と感じる。
 ログの出力形式は「ゲーム」「テキスト」「ブラウザ再生」。テキストのログはwebページとして表示され、全文をコピーして各自メモ帳にでも保存する形になる(URLの有効期限は一週間)。台本のような形で、わりときれいに整形されて出てくる。
 ブラウザ再生はノベルゲーム風の画面で出力される。ノベルゲーム画面風再生はちょっと楽しいので一度は試してみてほしい。
 「ログ」タブ以外の発言は出力されない。雑談窓の内容も含めてログを読み返したい人なので悲しい。どうしてもチャットの中身を保存したい場合は直接コピーしてメモ帳にでも貼り付ける形になるか。


<ダイス>

 コマンド入力は少し特殊「/d 2d6 命中判定」のように文頭に/dをつけることでダイスロールができる。ただ「2d6」と入力するだけだとそのままチャットに流れるだけで何も起きないので注意。
 どどんとふと同じダイスボットも使用できる。こちらを使う場合は「/ 2d6」といった風に文頭に/が必要。参照するボットは部屋の設定に依存する(さわれるのはGMのみ)。シーン表なども振れるが、ツール内に直接ボット一覧を確認できる機能はないので事前にどこかから引っ張ってきてメモしておいた方が良さそう。
 個別にダイスボットの追加はできなさそう。独自のシーン表を作る場合などはGMが個別に出目を参照して出すしかないか?

 ダイスが転がるエフェクトは強制表示。ON/OFFを選べるとうれしい。

 ダイスプロット機能はない
 シークレットダイスは後から公開する機能がないのでプロットの代用にはできなさそう(画面内ではGMにも結果は見えないが、抽出したログには全員分結果が明記される)。
 プロットさえできたらシノビガミとかもできそうなのでアイディアがあったらぜひ教えて欲しい。現状の機能で運用する場合、個別チャットでGMにプロット値を伝達(GMはチャットを見ない)、完了したらGMが最初に自分のプロット値を宣言、あとは残りのPCのプロットを確認して貼り付ける形になるか。

 チャットパレットに似た機能として入力サポートがある。よく使う定型文や判定、コマンドなどを用意しておけるので事前に準備しておけば快適。ここにも検索機能があるので、大量に登録しても特定できる単語がついていればスマートに探し出せる。すごい。

入力サポート


<立ち絵・コマ>

 立ち絵機能はあるが、使う前に部屋の外でメディアボックスに登録しておく必要がある点に注意。キャラ情報の登録もメディアボックスで行う。
 ツール側でも現代私服、制服、和服、ファンタジー風などの立ち絵が表情差分つきでいくつか用意されている。NPCの立ち絵を探すのが面倒なGMにもやさしい。

 立ち絵の位置や大きさの調整はしやすい。左右反転もワンクリックでできる。このあたりは直感的にできて良い。
 設定してあれば表情の変更もできる。表情を確認して「決定」を押したら反映されるので表情を間違える事故も少なそう。
※後でノベルゲーム風に出力して楽しむ場合、立ち絵をチャットウィンドウ上部ギリギリに配置してしまうと出力した際に絵が浮いているように見えて悲しいことになる(配置のバランスが実画面と出力後で違う?)。画面での見た目より気持ち下の方に設置した方が無難。

 設置できるのは立ち絵のみで、コマという概念は特にない。アイテムでコマを置くこと自体はできるだろうが、アイテムを置けるのはGMだけなのでPLから画像を供出してもらって登録するなどの手間がある。

 PLがさわれるキャラクターは自分が登録した分のみ。GMは全キャラクターを乗っ取れる。乗っ取り芸をしたいPLはあきらめてほしい。

 キャラシに登録できるフォームは「数字リスト」「テキストリスト」「メモ」「数字テーブル」「テキストテーブル」「変則テーブル1」。チェックボックスの類はない

 画面上に表示できるキャラデータは数字リストとテキストリストの内容のみ。項目は好きに設定できるのでHPなどは数字リストで管理できる。また、項目ごとに個別に表示/非表示を切り替えられるので、使わなくなった項目は消すことも可能(生命点6、頑健2→生命点4のみにするなど)
 数値などを変更しても特にログには残らない

