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ガソリン車はなくなる?


アメリカ国内でEV(テスラ)を運転したことがある。スポーツ走行には興味ないので普通に走らせのだが、普通に走った(笑)。加速力は凄いと思ったが、「ごく普通の車」というのが正直な感想である。

テスラに関すれば「フェラーリ、ポルシェに匹敵する加速!」という声はネット上でよく見かけるが、ハンドリングに関する声はあまり聞かない。テスラといえどアメ車なので、コーナリング性能などは・・・といったところであろうか。

漫画の「イニシャルD」にテスラが登場していたらどんな扱いを受けていたか、想像したらおもしろい。「イニシャルD」は最後まで読んでいないのだが、アメ車は登場していないような記憶がある。そういえば欧州車もなかった気がする。そうか、走り屋が市販車をチューンアップして峠を攻めるという物語の設定上、「イニD」は国産車限定なのかもしれない。

ポルシェやフェラーリは実際に SUPER GTなどのレースでも使用されているからチューンアップできるのだろうが、テスラはチューンナップ出来そうな気がしない。いや、モーターを高出力なモノに変えたり足回りをいじってコーナリングを・・・いやいや、軽量化こそが最大のチューンアップなんだからバッテリーを半分に減らして・・・このままだと走行距離が不足するから、レンジエクステンダー的に小型エンジンを搭載して・・・いっそのことバッテリーなしにしてE-POWER方式で・・・だったらモーターもなしにして、V8エンジンを搭載すれば・・・・ということで完成です。V8エンジン搭載テスラ3000ターボ!


そもそも乗用車とはなんだろう。4~5人乗れて、時速100キロ+αで巡航可能で、ある程度の航続距離があればいい。その燃料がガソリンであろうが水素であろうが電気であろうが関係ない。

そう考えた時、ガソリンを燃料とする乗用車はすべての条件を満たす優等生である。地域によってはガソリンスタンドが減っているが、それでもガソリンは比較的容易に手に入る。いや、世界レベルで見てもガソリンはどこでも手に入る手軽な燃料・・・というか人類は長い年月とお金をかけて世界中でガソリンが使えるようなシステムを築いてきたのである。

「ガソリン高いなぁ」と言う人はいても、「ガソリンって不便だよな」と口にする人を見たことがない。ガソリンの元となる原油が枯渇しているわけでもない。しかし「CO2は地球の温暖化をまねく。CO2の排出を減らさなければいけない」という理由でガソリン車は悪者扱いされるようになった。

そこでガソリンの代替物、CO2を出さないクリーンエネルギーとして電気や水素に白羽の矢が当たる。技術的、コスト的な問題があるが水素はガソリンの代替になりうると思う。国が音頭をとって水素をすすめ、水素で走る車や水素燃料電池車に補助金を出し、水素ステーションを全国に配置すれば水素はガソリンに取って代わるであろう。

ただしここで言う「国」とは日本のことではなく、「日本を含む世界中の国々」のことである。残念ながら世界はこの流れではない。日本だけが単独で「水素化」を進めたところで「ガラパゴスケータイ」の二の舞となることは目に見えている。

対して電気はどうであろう。欧米の自動車メーカーがこぞって「20XX年にはガソリン車の販売を中止し、EV化します」と発表している。日本のホンダも「2040年までにすべての新車販売をEVとFCV(燃料電池車)にする」ことからも、世界的な流れは間違いなく ガソリン⇒EV である。

確かにEV車は走行時にCO2をださない。4~5人乗れるし、時速100キロ以上で走行可能である。航続距離も一般的な使用においては必要十分であろう。にもかかわらず日本で売れていないのは(値段を除けば)充電時間・充電設備といった問題があるからだろう。

しかしこれも時間が解決してくれる。バッテリー性能や技術はドッグイヤー的に進歩する。1年後には超高速充電が可能になっているかもしれない。エコカー補助金があったんだから同じように税金を投入してマンションや商業施設、コインパーキングに充電設備を標準装備すればいい。

「冬場の雪国でどうするの?」「高速道路で渋滞に巻き込まれたら?」といった電池切れの懸念も、バッテリーの性能、容量があがれば解決する。こうなるとガソリン車を捨ててEVにしない理由がない。EV車のほうがガソリン車よりも製造時のCO2排出量が多い、とか発電所から出るCO2と車から出るCO2の総量を比較した場合・・・といった声もあるが、EV=エコという流れが世界的に出来上がってしまったのだから覆すことは難しい。

価格問題も「規模の経済」によるコスト低減により解消されるであろう。

こうなるとあとは「どうやって発電するか?」である。乗用車の完全EV化により、電力供給量を倍増しなければならないことは素人でも容易に想像できる。これこそがEVにとっての最大の問題ともいえる。EV=エコを掛け声にしてきたのだから発電方法もエコでなければならない。

