METAL WILL DESTROY ALL EVIL!

都心で暴れている異形のモンスターに逃げ惑う人々。
警察や軍が応戦するがまったく歯が立たない。
逃げ遅れた母子にモンスターが襲いかかる…!

絶体絶命のその時、ワゴンで乗り付けた青年が割り込む。
モンスターに立ち向かう青年を警官が慌てて制止する。
「俺たちだって歯が立たないんだ!丸腰なんて死ぬ気か?」

「お巡りさん、武器なんか必要ないさ。俺には…(ギターを構える)…メタルがある!」

青年がギターをかき鳴らすと稲妻が轟き、ハヤブサ頭の鳥人が現れる。
「準備はいいか?」「やるぜ!」
青年のギターに合わせ、モンスターに殴りかかる鳥人。

「METAL WILL DESTROY ALL EVIL!」

青年の名はJAKE。鳥人はMURDER FALCON(通称Murf)。
コレは2人の鋼の心の物語である。

……そんな最高のオープニングから始まるコミック「MURDER FALCON」(Daniel Warren Johnson著)
「Heavy Metalの力で悪と戦うアメコミ」って事で少し話題になったから知ってる人もいるかと思うけど…コレがまた素晴らしい作品だったのよ。
その設定はウケ狙いでも冗談でも何でもなく、作者はガチのメタルマニア。
作中のバンドのアルバムを実際に自分で作って公開してたりもする。
冒頭の作者のメッセージによれば、(要約)11歳の頃からギターを始め、ツラい事や困難にブチ当たると何時間でもギターを弾く。
別に全てを解決してくれるわけじゃないけど、ちょっぴり負担を軽くしてくれた。
それがメタルを愛する理由だ。
自分たちを打ち負かそうとする困難に対して、楽器を手に取って敢然と立ち向かうんだ!

…コレが作品の重要なテーマになってて、メタルに限らず「自分の心の中にある困難に立ち向かう為の支え」がある人には刺さるお話だと思う。

とてもとても良いコミック…なんだけど、日本語版が出ていない…まぁ絵を追ってわかる単語を拾い読みするだけで充分にお話は入ってくるんだけど。むしろ細かい設定を飛ばして流れだけ追っていたので、終盤の展開が衝撃的だった。
…そんなわけで以下のストーリーはフワッとした解説であって、ちゃんと訳すと違うかもしれない。

冒頭の戦いから2週間前…ベンチに座り落ち込むJAKE。元バンドメンバーのJOHANNに車で送ってもらいながら音楽活動を辞めた事を告げる。
自宅に戻ると突如モンスターが襲いかかってくる。とっさに掴んだ壊れたギターが光に包まれ元に戻り、謎の鳥人が現れモンスターと戦い始める。しかし徐々に圧されてくる鳥人。
「ギターを弾いてくれ!何でも良い!」
困惑するJAKEに鳥人が叫ぶ。
「君はギタリストなんだろう!」
「…OK!」

その一言で吹っ切れたJAKEのギターに合わせモンスターを打ち倒す鳥人。

鳥人…MURDER FALCON(Murf)の話によれば、モンスターを操るMAGNUM KHAOSに対抗できるのは音楽の力だと言う。そしてその力はMurfのように具体的なカタチを持って敵と戦うらしい。
そこでJAKEはバンドの旧友たちの元を訪れる。
ベーシストのJOHANN、相棒はマンモスのHALFORD。
ドラマーのJIMI、相棒は海龍のALEKSAR。
JAKEのバンド、BROOTICUSが再結成される。

(病院で検査結果を聞くJAKEの回想シーンが何度か挟まる)

更に別の場所でMAGNUM KHAOSと戦っていたブラックメタルバンドWHISPER WOODのギタリストHJELMDAR(相棒は樹人のASLAUG)が現れ、ジャンルの垣根を超えてJAKEのバンドに加入しMAGNUM KHAOSの城へ案内する。
新生BROOTICUSが戦いを挑むもMAGNUM KHAOSの力は強大で、JAKEは重傷を負いギターは破壊されてしまう。
絶体絶命のその時、HJELMDARが捨て身でみんなを逃す。

傷付き撤退する一同をトーキョー・フィルハーモニー・オーケストラのショーヘイ・タナカが迎え、対抗組織T.M.D.F.(トーキョー・ミュージカル・ディフェンス・フォース)のキトリ・イトーに引き合わせる。情報量が多い。
JAKEの治療とギターを修復している間、みんなの死闘が続く。
(再び病院の回想…MAGNUM KHAOSと対話するJAKE)
そしてJAKE &ギターの復活。JAKEは自分の運命を受け入れ、立ち向かう。

最終戦、世界中の人々…ジャンル問わず、子供の玩具の演奏に至るまで…の音楽の力が集まる中、1人の寝たきりの男の姿が。
彼はジェイソン・ベッカー。
今やすっかりテレビタレントになったマーティ・フリードマンと80年代にバンドを組んでいたギタリスト。
しかし90年代にALS(筋萎縮性側索硬化症)を発病、眼球の動きだけで意思を伝え音楽活動を続けている不屈のヒーロー。
この漫画のテーマに最も相応しく、他ジャンルの人に勧める時に説明が必要な人(だからここまで長々と書いた)

そしてJAKEを迎えに来るある人物…その人とは…

━━結末は自分の目で確かめよう。
1冊にまとまっているし、オイラの様に絵を追っていくだけで充分にわかるくらい見せ方が上手い。
メタルネタだから…と読んでみたけど、実際のところは困難に立ち向かう王道の成長物語だった。
オイラはギターは弾けないけど、心のギターを掴んで叫ぶのさ。

メタル神も言っている。
KEEP THE FAITH!

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