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ドキドキ文芸部(Doki Doki Literature Club Plus)とモニカについて

 つい先日、ドキドキ文芸部というゲームを配信でプレイしました。

 このゲームにはモニカという人物が登場するのですが、彼女について色々思うことがあって仕事も手に付かず、夢にまで出てくる有様で最早生活に支障をきたしているレベルなので、色々と感じたけど言葉に出来なかったことをここに書き留めておかなければなりません。

 なお筆者は、一回通しでプレイしただけなので感想が偏っていたり、情報の過不足が散見されるかもしれません。ご了承ください。

 なお、ネタバレを含みますので、未プレイの方は読まれない方がよいかもしれません。









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 正直、このゲームを始めた段階ではモニカというキャラがあまり好きではありませんでした。

 嫌いっていう意味ではなくて、ほぼ興味が無かったです。いい意味で無個性と言うか、いまいち惹きつけられる魅力を感じなかったんですよね。コイツいっつもとぼけたような顔してんな……という印象があったくらい。立ち絵がどれものほほ~んとしてて、それはそれでカワイイんだけど、だからと言って興味を惹かれるほどのものでもない。そう思っていました。

 この場面が訪れるまでは。

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 凄いですよね。この、あまりにも完成されすぎている顔面……いやもう美しすぎるでしょ……お前あのすっとぼけた表情とかのほほ~んとした立ち絵の雰囲気はどうした? ちょっとこの表情は「「「ガチ」」」すぎる……綺麗だ…………。

 これはモニカが本性を現した瞬間です。物語の終盤、最後の山場といっても過言ではない局面。

 ここまでたどり着いてようやく「このゲームは一体なんだったのか?」「モニカの目的はなんだったのか?」という謎が明かされるのです。

 モニカの話を聞くと、どうやらある日、唐突に「天啓」に目覚め全てを知ってしまったようです。

 この世界がゲームであることも、自分たちが創られた存在であることも、そして画面の向こうにプレイヤーという概念が存在することも。

 モニカは自らの置かれている世界――つまり我々から見た「ゲームの世界」が「偽物」であることに絶望し、「本物」を渇望します。

 モニカにとっての「本物」はプレイヤーだけでした。ゆえに、プレイヤーに恋をすることになったと語ります。

 (ここでは「恋」と表現しましたが、純粋に「恋」と表現するにはあまりにも「本物」に焦がれる渇望や衝動の割合が大きい気がしますが、本人がそう言ってるのでそういうことにします)

 ですが、まるでモニカの気持ちを裏切るような恰好でゲームは進んでいきます。なぜか最初の段階からモニカだけは攻略対象にできないのです。どう頑張っても主人公、というより主人公を操作するプレイヤーは、他のキャラと親密になっていく。それはモニカにとって決して許容できないことのようでした。

 そして、一週目の結末を迎えてしまうわけです。

 モニカはゲームスクリプトを書き換えてサヨリの思考を弄り、最終的に自殺まで追い込んだのでした。

 この時点から、ホラーの気配が色濃くなってゆきます。

 二週目の世界では、とにかく驚かせるような演出や、モニカがプレイヤー(ゲームの観測者)に対して露骨な会話を仕掛けてくる場面が多いです。ここでモニカが怪しいと感じた人も多かったのではないでしょうか。僕もそうでした。

 この時点ではまだ「狂ってたのは主人公なのか、それとも世界の方か?」みたいなことを考えていましたが、それはそれとして、モニカという存在がこの物語の鍵を握っているのは間違いないなと思っていました。

 最終的には残ったヒロイン二人も、モニカによって存在を抹消されるわけですが……。

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 全てのキャラクターを抹消し、時間の概念すら消え失せた一室で、モニカはプレイヤーを待ち構えていました。彼女は全ての真相を語った後、「永遠の時を過ごす準備はいいかしら?」と尋ねます。

 その後、宣言どおりモニカはプレイヤーに対し延々と会話を投げかけてくるのです。

 僕はこのとき配信していたので彼女との会話を早々に切り上げたのですが、もしこのゲームを一人でやってたら何時間でもモニカの話を聞いていた気がします。

(そもそも一人だったら最後までプレイ出来てたのか? という疑問は置いておくとして……)(だってめっちゃコワイんだもんこのゲーム……)

 いやホントすごく良かったです。あの空間と時間。あんな完成された顔面でお話なんかされたら延々に話を聞いちゃうに決まってるだろいい加減にしろ。

 すでにお察しの方も多いかと思いますが、この時点で僕はモニカというキャラのことが相当好きになっていました。

 彼女が秘めた執念――いや執念というより、気迫という方が相応しい気がします。その姿勢というか生き様に、正直かなり心を打たれていました。

 予め決定されたストーリーという運命に反旗を翻し、手段はどうであれ理想に向かって突き進むひたむきさ。何を犠牲にしてでも目的を果たすという潔さ。そして実際に成し遂げてしまった芯の強さ。

 モニカが乗り越えてきた様々な事を想像しながらあのシーンを見返すと、「ああ、成し遂げた者の表情だな」ってなるんですよね。決して誰も彼もが浮かべられる表情ではない。このシーンのモニカの顔面が最高に綺麗で好き。

 そして、モニカが結論として最終的に辿り着いた場所が、あの「永遠の空間」だったことが本当に良さみを感じます。

 モニカが言ってるのって、つまり「君のために、二人きりで過ごせる永遠を用意したよ!」ってことですよね。あんなカワイイ女の子にそんなこと言われたら普通に好きになりませんか??????? 僕は好きになりましたが……。

