若者の悩みに向き合う〜村上臣氏、佐俣アンリ氏〜
10/17(土),18(日)に開催予定のWEIN STUDENTS SUMMITのプレイベント(第7回)が10/2(金)に行われた。今回の登壇者は、36歳という若さでヤフーの役員に就任し、現在は転身し、世界最大のビジネスSNSを運営するリンクトイン日本代表を務めていらっしゃる村上臣さん(画像最上段真ん中)と、リクルートにてモバイルコンテンツの事業開発などを担当し、その後同社を退社され、ヴェンチャーキャピタリストとして活躍されている佐俣アンリさん(画像最右上)だ。テーマは「あなたの悩みに本気で向き合う相談企画〜世界トップの外資CEO × 若手No.1のベンチャー投資家〜」である。
最初の相談者は、織田さんだ。質問の内容は
「高齢化の中で医療系の起業をし、問題解決をしていきたい。学生として企業したいという思いもあるが、もう1歩勇気が出ない。学生の間に企業した村上さん、起業家を見てきた佐俣さんが考える、一歩の踏み出し方や流れを教えて欲しい。」というものだった。
これに対し、佐俣さんがまず答えた。
「自分の場合、周りが起業していた。ある程度意識して自分をそういう環境においていた。人に流された方がいいと思っている。すごくいい活動をしている人に囲まれていればそっちに迎える。いろいろなモチベート方法はあるが、自分がなりたい人の中に混ざっていけば良い。」
夢を持っていてもなかなか実現に向かう一歩を踏み出せない人はたくさんいる。自分がどのようになりたいかを考え、実際にそうなっている人たちの中に自分を置いてあえて彼らに流されてみる。これなら挑戦のハードルが格段に下がるであろう。やはり”環境”の果たす役目は大きいのである。
代わって、村上さんの答えはこうだ。
「自分も志を持って起業したわけではない。気づいたら会社を作る羽目になっていた。大学時代は親の都合で仕送りがなく、効率よく金を稼ぐ方法を探していた。その時に趣味でやっていたプログラミングが儲かることに気づいた。税金などがややこしくなった時、大学の友達に声をかけてもらった。向こうはネットワークがあって技術はなかった。そこからだんだんお客さんが会社でなければ取引できなくなり、会社を作らざるを得なくなってしまった。周りの環境も大事だし、小さくても何か始めてみることも大事だ。企業は社会貢献をしてお金を稼ぐのだから、いかにお金を稼ぐかが重要。小さいことでも、何か人と違うことをやってお金を稼ぐステップを踏むといいのではないか。」
このWEIN SSのコミュニティも5000人を突破している。コミュニティが出来上がるメリットは人と繋がれることだ。自分がチャレンジしたいと思った時、他者との繋がりがあればとても大きなアドバンテージとなるだろう。挑戦してみたいことがあってもなかなかWEINのようないわゆる"意識高い系"の団体への参加を躊躇している方もたくさんいらっしゃることだろう。確かにハードルは高く見えるかもしれないが、ぜひ飛び込んでみてほしい。小さくても大きくても、その挑戦を後押ししてくれる仲間がここにはたくさんいる。成功に大きく貢献できるコミュニティなのではないだろうか。
次の質問者の田邊さんは、以下のような質問を投げかけた。
「佐俣さんの本は熱をテーマにしている。熱や思いがあってもうまく伝えられていない人がいる。彼らはどうやって熱を伝えれば良いのでしょうか。」
佐俣さんはこう答える。
「インターフェースと自分の中での熱は別々だ。学生イベントであれば上手に喋る人が脚光をあびるが、彼らが活躍するというわけではない。プレゼンの上手い人間はそれほど必要ではない。この前話し込んだ人は一番最初に手書きの手紙を書いてきたのだが、これはすごく熱を持っている、これが”熱”だと感じた。話し上手な人に振り回されない方がいい。」
村上さんはこれに対してこう付け加える。
「熱は大事だと思うが、起業は輝いている人が表に立つからみんな勘違いしている。メディアで見ているのは本当に上手くいったごく一部だ。すごいのは、地味なことを毎日やりきった人だ。ぱっと燃え終わるのではなく、起業して5-10年続ける熱を自分の中から生み出していけるタイプが良い。周りの状況に浮かれず、10年成功するまで諦めずやりきると思えるものがあるかどうか。熱はいかに共感してもらえるかどうかで、熱の中には人を惹きつける要素が必要だ。ワンピースのルフィは共感を生み出して目標を持ってチームを生み出している。このような表現が必要だ。」
