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半導体メーカーの統合とマイコンシリーズ ~ルネサスエレクトロニクス編2

組み込み設計から完成品開発までこなすモノづくり企業、株式会社ユー・エス・イー(USE Inc.)。組み込み業界と縁の深いマイコン、またそれを製造する半導体メーカーに関するトピックを解説します。

今回は、のちにルネサスエレクトロニクスとして一つになるNEC、日立製作所、三菱電機のマイコンそれぞれがどのようなルーツを持っているのかを取り上げます。
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半導体メーカーの統合とマイコンシリーズ ~ルネサスエレクトロニクス編|USE Inc. Technical Lab. / ユー・エス・イー テクニカルラボ (note.com)


IntelからNECの系統


初期のCPUが組み込み向けに発展し、のちのルネサスエレクトロニクスのマイコンに繋がっている。

1971年に世界初となる商用マイクロプロセッサー『4040』(4ビット)、続いて1972年に発売された8ビットの『8008』に続き、インテル(Intel)が1974年にリリースしたのが『8080』です。汎用の8ビットCPUとして発売され、世界初の個人用コンピュータと言われる『Altair8800』に採用されました。現在に繋がるコンピュータの流れはこのように始まり、のちのマイコン製品にも繋がっています。

日本でもNECで『8080』と互換性をもった『μPD8080A』を製造。『μPD8080A』トレーニング用のキットとして発売されたワンボードマイコン『TK-80』も、手ごろな価格で所有できる個人向けのコンピュータとしてヒットしました。

1976年に米国のザイログ(Zilog)は『8080』と互換性を持ち、より高速で機能も拡張された『Z80』を開発。高性能な8ビットCPUとして広く利用されました。『Z80』は、インテルを退社した『8080』の開発スタッフが設計を行っています。NECでも『Z80』の互換機『μPD780C』を製造販売し、PC-8001、PC-8801といった日本国内で普及したPCのCPUとして利用されました。

その後に新規設計された8ビットマイコン『78K』ファミリは『Z80』と互換性があるという訳ではありませんが、「78」の部分に『μPD780C』からなる名前の名残が残っています。USE.incでもカーオーディオ、パーソナルオーディオといった分野で『78K』を使った開発に携わりました。『78K』は、前回解説したように、のちにルネサスエレクトロニクスのマイコン『RL78』へと発展していきます。

インテルは1979年に8ビットの次の世代となる16ビットの『8086』を発売します。NECでも互換性を持った『μPD8086』『V30』を製造。こちらも当時国内で普及していたPCのPC-9801シリーズや、OA機器などに採用され、広く利用されました。ルネサスエレクトロニクスの車載向けマイコン『RH850』のベースとなった『V850』も、『V30』から続く『V』シリーズの製品。USE.incでの『V850』開発例にはカーオーディオなどがあります。

『V850』『RH850』は、インテル製CPUコアとの互換性はありませんが、その成り立ちを遡ると『V30』や70年代から始まるインテルのCPUがあります。また、1979年の『8086』から始まったアーキテクチャは現在もなお「x86」として長くWindows PCに採用されているのはご存じの通りです。

Motorolaから日立製作所の系統

『Macintosh』に採用されたことでも広く知られるモトローラ『MC68000』。

インテルの『8080』と同時期、1974年にはモトローラ(Motorola)から、8ビットCPU『MC6800』が発売されました。国内では、日立製作所がモトローラと提携しセカンドソースとして『HD46800』の製造販売を行います。『MC6800』は、POS端末やアーケードゲーム、車載機器などに採用されたほかワンボードマイコンの『MEK6800D2』(モトローラ)、『H68/TR』(日立)といった形でも販売されました。

1979年には16ビットのCPUとして『MC68000』を開発。『MC6800』との互換性はありませんが、高性能でアップルコンピュータの『Macintosh』、国内ではシャープ『X68000』(日立製HD68000を採用)といったPCのCPUや『メガドライブ』(セガ)などのゲーム機やアーケードゲーム基板などにも採用されました。

その後、日立は組み込み向けのマイコン『H8』を製造。これまでに製造してきたモトローラ製CPUとの直接の互換性はありませんが、モトローラの『MC6800』『MC68000』、ザイログ『Z80』互換品の製造販売を経て、H8はこれらの長所を取り入れたアーキテクチャとなっています。USE.Incではこれまでに『H8』を使ったカーオーディオ、ホームオーディオの開発を行っています。

また、『MC68000』からは本家モトローラからも組み込み向けに『ColdFire』が派生しています。『MC68000』と互換性を持ちながら一部機能を省略という形で、v1~v5の五つのバージョンが開発されました。モトローラも半導体部門が2004年にフリースケール・セミコンダクタ(Freescale Semiconductor)となり、そのフリースケールも2015年にはオランダのNXPセミコンダクターズに吸収合併と、海外でも半導体メーカーの統合が行われています。

MOS Technologyから三菱電機の系統

ファミコン(海外ではNintendo Entertainment System)ではカスタムされた『6502』が使用された。

インテルの『8080』と互換性を持ち、改良する形で『Z80』が開発されたように、モトローラの『MC6800』に似た作りで高速、さらに価格も安いというのを売りにのがしたモステクノロジー(MOS Technology)『6052』です。

『6502』もまた現代につながる初期のCPUの中の一つ。アップルコンピュータの『Apple II』といったコンピュータ、任天堂『ファミリーコンピュータ』といった機器に採用され、世界で広く利用されました。

三菱電機では『6502』を拡張する形で組み込み向けにマイコン『740』を製造。かつてVTRなどに使用され、現在もルネサスエレクトロニクスの『740』ファミリとしてラインナップされています。

開発したモステクノロジーはすでに存在しませんが、現在も複数のメーカーが主に組み込み向けに『6502』をベースにした8ビットマイコンを製造販売しています。台湾の半導体企業ジェネラルプラス(Generalplus)の「Speech/Music/Toys」カテゴリに分類されるマイコン『GPC』シリーズは、コアが『6502』互換。USE.Incでも玩具、教具などの開発に『GPC』を使用しました。

80年から現役のIntel組み込み向けも

CPUもマイコンも元をたどれば同じ初期の初期のマイクロプロセッサがルーツ。

これまでに紹介したのは現在の組み込みマイコンに繋がる汎用CPUですが、同時期に組み込み向けに設計されたシリーズもあり、そちらも現在に形を残しています。

インテルの組み込み向けマイコンとして発売された『8048』(1974年)、その後継として1980年に『8051』を開発します。『8051』は世界中で広く組み込み向けに利用され、インテルでの製造は2007年に終了していますが、現在も複数のメーカーから『8051』互換のマイコンが販売されています。USE.Incでも『8051』が組み込まれたインフィニオン(Infineon、旧Cypress)『PSoC 3』を使用し、スマートフォンに接続して使うステレオマイクの開発に携わりました。

インテル『4004』が1971年に発売されてから1980年までの10年間に開発された、初期のマイクロプロセッサがルーツにあるという点では、現在PCで使用されているCPUも、組み込み向けのマイコンも同じです。ルネサスエレクトロニクスとなるNEC、日立製作所、三菱電機が開発したマイコンも『4004』からはじまり現在に繋がっているという歴史の流れを知っておくとマイコンへの理解がより深まるのではないでしょうか。

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