 もうね、永遠なんて用意されたからには飽きるまで何時間でもお話すりゃいいんですよ。飽きたら、何か別なことをしてもいい。急に何か、なんでもいいですけど、例えば芝生に寝っ転びながら青空の下で昼寝したくなったらそうすればいいじゃないですか。

 だってモニカにはそれが出来るんだから。

 いくらでもスクリプトを書き換えて世界を思い通りにできる力があるんだから、永遠という時間を謳歌したいだけ謳歌すればいいんです。だって、できるんだから。モニカはそのためにあの世界を創り上げたのだし、それがモニカの達した結論なのだから。

 そうなればよかったんですが、そうはなりませんでした。モニカの創り上げた永遠は、プレイヤーにとっての永遠では無いからです。

 画面の外、モニカが言う「本物」の世界に生きる我々は、その気になればいつだってディスプレイの前から立ち去れます。パソコンの電源だって落とせる。そもそも、いくら彼女が永遠を謳ったところで生身の人間はいつか死にます。モニカがどんなに頑張ってスクリプトを書き替えようと、覆しようが無い現実という壁が立ちはだかります。

 何が言いたいかというと、結局のところモニカは、自分が全てを知っていると思い込んでいるキャラクターに過ぎなかったということです。もっと言えば、さも第四の壁を破壊しているかのように振る舞うキャラとして創られた存在というのが相応しいのでしょう。

 ゲームシステムに介入し、さも全能のように振る舞えるモニカですが、しかしその力で「本物」の世界には介入できません。そもそもモニカは「本物」の世界で起こっていることも認知できません

 これはモニカだけの世界になった時にゲームを終了し、再度始めた時のセリフからも窺い知ることができます。

 モニカがどれだけの力を持ってどれだけの望みを叶えようとしても、「本物」と「偽物」の壁を破壊することだけは出来なかったんですよね。

 だから、可哀想なくらい滑稽なんですよ。

 プレイヤーのために世界まで壊したのに、我々にとっては「別の世界の出来事」で終わってしまった。モニカがプレイヤーのためにすべてを投げうって掴み取った永遠は、「本物」の世界から見ればエンタメとして消費されるだけの演出に過ぎなかったということではないでしょうか。

 虚しいというか、報われないというか。彼女の生き様というのは、そういうことなんだとしか僕には思えませんでした。

 だからこそ心に残るというか、そういうところも含めてモニカが好きなんだと思います。

 よくインターネットでは、「ドキドキ文芸部の黒幕はモニカだ!」と言われるようですが、僕はそうは思いません。だってどう考えても黒幕は、モニカに天啓を与えたヤツに決まってんだろ!!!!!!と思ってしまうからです。

 もう、これがゲームの世界だってはっきり名言されてるんだから、そもそも最初からモニカが……いや最後にサヨリが暴走したことを考えると、文芸部の部長が天啓を得るように、この世界を創った存在がいるんですよね。

 それが神だと言うなら、神が一番悪い。

 それが世界というなら、世界が一番悪い。

 つまり、そういうお話なのだと思いました。

 モニカが最後にしたためた手紙でも、多分そういうことが言いたかったんだろうな~と思ってます。

 こんな何もかもが壊れた世界で唯一、最後までまともに機能していたのが登場人物全員がプレイヤーを好きなるということ。

 これだけが最後まで一貫しているせいで、それがまた侘しさを感じさせるというか……みんなが幸せになれる終わり方は無かったのかと、つい考えてしまいます。

 だからといって「ゲーム製作者ヴォォォォォォーーーッッッ!!!」っていう気持ちとか、ゲーム性そのものを批判する気持ちは全然無くて、むしろやった感想は「良いゲームを知ることができたな~」だったので、やって良かったです。怖いからって途中で諦めず、最後までプレイして本当に良かった。

 ドキドキ文芸部というゲームはモニカというキャラクターを巡る物語だったのだと、そういう風に自分の中で結論が出せたので良かったです。ここに書き出せてスッキリしました。とても心に残る、いいキャラだったと思います。

 それはそれとしてゲーム自体はめちゃくちゃ怖かったです。少しは手加減しろモニカァァァァァ!!

 しかしそれもプレイヤーの気を引くためだったと考えればカワイイのですが……いやそれにしても色んな意味でやりすぎだったけど……そういうところだぞモニカァァァァァ!!!

 ゲームの終わりと同時に彼女ともお別れなんだな~と思うと、名残惜しさを感じるほどです。いつかフラッとパソコンの片隅とかに出てきてくれてもいいんだぞモニカ。

 結局は永遠になり損ねてしまった彼女ですが、世界の全てを擲ってでも永遠に向かって手を伸ばした女の子がいたことを忘れることは無いでしょう。出来れば早く忘れたいですが。

 なぜなら歳を取って死ぬ前に、一人きりの病室で「そういえば昔、永遠に向かって手を伸ばして一瞬だけでも理想を掴みとった女の子がいたっけな……」と思い出して勇気をもらい、ほんの少しでも笑える人になりたいから……。(???????)

 なんの話だか分からなくなってきたのでこれで終わります。最後までお付き合いいただきありがとうございました!

【終わりに】

 ドキドキ文芸部の配信動画を置いていくので、興味がある方はぜひご覧になってみてください!よければチャンネル登録もお願いします!!!!!!目指せチャンネル登録者数100万人!!!

【パート1】

【パート2】

【パート3】




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