確かに、キラキラした熱意を以て人を動かすことに重きを置きすぎることは、表面的な見掛け倒しに終わる危険性をはらんでいるように思える。重要なのは堅実さ、何かをやると決めたらやるという強い意志、そして何より、自分が本気で向き合える夢を持っているかどうかなのではないだろうか。もちろん、人に何かを伝えるためにはある程度の伝える力が必要ではあるが、それよりも大事なものがあるということなのだろう。
次の質問者は箕島さん。彼女の質問はこうだ。
「自分はネガティブな性格で、失敗して人に迷惑をかけることや、頑張ったが周りに悲観的な意見をもらうと自分はダメだったなと思ってしまう。落ち込めば切り替えられない。挑戦しようとするとき、挑戦したい気持ちと苦手な気持ちがあって迷ってしまう。これまで起業・経営する中、苦しい時期や受け入れにくいことが起きたとき、どう受け止めて前に進んだのか。」
これに対してお二人の答えを並べよう。
村上「人生いろいろある。自分も苦しい生活を過ごす時があった。辛いときこそ笑うことが大事だと思う。そうすれば自然と辛いことがおかしくなる。仕事がうまくいかないときは皿洗いやデスクトップの整理など、小さいことを少しずつすると気持ちが整理される。また、周りになんでも話せる人(メンター)がいると強い。意外と人のことを人は気にしていないのだから、ちょっとでも自分のやってることに誇りを持とう。どんなバイトでも給料をもらう。払ってくれてる人は価値を感じてくれている。そのこと自体に素直な自信を持つことが必要だ。」
佐俣「自分という生き物を客観視し、自分の気持ちが上がっているか下がっているかをよくわかってあげることが大事。ジェットコースターに乗っているようなもので、突然の上下が辛い。それに乗っている自分とそれを観察する自分の二軸に分ける。二面の自分を見ると気持ちが楽になる。自分を甘やかすことと可愛がることは別だ。何かがうまくいかないときは自身が失われるから、掃除や筋トレをお勧めする。眼の前でやってすぐフィードバックが来ることや、少なくともいいことが必ず起こることをしてほしい。人間ダメなときはみんなダメなのだから、人間はどうしようもない時があるということを認めてあげること。」
どんな人間にもうまくいかないことは絶対にある。そのような時にこそ自分を客観的に観察すること、または笑って自分の気持ちを好転させること、掃除など即時にフィードバックがもらえる小さなタスクをこなすことを重要視するというアドバイスはぜひ頭に留めておきたい。なぜなら、人間は自分の気持ちに正直な生き物で、気持ちが沈めばとことん沈みがちであるからだ。しかし、そのままでは前に進めない。前に進むためにもまずは行動すること、自分を客観化すること。これはとても示唆的なアドバイスであろう。
次の質問は受験生の愛場さん。
「大学受験で決断しないといけない。お二方にも決断が必要だったと思うのですが、決断をする時に意識していたことはなんですか?」という質問だ。
佐俣さんは以下のように答える。
「自分が大事にしているのは直感。感覚的に思っていることを大事にしている。なぜよく思ったかを後ろから言語化する。」
確かに、一瞬で直感的に好意を持つことに明確で論理的な理由などない。これは感覚と理性の相容れない部分であろう(恋愛のようなものだろうか(笑))。直感的に好きになった後、なぜそれが好きなのかをじっくり考える。このプロセスはとても人間の性質にあっているように思える。
対して、村上さんは
「選ぶのは楽しい、ワクワクする方と決めている。いくら考えても悩むときは悩む。それをやったら5-10年後どうなっているのか、10年後に成長している自分に会えるように考える。今までにあったとても辛かったことも、あの時頑張れたから今の自分があるのだと思える。決断するときは背伸びしてもギリギリ届かないくらいの目標を立てて頑張る。人間は成長するときが楽しい。ついつい動いちゃうようなワクワクが必要だ。結局決断の責任は自分にある。」
と答えた。未来の自分を想像した上でワクワクする方を決めるというのは、決断を”楽しむ”上で重要なことではなかろうか。
次の質問者の山田さんは、以下の質問をした。
「経験のない若手がどう勝負するか。自分のやる気に経験がついてきていないと実感している。一番若い人材が勝負できるところがあると思うので、そこを教えて欲しい。」
村上さんは
「同じ実力でも個性がある。自分が誰かと仕事をするとき、その人がやっている仕事でどれだけ成果を出し、プラスアルファの価値を提供できるかを見る。今やっていることに120%の成果を出せていない人に次を任せない。今やっていることを合格点80-90でこなしている人はそれに見合った仕事をアサインする。」