理想としては太陽光や地熱、風力、水力といったクリーンエネルギー発電。火力発電も石炭はX、石油は△、天然ガスなら〇といったところか。原子力発電はCO2に関してはクリーンだけど、放射性廃棄物を考えると・・・・・国によって判断の分かれるところであろう。

欧州はいい。偏西風があるので効率よく風力発電が出来る。地続きなので多国間同士で送電できる。フランスという原発大国があるので、最悪の場合はフランスで原発を増設するという奥の手がある。政権によって原発政策が変わる可能性はあるが、発電比率は下がっているもののフランスは原発推進の方向で動いている。

欧州最大の水力発電をほこるノルウェーも忘れてはならない。現在は原発はないが、「火力に比べれば原発はクリーンなエネルギー」という意見が国民の多数を占めるくらいだから電力不足がひっ迫すれば原発新設となる可能性はある。

スウェーデン、ベルギー、イタリア、ドイツは脱原発政策を取っているが「不足分は輸入する」という保険があるからこそ出来る政策ともいえる。欧州はEV化によるブラックアウトは回避できそうである。

ロシア、中国は完全に原発推進派。アメリカも新設こそしていないが基本的には推進派といえる。国土が広いので放射性廃棄物の問題もクリアしやすいという背景があるのかもしれない。こちらも独自でブラックアウト回避可能だ。

台湾は2025年、韓国は2080年を目標とした脱原発宣言をしている。地理学的、国土の面積的に日本と同じ条件下にあるような気がするのだが、どうするつもりなのだろう。

さて、日本である。福島の原発事故以来、新設どころか既存の原発の再稼動も難しい状態が続いている。太陽光、風力、水力、地熱といった自然エネルギーを利用した発電量は全体の23%(2020年1-6月)に過ぎない。ソーラーパネルや風力発電施設を国土のいたるところに増やせればいいのだが、台風のある日本ではそうもいかない。

そんな状況でEV車用の電力需要が増えた場合、原発なしでやっていけるのであろうか。真夏日でクーラーの使用量が30%増えた・・・といったレベルの需要増加ではない。これまでガソリン車のエンジンが作り出していたエネルギーを、新たに電気という形で作り出さなければならない。

トヨタの社長が「夏の電力使用のピーク時に乗用車400万台が全部EVだった場合は電力不足になり、解消には発電能力を10~15%増やさねばならない。それは原発でプラス10基、火力発電ならプラス20基必要な規模」といっていたが、まさにその通り。これはトヨタ延命のための政府や国民に対する脅しではなく、事実なのである。


日本はまだいい。国民の負担(いろいろな形での税金、電気料金の値上げによる節電など)は増えるが ガソリン車⇒EV は不可能ではない。

しかしお金のない国、経済的に貧しい国はどうするのか。既存のガソリン利用のシステムをわざわざ捨て、EVのために新たに再投資するのか?EV化の旗振り役をした中国やEU諸国、それに続いたアメリカ、日本が「地球温暖化防止」のためにサポートするのか?それとも「我々は地球温暖化防止のためガソリン車を禁止にしました。でもあなたたちがEV化するかどうかは関知しません。知恵と少しばかりのお金は出しますので、あとはご自由にどうぞ」といって放置するのか?

普通に考えれば後者であろう。中国が自国のEV車を売り込むために資金提供をする可能性もあるが、チャイナ・マネーも無尽蔵ではない。


こう考えるとガソリン車はなくならない。いくら大手自動車メーカー数社が「ガソリン車はつくりません」とEV化シフトを声高に叫ぼうが、ガソリン車の需要がある以上どこかのメーカーが作り続けるはず。ホンダが「2040年までにすべての新車販売をEVとFCVにする」と発表したのだって、ホンダ(車)の主要マーケットが日本、中国、北米だからに過ぎない。

TOYATAだっていずれはハイブリッドガソリン車⇒EVへとシフトするであろうが、東南アジア、中近東、アフリカ、中南米・・・といった完全EV化の難しい国が存在する間はハイブリッドを主力としたガソリン車を作り続けるでしょう。コストや整備性のことも考えてハイブリッドではないガソリン車も残るはずです。


走り屋のみなさん、安心してください。ガソリン車は絶対になくなりません。TOYOTAやダイハツ、スズキ、三菱といった日本・中国・北米・欧州以外にもマーケットを持つメーカーはガソリン車を作り続けます。ただその車を日本で購入できるのか、ガソリンが入手できるのかは・・・不明です。ガソリンが闇取引されたり、リッターあたり10000円とか「時価」の時代がくるかもしれません。


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