全てのはじまり
それは夏の日だったか。
学習雑誌の付録でついてくるようなおもちゃの虫眼鏡だったと思う。
虫眼鏡で紙の上に太陽の光を集める。
光の束が小さな点になった瞬間、かすかな煙と共に小さな炎が上がる。
子供の頃、誰でもやってみる遊び。
今でもその時の興奮は覚えている。
夜になってもう一度それをやってみたくなり、虫眼鏡を取り出し今度は蛍光灯の光を集める。
当然のように燃えるわけもなく。
けれども、紙の上には蛍光灯の姿が映し出されていた。
まるで鏡のように。蛍光灯の形がはっきりと。
紙が燃えだした時のような、それこそ燃えるような感動とは全く逆の静かな感動。しばらくそれを見続けていた。
おそらくはそれが私にとっての写真のはじまり。
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