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「危ない!」と思ったらアクセル全開?


車は急に止まれない。運転中に「危ない!」と思ったら迷わず急ブレーキ。

全体重をかけて踏む。「踏む」というよりは蹴っ飛ばす。それがベスト。最近の車にはABSがついているので、タイヤがロックしてコントロールを失うこともない。

注)シートベルト・チャイルドシートは必ず使用しましょう。上記がその理由の1つです


道路やタイヤの状況、車の性能にもよるが、60km/hで急ブレーキをかければ44mで停止することが出来る。

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zurichより



「急ブレーキだけでは間に合わない」と判断した場合はハンドル操作で障害物を回避するのもあり。ABS装置がついていればブレー中でもハンドルが効く。

とはいえ基本は急ブレーキ。ハンドル操作だけで危険回避が出来るのはF1パイロットやラリーカー・ドライバーといった一部のプロレーサーだけ。後から「ブレーキを踏まなかった」として過失を問われる可能性もある。


ここまでは誰もが知る一般常識なのだが、世の中にはこの常識とは正反対の世界がある。


「危ない!」と思ったらアクセル全開!


それが船舶の世界の常識である。

船舶にブレーキはついていない。いや、ブレーキ的なものはある。プロペラを逆回転させればブレーキ的な働きはするが、車のように急ブレーキとはならない。速度を落としながら水の上をかなりの距離進む。

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明和海運 より



排水量の大きな船(重い船)、積荷の重い船であればあるほど止まらない(慣性の法則)。だから船舶の場合は全力でプロペラを逆回転、減速しながら舵の操作により危険回避する。


参考資料。大型船であっても、急ブレーキはダメでも急旋回ならできる。この映像はおそらく「全速前進・取り舵いっぱい」。さすがに大型タンカーでこの動きは無理だが・・・

  0:50~ 急旋回
 米軍だったら「HARD PORT!」
 自衛隊だったら「とぉぉりかぁじいっぱぁぁぁい」



最近ニュースなどで話題になっている水上バイク。当然この水上バイクにもブレーキはついていない。その機構上、後進もできない。可能な操作は「前進・曲がる」のみ。よって危険回避する方法は「ハンドル操作によって避ける」。しかも推力を失うと舵が効かなくなる(※)ので、アクセルを戻す行為は厳禁。


「危ない!」と思ったらアクセルそのまま。ハンドル操作で危険回避。


これが水上バイクの基本なのだが、一級・二級の小型船舶免許を持っていても案外知らない人が多い。水上バイクは通常の船舶と違って「後進できない」「推力を失うと舵が効かない」という特性を持つので、水上バイク専用の免許(特殊小型船舶操縦士)が必要となる。船舶の中でもかなりの異端児と言える。

船舶免許を持っている人にもよく知られていない異端児・水上バイクの特性など、一般人が知る由が無い。


例えばあなたがこの動画のような「水上暴走族」に遭遇し、不運にもその中の1台があなためがけて猪突猛進、一直線に突っ込んできたらどうしますか?

1 右 or 左に逃げる
2 動かない。その場でそのまま

「船舶は急には止まれないんでしょ?だったら左右に逃げるしか・・・」普通に考えればそうなるが、必ずしも正解とはいえない。その「逃げる」という行為はサッカーのPK戦と同じで、相手の動きを予想しなければならない。予想が当たれば助かるが、外れれば大怪我。最悪の場合、死に至る可能性もある。

「遊泳者を発見したので右に避けようとしたが、運悪く相手も右側に・・・」

と屁理屈を並べ、責任逃れを主張する水上バイク操縦者の姿が容易に想像できる。もし筆者が弁護士であれば、そうアドバイスする。


とはいえ船舶には右側通行というルールがあるので、水上バイクに向かって右側に逃げれば助かる可能性は高い。慣れた船舶操縦者であればとっさの場合、本能的に右に舵を切る。


遊泳者がいるような場所で水上スキーをするような暴走族なので、ルール遵守を期待するのは無理かもしれないが・・・

だからといって「2 動かない。その場でそのまま」 を選択して運を天に任せて神頼み・・・というのもバカバカしい。

あくまでも個人の見解だが、下手に回避行動をとるよりも可能な限り体を水面上に出し、大きく手を振り回し、自分の存在を水上バイク側にアピールして相手に回避してもらうのがベストなような気がする。

「あいつバカじゃないの?」と笑われるかも知れないが、大怪我をすることを考えればどうということはない。

水中に潜ってやり過ごすという手も考えられるが、ジェット噴流で内臓を損傷する事故も毎年のように発生しているので100%とはいえない。



なんにせよ、もし水上暴走族を見かけたらすぐさま陸に上がり、海ならば118番(海上保安庁)、河川ならば110番通報するしかない。海、河川、港湾、岸からの距離等で管轄が違うが、どちらに通報しても必ず対応してくれる。間違っても「管轄外です」といってたらい回しにされることはない。


暴走族は陸上であろうが水上であろうが、見かけたら即通報。相手にするのは時間の無駄。話をして通じる相手ではない。連中にルールを守らせることは、猫に「待て!」「おすわり!」を教えるより難しい。



※ 推力を失うと舵が効かなくなる

水上バイクは船のように舵(ラダー)で進行方向を変えるのではなく、推力となるジェット噴射(水流)の向きを変えて方向転換する。走行中に推力を失うとハンドルを左右どちらに切ってもバイクは惰性で直進を続ける。

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wjs より


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