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マンション投資を「投資」だと思うな。あれは「●●」


サラリーマンが勧誘されることも多い「マンション投資」のことを、「投資」だと考えてはいけません。

あれは●●だと考えるべきです。

今回はそういう話をしようと思います。

損するときはお前だけ

「投資」という言葉の意味は広いので、言葉の定義上は、マンションの一室を買って家賃収入を狙う行為は投資の一種です。資格試験の勉強に励むのも「自己投資」と呼ばれたりしますね。それほど意味が広い言葉です。

しかしマンション投資は、少なくとも株式投資や投資信託、債券投資などの「証券投資」と同カテゴリーに入れてはいけないものです。

「株・投信・債券など」と「マンション投資」には、以下の決定的な違いがあります。

「株・投信・債券など」
 =損するときはみんないっしょ

「マンション投資」
 =損するときはお前だけ

どういう意味か。

株式投資の場合、あなた持っている1株から発生する損益は、他の皆が持っている1株と全く同じ。「銘柄研究を100時間行って、その株が有望という結論にたどりついたAさん」と、「適当にその株を買ったBさん」を待ち受ける運命は同じです(株数が同じであれば)。

株価が暴落したら皆で一緒に悲しむことができますし、普段からあなたより真面目にその銘柄を研究している誰かが、業績悪化の兆候に気づいて警告を発してくれたりもします。

一方の(現物)不動産投資の場合、Aさんが買った「コーポ◎△の203号室」とBさんが買った「コーポ◎△の204号室」は、立地も築年数も間取りも全く同じですが、別の物件です。203号室が空室になった場合に損するのはAさんだけです。

例え203号室と204号室の価格や賃料が当初同じだとしても、その後にどうメンテナンスをするか、どう広告を打つかによって、その部屋に入居者が現れるかどうかは変わります。そしてお気づきかと思いますが、203号室が入居者を獲得するには、204号室というライバルと争う必要があります

あなたは目利きができますか?

自分がそこまで手間をかけなくても、投資さえすれば、同じ恩恵を得られるのが株式投資のメリットだと、私は考えています。手間が少ないからこそ、「サラリーマンの副収入」として合理的なんですね。

でも、マンション投資の勝敗は、購入後にかけた手間で大きく変わってしまうのです。

「目利き力」にも大きく影響を受けます。株式投資は常にリアルな現在価格が公開され、各銘柄について多くの分析情報が出回っています。しかし、203号室を買うのはAさんだけです。その価格の妥当性や、物件としての競争力については、Aさんは自分だけで責任を持って見抜かなければなりません。

マンション投資は●●である

こういう性質を持つマンション投資を表すには、「投資」よりもずっといい言葉があります。

「起業」です。

マンション1室を買うというのは、「1室だけしか保有しない大家ビジネス」を始めるということです。やっていることは、三井不動産などもやっているビジネスと同じものの、規模を小さくしただけです。

起業ですから、負けたときに損するのが自分だけなのも当然ですし、かけた手間次第で大きく結果が変わるのも当然です。

「老後資金のために起業しよう!」「経済的自由のために起業しよう!」

マンション投資を薦める広告は、こう呼びかけているわけです。

まあ、「老後のために起業する」こと自体は別に愚行ではないのですが、その場合は「なるべく初期投資が少なく、失敗しても撤退しやすい起業」が推奨されます。マンション投資はその対極で、飲食店を開業するよりはるかに大きな初期投資が必要です。(借金でもしないと始められない規模の起業であることを、「資金レバレッジが効くので有利な投資」だと言い換える風潮には困ったものです)

「掘り出し物はある」。だからこそ難しい

「コネ(人脈)の力が大きい」のもマンション投資の特徴です。逆に言うと、「コネがない人は不利」な世界です。

不動産というのは、売買すること自体に手間とコストがかかるからです。

株式投資は取引システムが極限まで進化しているので、ただの一般人でも、スマホ一つであらゆる銘柄の価格をリアルタイムで把握し、ワンタップで買うことができます。だからこそ、株価には多くの投資家の見方が反映され、企業価値に見合った妥当な株価が形成されます。コネがあろうがなかろうが、投資家は平等です。

しかし不動産は、購入希望者の一人ひとりと実際に商談をしなければ話が進みません。一つの物件の取引価格が決まる現場にいるのはわずかな人数であり、商談の中身は他人には見えません。

そのため、「お得な物件は、コネのある投資家だけが買える」「同じ物件でも、知識やコネがない人は高く買わされる」という現象が発生します。基本的に、初心者殺しのバトルフィールドなのです。

でも、既にコネやノウハウがある人にとっては、マンション投資は最高の戦場です。何せ起業ですから、人脈と経営手腕が確かな人の業績は、ちゃんと良くなります。運に左右される度合いが非常に少ないのです。コネと実績がある人にとっては、「掘り出し物の物件がそこかしこにある、宝の山」に見えるでしょう。実力がモノをいう世界ですから、やりがいもあるでしょう。

セミナー講師の言葉の価値

マンション投資のすばらしさをセミナーで説いている講師たちは、嘘をついているわけではないのです。講師たち自身にとっては、こんなに素晴らしい投資は他にないというのは真実。

しかし残念ながら、彼らが語るノウハウは、株式投資セミナーとは比較にならないくらい、再現性がありません。起業というのは、「先駆者のまねをすれば成功する」世界ではないからです。

株式投資なら、同じ銘柄を買えば、成功者のノウハウをまねることができます。しかしマンション投資では、先駆者と同じ物件を同じ価格で買うことはできず、むしろ先駆者が保有する物件は「競合相手」「敵」になります。

念のための追記

なお今回言及した不動産投資は、あくまで「マンションなどの実物不動産を丸ごと買う」タイプの「現物不動産投資」のことです。REITなどの不動産小口化商品は、株式投資と同じカテゴリーに入りますので、全く話が変わってきます。

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