 これらを含めたキャラシに登録されている情報は、デフォルトだと担当PLとGMしか見られない、らしい。公開範囲を変更すると他の参加者も確認できるようになるはず(要検証)。

ステータス

 変則テーブル1ではサイコロ・フィクション系によく見られる特技のテーブルが作れる。空白になっているため入力する必要があるが、既にできているデータがあれば中身を読み込むことも可能(※読み込む際には他の項目も全て上書きされるため、やるならPC情報を書き込む前、最初に行うこと)。
 試しにやってみたい人は下記のテキストファイルをダウンロードし、メディアボックス内のキャラシのページで「TRPGスタジオから読み込む」→テキスト欄にテキストの中身をコピペして「テキストから読み込む」をクリックしてみよう。

 変則テーブル内の特定の項目をチェックしておけるので持っている特技の確認や苦手な特技の設定も行える。実際のセッションでは2つの特技間の距離を算出し、判定画面に持ち込むことも可能。さすがに最短特技までは算出しないが、簡単な判定なら十分できそう。

特技表

特技表2

<マップ>

 背景まわりに触れるのはやはりGMのみ。背景として一度に表示できるのは1枚のみ
 背景のサイズ比を調整できない&チャットウィンドウで画像下部が埋まるため、どどんとふ用のデータ管理ができる背景素材をそのまま流用するのはあまり向かなさそう

 背景画像は学校、図書館、それらの時間帯違いが数パターンなど、現代日本ベースの画像がデフォルトでかなりの数が用意されている。これらを使いやすいシステムであればだいぶ臨場感が出そう。
 背景の切り替えは画像を選択して背景変更ワンクリックで済む。簡単。フェードインなど切り替え方は4種類から選べる。
 シーンは3つまで登録できるので準備しておいて切り替えることも可能。

 背景を変更するとログに画像が残る。なぜだろう。あまり頻繁に切り替えるとログ画面が画像で埋まってしまうので注意。

 背景画像以外で背景に設置できるのはテキストとアイテム画像のみ。これらもGM専用。アイテムには文章を記入しておくこともできないので共有メモ代わりにはならなさそう。
 ダンジョンの構造をマップで表示、パーティの現在地をアイコンで管理、くらいであればできるかもしれない。

<その他>

 GM用にシナリオを準備して貼っておく欄がある。情報項目など定型文で済む箇所は準備しておくと少し楽かもしれない。こちらも文字検索が可能
 ただし、改行する度に強制的に別の文として扱われる。文章量のバランスには注意したい。

 BGMと効果音は1つずつ使用できる。こちらもさわれるのはGMのみ。部屋内の音については各自で音量調整、ミュートできる。

 キャラクター、画像やBGMなど、使用する素材は全てメディアボックスで管理する。このメディアボックスの概念と和解するまでは若干戸惑うところがある。が、理解して素材を登録してしまえばあとはだいたい直感的に操作できると思う。

メディアボックス

 素材の登録・管理は全てセッション会場の外で行うため、準備は事前に済ませておいて卓が始まったら卓の進行に専念する形を推奨している印象がある。入室したらもうずっとカメラが回っている感じ、といえば良いだろうか。このスタンスは好みが分かれるかもしれない。

 繰り返し書いてきたように、GMとそれ以外の参加者で持っている権限がかなり違う。PLは自分のPCの扱いに専念できる反面、GMの負担がかなり大きそう。

GMとPLの比較

 GMとPLの比較表。公式サイトより参照。


【最後に】

 ノベルゲーム風に臨場感のあるセッションをやりたいのであればかなり良いと思います。あまりややこしいデータを扱わないで済むシステムで一度遊んでみたいと思いました。CoC向きのようではありますが、サイフィク向きのテーブルも実装しており、他のシステムもこれからもっとやりやすくなるのではないかと期待しています。

 TRPGスタジオはPixivFANBOXで支援を受け付けているようです(月額500円)。支援をするとプレミアム会員扱いとなり、様々な容量拡大の特典も受けられます。応援してみようかな、と思った方はぜひ。

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