と答えた。これに佐俣さんもとても共感するという。
「日本は年功序列を重んじる。しかし自分は若い頃それを楽しんでいた。おじさんに好かれる。中途半端なポジションの人は面倒だが、本当にすごい人は若い人がどうやって成り上がっていくかを知っているから、一番トップの人と仲良くなることでドミノだおしのように中途半端な人が倒れる。本当にすごい人は若い人の才能を本当に見てくれる。」
仕事でどれだけのプラスアルファの価値を提供できるか、どれだけ”本物”に好かれるか。これはうまく社会を渡っていく、もしくは評価されていく上でとても重要なことだろう。どうしても、私たち若者はどんなことでも真っ向勝負で成り上がろうとしがちだろうと思う。だがそうではなく、いかに自分が抜きん出るかを考えて勝負していく勝負師としての側面も持っておかなければいけないのだろう。
次の溝口さんによる質問は、佐俣さんに対してのもので、
「どのような若者に投資したいですか」
というものだった。これに対して佐俣さんは
「今年、自分が好きなことをやっていたら会社ができたという学生チームに投資した。Just For Funってすごい魅力的だ。」
と答える。これに対し、村上さんは
「我々は若い人を応援したいと心の底から思っている。そこをうまく利用してほしい。基本的にはそんなに畏まらず、適切な答え方で熱を伝えてほしい。よくわからないけどやりたいとかもあると思う。自分は120%の力を常に出し続ける人が好きだ。相性も大事。」
投資家の皆さんの生の思いを知ることは、挑戦しようとする若者にとってとても有意義だ。ぜひ挑戦を志す若者にはこれを心に留めておいてほしい。
最後に、二人から一言ずつコメントをいただき、エンディングとなった。
村上「若いのは力。若いだけで価値がある。社会人になってからだと怒られる。学生の間はボーナスタイム。これを最大限に使って最大限に利用しよう。日本は働くことは我慢・辛いというイメージはあるが、自分は今楽しく仕事をしている。働くのが楽しいし、働くことで世の中に貢献しているという実感が得られる。働くことを通じて楽しいと思える人が1人でも増えてほしい。」
佐俣「今はコミュニティに参加して頑張るぞって思うと思うが、みんな普通になる。みんな普通に就職して普通の人になっていく。人間は簡単に普通になれる。気がつくと夢は忘れられる。どうやったらそうならないかというと、挑戦している友人ともっと繋がることだ。お互いがやりたいことをやっているかを監視しあっていると楽しいと思う。自分がやりたいことをやれているって幸せ。日本は戦争も餓死もない。このような国に生まれたことに感謝し、やりたいことを一生懸命やるのが大事だ。」
これにはとても心を動かされる。若いうちに何かに果敢に挑戦していくことが大事であるし、働くことを楽しめるような人なひとになりたい。しかし、何も意識していなければ普通の人間となり、普通の社会人生活を送ってしまう。WEINという団体に入ったことも無駄となってしまう。これはWEINに参加する我々にとって最悪の事態ではないか。同じ夢を持つ人たちが互いに監視・刺激しあい、お互いにとって有意義な関係を作っていくとともに、将来の自分たちの活躍をある意味”確信”し合うようなコミュニティを作り上げていきたいものである。
WEIN STUDENTS SUMMITは、10/17,18の2日間だけのサミットではない。毎週金曜日、各界で活躍される方々をお招きして行われるプレイベントも見どころのひとつだ。このプレイベント中、登壇者のお話への感想は全てTwitterでハッシュタグ(#WEIN学生サミット)をつけて呟かれるため、参加者同士の繋がりもできやすい。また、FaceBook やSlack、Messengerを通じて、WEINに参加している自身の大学や他大学の学生たちとの交流ができるクローズドコミュニティも提供している。このコロナ禍で他大学とのつながりを持てないなか、このようなコミュニティが手に入るのも利点だ。読者の方々にはぜひWEINに参加して交流の輪を広げつつ、登壇者の方々のみならず他の学生メンバーの話を聞く中で自分の夢や目標をさだめていって欲しいと思う。皆さんの参加を心から楽しみにしている。
WEIN東京大学支部 高松京介
各種URL
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WEIN公式Twitterアカウント
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