逆命利君

 劉向という方が編纂した『説苑』という古典に載っている言葉です。端的に言うと結果的に君主や上司の利益になるのであれば、命令に逆らうことも必要だという意味になります。タイトルが該当する部分を引用すると

命に従いて君を利する、これを順となし
命に従いて君を病ましむ、これを諛(ゆ=へつらう、機嫌を取ること)となし
命に逆らいて君を利する、これを忠と謂い
命に逆らいて君を病ましむ、これを乱と謂う
となります。深いっすね。

 上司の意向に沿わないと感じながら自分の考えを述べることはとてもエネルギーを必要とします。ましてや指示や命令に対して明確に異論を唱えるなんてなるとさらにハードルが高いですよね。わかっちゃいるけどそんな簡単に言うな!的な。しかし、結果的に上司のためになると考えるのなら、そして究極的な「君」であるお客様のためになると信じるなら、そのハードルは飛び越えなくてはならないものであり、それが社会人としてあるべき理想像だと思います。

 『説苑』における逆命利君のくだりにはこんな言葉が続きます。

君過ちあるも諫諍(かんそう=目上の人に言い争ってでも間違いを改めさせようとすること)せざるは、まさに国を危うくして社稷(しゃしょく=国家)を落とさんとす

 目上の人の明らかなミスにへつらい媚びること(諛)ばかりで見ないふりをしていたままでは、いずれ大きなトラブルが起こるぞと。本当にまずいと思うことは違うと言えるようになれということですね。ミスの程度にもよりますが、言う部下側も自信と覚悟が必要になりますね。もちろんこれを意識しすぎてあれもこれも違うとイキってしまうのは論外ですよ?逆に上司側も、部下の指摘に耳を傾け自身に過ちがあれば素直に正す謙虚な心や柔軟さも求められます。部下を持つような立場となるのであれば、こんな上司になりたいものです。

 逆命利君。4文字の言葉ですがとても奥が深いです。

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