ogre you assholeを音源でしか聴いたことがなかった人がライブに行って驚いた話


2007:advantage , flag

私がogre you assholeの存在に気づいたのは、2007年頃のことである。

通っていた高校の後ろの席に座っていたクラスメイトに「YouTubeって知ってる?」と聞かれたのもこの頃だったと思う。

YouTubeを使い始める前までは、ロック雑誌のインタビュー記事や、巻末に載っているディスクレビューを読んで気になるものを地元のレンタルビデオ店で探して視聴するという方法で掘っていた。が、実際に聴いてみると、文字で読んだのと全く印象が違ったりして、うまくいかないことがよくあった。

YouTubeを知ってからというもの、飛躍的に開拓効率が上がった。どんなふうに検索したのか覚えていないが、適当に邦楽ロックのMVを再生しているうちに、アドバンテージに繋がったのだと思う。

冒頭、印象的なギターリフから始まり、全体的に2本のギターのアンサンブルが際立っている。

映像はほぼ白黒で、何もない白い空間で4人組のロックバンドが演奏している。音に合わせて忙しなくカメラが切り替わり、墨汁のような黒い液体が要所要所で飛び散ったり、滲んだりする。

歌詞は外国語のようにも聴こえるが、よく聴くと日本語である。意味はわからないが、口に出して真似してみると妙に気持ちいい。

理解不能だが中毒的な音と映像の世界に理由なく惹かれた。

現在のogreは意味が通る言葉で不条理な世界観を浮かび上がらせ、時には深刻な社会情勢と結びつけて深読みされたりして、一定の評価を得ている。

対して、この時期は、あえて意味を持たせないよう語感だけで言葉を選んで並べているようにも聴こえるが、よくよく歌詞を読んでみると、床に謎の湿った跡があったり、すり減った繭から何かが孵ったりしていて、ちょっと不穏でシュールな世界観はこのときから変わっていない気もする。

当時の私はバンド名をこんな風に読んだ。
オグレ、ユー、アショール?

電子辞書を引いた。

ogre:鬼のような
you:おまえ
asshole:くそったれ

ますます謎が深まった。

当然、他の動画も芋蔓式に再生した。

遊園地のメリーゴーラウンドの前で演奏する4名のカクカクした映像。こちらも2本のギターの存在感が強い。相変わらず歌詞の意味はわからないが、何故か中毒的。

アドバンテージ以上に繰り返し再生した記憶がある。こちらの"フラッグ"という曲は、三部作以降のライブでも、たびたび演奏されている。

最寄りのレンタルビデオ店には、"平均は左右逆の期待"、"アルファベータvs.ラムダ"の2枚のアルバムがあった。この2枚を断続的に10年以上聴くことになる。

それから暫く経って、フォグランプというアルバムや、シングルが数枚発売されたようだが、何故かあまり思い出がない。

2011:homely

そして2011年、音楽性がガラリと変わるきっかけとなった三部作の第一作目、homelyが発売された。

私は、隣町の駅ビルにあったCDショップで試聴した。
ogreの新作がでてる!と意気揚々とヘッドフォンを装着していきなり聴こえてきたのは、執拗に繰り返されるギターの不協和音である。
聴いていると心がザワザワしてきて早送りのボタンを連打する。
と、女性の朗読が聴こえてくる。しかも後ろではムーディな管楽器の音が鳴っている。
なんだこりゃ?一瞬聞いて、かなり面食らう。
女性の朗読が終わる前に耐えきれなくなり、停止ボタンを押す、、、。
何だかとても怖くなり、逃げるようにその場を離れた。
(今、朗読部分を読んでみたら、横尾忠則の短編小説集"ぶるうらんど"に収録されている"アリスの穴"に世界観が似ていて驚いた)

その後、新作を追うことはしなかったが、先に述べた過去作2枚をたまに思い出したように聴いてみたり、ボーカルの出戸氏が影響を受けたというmodest mouseやdeath cab for cutieなどを聴いてみたりしていたので、全く興味を失ったというわけではなかったと思う。

2014:rhizome library

ogreと再会を果たしたのは、2014年の愛知県岡崎市で行われたリゾームライブラリーである。図書館で行われた変わったフェスで、group_inou目当てで1人で参戦した。

他には青葉市子や、neco眠る、ミツメなどが出演していた。

ここで初めてogreのライブを体験した。
昔好きだったし、聴いてみるか、ぐらいの軽い感じで後ろの方で聴いていた。

homelyでは、管楽器の音が聴こえてきたが、ここでは、ギター、ベース、ドラム、ギターボーカルの4人体制である。

演奏が始まると、聴き慣れた音源とは全く異なるが、なんとなく聞き覚えがある。それまであまり気にしていなかったドラムに目を引かれる。

ライブの中盤以降、ようやく、YouTubeで繰り返し聴いた"フラッグ"が演奏されていることに気づいて仰天、クラブミュージックのような曲と曲のスムーズなつながりに痺れ、ライブの醍醐味を知った。

とはいっても、フラッグとロープが演奏されて衝撃を受けたことだけ強く覚えているが、その他はよく覚えていないので詳しく描写することができない。
(以下は、同時期のライブ映像)

ライブ後、メンバーが物販に立っていた。私がTシャツを買い求めると、ギターの馬渕氏が、仙人のような風貌からすると意外すぎる笑顔で応対してくれたのだが、私はコンビニで買い物するのと同じように無表情で商品を受け取ると、そそくさとその場を去った。

その後、homely以降の作品も全て聴き漁り、ライブにも定期的に足を運ぶようになったのだった。


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