見出し画像

脱税 ~ローリスク・ハイリターン~


誰だって税金は払いたくない。だからこそ個人・法人は様々な知恵・手段を駆使して合法的な節税に精を出す。


そんな中、大手ゼネコンの元営業部長が 「解体工事会社から現金で約2億2000万円を受け取ったが個人の所得として申告せず、約8300万円を脱税した」 として所得税法違反で在宅起訴された。


多くのマスメディアがこの件を「脱税事件」として取り上げているが、個人的には単純な「所得隠し」のような気がする。確かに2億円を超える尋常ではない額であるが、「会社勤めのOLが週末に近所のスナックでアルバイトをして、現金払いのバイト代を所得として申告しなかった」のと構図は同じなのでは?これでどの程度の罪に問えるのだろう。

もっとも解体工事会社がどういう理由で2億2000万を支払ったかは別問題。賄賂なのか?必要経費だとしてだまされて支払ったのか?はたまた工事利権の関係者対策としての裏金名目?そのあたりは所得税法違反とは関係ないので今回は無視する。

今回の件は「法人税法違反」ではなく、「所得税法違反」で起訴されている。会社ぐるみではなく、元営業部長の個人の犯罪ということになるので所得税法238条にある

「十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」

が適用される。ここのサイトによれば、場合によっては「脱税額を限度として、罰金が増額される可能性がある」らしい。

以上を踏まえ、この元営業部長は最終的にいくらの儲けになるのかを考えてみた。


◆パターン1 所得税隠しが発覚しなかった場合    

  丸まる2億2000万円の儲け   



◆パターン2 所得隠しの行政処分のみで、所得税違反に問われない場合 

 仮装・隠蔽などがなければ「過少申告加算税(15%)」を加算        2億2000万-8300万X115%で 約1億2500万円の儲け

 仮装・隠蔽などの不正事実があった場合は「重加算税(35%)」を加算    2億2000万-8300万X135%で 約1億800万円の儲け


◆パターン3 所得隠しの行政処分+所得税法違反に問われた場合


ここのサイトによれば、脱税のすべてが法人税法違反・所得税法違反に問われるわけではないらしい。が、今回のケースは悪質とみなされて所得税法違反で起訴されている。ということは、最大で「十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金、又は両方」+「脱税額を限度として罰金を増額」となり、「パターン2 重加算税あり」+「所得税法違反」となった場合の収支は 

      1億800万-8300万

で、それでも2千万円以上の利益となる。もっともこれは、解体工事会社から2億2000万円の返還請求がなかった場合の話であるが・・・


うーん、どうも納得がいかない。脱税をしても見つからなければ丸儲け。見つかっても悪質でなければ行政処分(追徴課税)のみ。悪質とみなされて法人税法違反・所得税法違反で起訴・有罪となっても、金銭的には利益は減るがマイナスにはならない。

なるほど、脱税がなくならないわけである。というか、制度自体が「どうぞ脱税チャレンジしてください。失敗したら税金をちょっと多くもらいますけどね」といっているようにしか聞こえない。まさにローリスク・ハイリターンである。


ということでwebmasterからの提案。所得隠しが発覚した場合、申告者が「そんなお金知りませんよ」として所得申告しているんだから、その意思を最大限尊重してその金額を丸まる没収してはどうでしょう。その上で時効になっていない過去の申告をさらに調査し、発覚した余罪に対しても同等の処置を行い、さらに悪質な場合は法人税法違反・所得税法違反で起訴すればいいのでは?


「バレなければ丸儲け、バレても利益が少し減るだけ」じゃなくて「バレたら大赤字、バレたら人生一からやり直し」といった「ハイリスク・ローリターン」のほうが抑止効果があると思うのですが・・・




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?